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梅雨の一日。


朝から曇りがち。

今日も気温をチェックしないまま
蒸し暑いかと思い薄着で
出かけてる。

いつものカフェに行き
席について間もなく
大人しそうな男性がこちらに
近づいてきそうな気配を感じたので
あからさまに目を配ってみた。

『近づくな。』という
オーラは出ていたと思う。


しかしながら大人しそうな男性は
遠慮がちに2つ隣の席についた。


緊張感が走りながらも
気にしないようカフェラテを口にしてみる。
読書を続けているが、音楽は聴かない。
スマホをまだ見てはいけないから。

『今、何時だろう…』
カフェには時計もないので
それすら知ることもできない。


ただ周囲の様子は相変わらず異様で
私の行動一つ一つに対して
自由を奪うように連絡取り合っているようだ。

恐らくこのまま待っていても
連絡は来ない。

『待っていても無駄だよ』
と言わんばかりに
大人しい男性は食事を済ませて
フロアを後にした、
その時一気に抑えていた
諸々の感情が溢れ出し
慌てて蓋をするように
カフェの階段を降りる。

降り出した雨粒が身体を
打ち付けることが
懐かしい生暖かい安心感に
包まれ、胸にこみ上げていた
諸々の感情は冷静に落ち着いていたが

矛盾するように身体はガタガタと
震えていた。

濡れた髪や顔を拭い
震える身体を引きずり

『ここで終わって溜まるか!』

早くしなければ間に合わないかも
しれない。
見てないスマホを今すぐ見なければ…。


帰宅した時間は覚えていない。
けれど、恐る恐る見たスマホに
一瞬の恐怖が走った。

《頑張ってね!応援してるから👍》


この世の終わりのような絶望の中
そんな素振りを見せないように
タオルで前髪を擦ると
膝はガタガタと震えがとまらない。
腕は重だるく上がらない。

やっぱりこのままじゃ終われない…
考える前にはスマホを手にしていた。


♪♪♪〜
『どうした?』

20年以上変わらない声がしたから


『お疲れさま。忙しかった?』


『休みだって言ったじゃん。ゆっくりしてたよ』


抑えていた感情は
懐かしい生暖かい安心感に
変わっていた。
冷え切ったいたスマホを支える
指の体温はもう戻っていて


『なんでもない♬』


『次の休みどこ行こうか?』


雨に濡れても
何ともない理由が
垣間見えた
梅雨の一日だった。



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