対談-僕らの会社ができるまでの話。 〈3〉
2022年の2月末に外資系大手を辞めて、会社をつくることにした。
企業のIR資料づくりを中心に据えた制作会社だ。
本作は、リアルタイムで創業を目指すそんな僕自身の物語。
2022年4月4日、ついに僕らは株式会社イチロクザンニを創業した。
番外編としてスタートした創業対談企画。第1回、第2回に引き続き、今回も共同代表・友井との対談形式で記していく。今回が創業物語の本当に最後。テーマは、今後の展望について。
現職を辞めて起業することにした流れや、事業領域決定の経緯についてはこれまでの記事を読んでもらえると嬉しい。
お約束の、登場人物。
職場の方たちや家族への報告について
新実:創業対談シリーズも今回で最後です。今回は今後について語っていこうかと。
友井:あれ、下のタスクに則って話すのはもう終わり?
新実:あー。では、軽く。前職についてはもう本当に温かく送り出していただいて、偉い方たちからも「挑戦を応援する。いつでも戻ってきていいからね」って言ってもらえたりして。
短い期間でそれなりにチームに貢献した自負はあるけれども、人員一人あたりの採用コストとかを考えるとまだ不十分なタイミングでの退社だったからどこか申し訳ない気持ちはあったよね。
友井:俺もそうだけど、前職が嫌になって辞めたわけじゃないからどこか心苦しさはあったな、なんだかんだ。
新実:それはものすごくあった。色々教えてもらったし、自分への期待みたいなものも伝えてくれていたから余計に。だからこそ、打算とか抜きにこれから仕事で恩返しできたらいいなぁとは思っているけど、まぁこればっかりは会社を去った身だからなんとも。
友井:いきなりマジメなこと言うのやめてくれ(笑) 家族への説明はどうだったの?
新実:うーん、その話は割愛しようか(笑)
友井:奥さんに怒られた?(笑)
新実:それはもう。付き合ったときから「安定した収入を求めるタイプの人間ではないよ」とは伝えていたけど、相談もなしに数カ月後に退職することだけ報告したからねー。それなりに成功するまでは収入も減るわけだし。だから俺をそそのかした君の印象は最悪だね(笑)
友井:今度菓子折り持ってお詫びに伺います。。。
中長期的な成長のためにも、まずは土台をつくる
新実:さて、ここからはどう会社を育てていくかについて、現状考えていることを話そうか。
友井:じゃあ、俺から質問してもいい? 事業そのものに対しての期待感や可能性については、これまでのnoteを読めばある程度は伝わる気がするけど、そもそもイチロクザンニをどうやって知ってもらうかや、中長期的に成長させていくための戦略について、どう考えているか教えてください!
新実:いきなりぶつけてくるにしては濃厚すぎる質問だね(笑) 先に中長期的に会社を成長させる戦略についてだけど、とにかく数年間はイチロクザンニを知ってもらうために頑張るというのが回答かな。
友井:え、いやもうちょっと戦略みたいなやつ頂戴よ(笑)
新実:もちろん中長期的に成長していくためにやるべきこと、やりたいことはたくさんあるよ。次なる事業のアイデアも考えている。けれども新しい事業を進めていく前提として、とにかくまずは会社としての認知度を高めていくことが必要になるんだよね。
たしかにIRの領域には可能性を感じていて、僕らは”IRに特化した制作会社”として活路を見出しているけど、目指しているのはその先の市場を広げることであったり、IRの重要性に気づいてもらうことであったり、投資そのものをワクワクするものに変えていくことだったりするわけですよ。
それを実現していくためには、いち制作会社のままではいけないわけで、例えば、IRのクリエイティブランキングを拡散するコンテンツを作るとか、クライアントに対して実制作に留まらないIR戦略についてアドバイスするとか、世の中のIR人材の不足を解消すべく自社で人を育てて企業に派遣するとか、制作とは別の手段も活用しながら世の中に色々と働きかけていく必要がある。でもまだ実績もなければ知名度もない。つまり説得力がないわけだ。
ではどうすればいいか? 友井くん、どうぞ。
友井:まずは知ってもらうってことだね。
新実:そういうこと。知ってもらったら、今度は「イチロクザンニにお願いすれば大丈夫だろう」と信頼してもらえる。やがて信頼が信頼を呼び、いよいよ「イチロクザンニがやろうとしているなら、そうなるかも」「イチロクザンニが言うなら間違いない」というフェーズまでいける。
だから中長期的な成長戦略の1歩目は、短期的な戦略の1歩目である「認知度向上」とほぼイコールだと思っているのです。
Twitterとnoteの役割はIRとクリエイティブの紐づけ
友井:ではどのようにして認知度を高めていくのでしょうか?
新実:これがなかなかに難しいんですよねぇ。まずはSNSなどを通じて、存在を知らせていく。実績を出せたり、知見を共有できるならそれが一番いいかもしれけど、まだ会社と僕らに説得力がないから、この段階では「IR」と「クリエイティビティ」を紐づけることに注力しようと思っている。
友井:それが今のTwitterアカウント(@IR16003200)だね。
新実:そう。まずは事例だけに特化したアカウントをつくって半年くらい緩く運用してみたんだけど、そこから仕事をもらえたり、今のところやってみた効果はあった印象。ただ、仕事が立て込んでくると途端に更新頻度が落ちちゃうんだよね。
友井:このnoteもそうだよね(笑)
新実:創業の経緯や何をやるかについて書くことで会社を知ってもらうきっかけになればと思ってスタートしたこのnoteも、ありがたいことに多くの方に読んでもらえて。起業について説明する手間も多少減ったから始めてよかったとは思う一方で、そもそも俺、原稿書くの時間かかるタイプだから書き始めるとほかの仕事が止まってしまうんですよ(笑)
友井:始めた当時は、IR資料の良い事例とかもこのnoteで紹介するって言ってなかったっけ?
新実:今もそのつもりではいるよ!(笑) Twitterで投稿している事例をさらに詳細に紹介したものや、IRをクリエイティブにしていくことのメリットを伝えるコンテンツを今後は書いていく気持ちはあるよ!
友井:気持ちは、ね(笑)
新実:あとは実際につくったもののを制作過程を振り返りながら投稿できたら面白いなーと。長い目で会社を知ってもらうためにも、僕らの提供する価値を示していくことで受注に対する安心感につなげていきたいし、IR資料を制作するうえで各企業やクリエイターが持っておく視点を伝えていければ、市場の拡大にもつながっていく。ただ、こればっかりは掲載の可否含めてクライアント次第な部分はあるけどね。
友井:なるほど。長期的な飛躍を目指しているからこそ、初期の段階では地道に色々なコミュニケーションチャネルを活用して、ベースを固めていくということだね。
当面の検討事項は会社をどう拡大していくか
新実:ただ本音を言えば、中長期的を見据えて土台をつくっていくとは言ったものの、ゆったり構えている余裕があるとは思っていなくて。専門性が必要だからこそ僕らはチャンスだと思っているわけだけど、市場が急成長したときに戦える規模感でなかったら意味がない。
だから、知名度を高めることに加えて、会社のサイズをどう大きくしていくかが当面の検討事項かな。
友井:会社の規模感ね。「IR」と「クリエイティブ」はそれぞれに特殊性があって、ただでさえ市場にプレイヤーが少ないからこそ難しい問題だよね。採用するタイミングと、適切な人材が現れるタイミングが一致するとも限らないし。
新実:会社として請け負う仕事の「量」と「質」を担保するためには、専門性の高いプレイヤーを集めなければならない。同時に、優秀なプレイヤーが実力を発揮し続けて、会社に残ってもらえるような環境も整える必要がある。理想はNetflixみたいな組織。全員が優秀で自律しているからこそ、規則がなくても勝手に回っていく会社。正直、社内のルールはインサイダー禁止くらいでいい。日本の雇用制度では難しいのは分かっているけど、プロスポーツ選手みたいな契約形態を正社員でも実現したいというのが僕の本音。
友井:年俸制、出来高払い、単年or複数年契約。パフォーマンスによって年俸は大きく上がるし、パフォーマンスが悪ければ大きく下がる。最悪、自由契約も、って感じかな? 育成契約とかも?(笑)
新実:そう。「投資」「クリエイティブ」「金融知識」などの素地がない子をイチから育てる場合、クライアントの前に出せるようになるまで相当な時間がかかるだろうから、雇用契約もその辺をちゃんと見据えて考えないといけないな。ただ、よほど人柄や地頭、やる気の面でポテンシャルがないと通用しない世界だと思うから、結局採用はすごくシビアになるね(笑)
市場拡大を見据えて、競合企業とも協働していきたい
新実:では、対談を含めた「創業物語」の最後は、翔太が5年以内に実現したいことを聞いて終わりましょうか。
友井:え、そんな締め方なの?(笑)
新実:俺を誘った張本人として、このnoteに対する責任も負ってくれ(笑)
友井:責任も何もない気がするけど、そうだなぁ……。5年と言わず、3年を目安に「IRに対する世の中や企業の考え方」を変え切りたいね。
新実:ほう。「変えていく」ではなく「変え切る」と。
友井:そう。今回の創業に際して、IRの支援に関わる方々とお話しする機会をいただいたんだけど、皆さん表現こそ違えど「腰が重かった業界がようやく変わりつつある」的なことをおっしゃっていたんだよね。
だから僕らは、その種火に薪を加えたり、酸素を送り込んだり、なんなら油でも注いだりして、”企業がIRに全力で取り組むこと”が当たり前となる環境をもたらす一員になれればと思った。
新実:色々な方の話を総合して再認識したけど、マーケット自体のポテンシャルは絶対あるよね。でも同時に、企業側と制作側の双方に業界全体を停滞させている問題があるのも痛感した。
友井:そうね。企業側に関しては、IRの重要性を認知していない企業が多いこと、それから”右にならえ”で無難なIRに終始しがちな傾向にある点。
新実:制作側が抱えている問題も同じことが言えて、専門性を兼ね備えたプレイヤーや、“無難ではないIR”を提案して実行できる人たちが限りなく少ないのはどうにかしなければならない。まぁ、提案したいけどできていないだけの可能性もあるんだけどね。
友井:そういう点も含めて、IRに対する世の中や企業の考え方を変え切りたいなと。面白いもの、クリエイティブなIR資料をつくっていくことが当たり前な世の中にしていきたい。
新実:うん、同意。そのためにも、小さなマーケットを競合同士で喰い争うのではなく、マーケット自体を大きくするために、関係各社と積極的に協働していけたらいいね。
友井:間違いない。これを読んでくださった会社さん、IR関係者さん。必ずご期待以上の成果を出しますので、ぜひご贔屓に!(笑)
新実:ご贔屓に!(笑)
〈完〉
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