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#531 公教育の「ジャイアン」は何だ?

 トー横キッズとは新宿歌舞伎町の複合商業施設「新宿宝ビルの」に集まる若者たちのことです。家庭や学校で居場所を見つけられないなどの理由で、交流サイト(SNS)投稿などを通じて都内外から集まります。薬物摂取や性被害、飲酒喫煙など犯罪や非行につながるケースもある。

 2021年に当時15歳の少年が路上でホームレスの60代男性に対する暴行動画がSNSで拡散され少年は書類送検されたり、当時交際関係にあったとされる18歳の専門学校生の少年と、14歳の女子中学生が近くの歌舞伎町のホテルから飛び降り自殺をしており、さらにオーバードーズによる薬物中毒状態だったことが判明するなど、深刻な問題となっています。

 2022年2月22日には、NHK「クローズアップ現代」がトー横キッズを取材。その中で、彼らの「存在」を肯定してくれる環境が周りにないことを大きな問題点としてあげています。

 

 そんな彼らの立場からの情報を発信するため、「トー横新聞」を発行しているのが種村豊さんです。種村さんも学生時代、不登校となり、自分の居場所を求めてトー横に通った経験があるそう。同じ悩みを抱える「仲間」の存在が、ありのままの自分を認めてくれたと言います。

  「キッズたちにとって、学校や家はドラえもんが不在の『ドラえもん』の世界なんです。ドラえもんがいないと、のび太はどんな人と付き合うかを選択できず、居心地のいい環境を自分で作れません。学校ではジャイアンが幅を利かせているから、ジャイアンがいない環境があれば、そっちに行きたくなるはずです。子どもたちはジャイアンがいないからトー横に来ているんじゃないでしょうか。問題の根本は学校や家庭にいるジャイアンだと思います」

と述べ、『ドラえもん』に例えて、トー横キッズの実状を語ります。

 「人間は平等に不平等である」

 これは真理だと私は考えています。人は誰もが平等に生きることはできません。国籍、地域、家庭、性別、どれ一つとして選ぶことはできません。現代においても、生まれる国が違うことで、自分の人生を生きる権利が与えられないこともあるのです。

 だからこそ、できる限り多くの人に、安心・安全と、学びを促進する場所を社会全体、ともすれば一人ひとりが確保する努力をしなければならない。その大きな役割が「公教育」であると考えているのです。

 日本における不登校の数はどんどん増えています。それは家庭環境という「偶然」を乗り越え、自分が自分でよいという空間作りがいまだ道半ばであることの証明です。今まさに、公教育におけるジャイアンの正体を見つけなければならないのです。


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