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#484 切り抜きにリアルはない

 インスタグラムを見てみれば、そこには華々しい生活を送っている人が溢れています。おしゃれな家や服、高級な車、まるでレストランで出てくるような食事、好きな仕事をして、経済力もある。

 そんな人たちの生活をインスタグラムを通じて覗き見ると、自分の今の生活がなんとなく悲しく思えてくる。彼らの生活は自分の今の暮らしがどこか「充実」していないように感じてしまうかもしれません。

 『笑顔じゃない高校生」を撮り続ける写真家・小野啓 夢を追わない若者たちに“共感”する理由』という記事を見つけました。

 写真家の小野啓氏は、長年、被写体となる高校生を募集して写真を撮り続けてきたそう。彼の作品の特徴は、被写体の表情には一様に笑顔がないこと。そこに写るのは、「爽やかな笑顔の高校生でも、キラキラした高校生活をアピールする若者の姿」でもありません。

『笑顔じゃないことに共感した』

これは小野氏の被写体として応募してきた高校生の多くの声であるそうです。

 今はSNSなどを通じて「素敵な生活」を切り売りする人が増えている。前述したインスタグラムでもそうですが、そこには他者が羨む暮らしぶりと、その充実した日々を笑顔で送っているおしゃれな人たちでいっぱいです。しかし、それは時にハラスメント化し、そういう生活の価値を自然と強化していきます。本当は、それは生活の一部であるし、その裏に何が起こっているかもわかりません。良いところばかりを発信する傾向にあるSNSは、ある意味では虚空で仮染めの生活とも言える。

 笑顔じゃなくてもいいじゃない。今の時代の価値観にどこか違和感を持った高校生は、その本質を探し求めているのかもしれません。

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