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選んだ道と同じ数だけ、選ばなかった道がある(キルギス)

乗合タクシーに偶然居合わせたお姉さんの家に招待され、丸4日お世話になったときのお話その①

2019年10月10日/ひとり旅41日目/キルギス滞在7日目

※馬が解体されていく写真があります。人によってはグロくて全然ダメかもしれないので、危険を察知した方は回れ右して、その上でもう1度右して、薄目で読んでください。


私の基本的な旅のスタイル(スタイルとか言って1行目から羞恥でどうにかなりそう)は、
行った先で現地の人に面白そうな場所を聞いて突撃する、です。

だから、情報提供を積極的にしてくれるお節介な人に出会えないと、目的地を決めるのに本当に困っちゃう。
キルギスへは7日前にウズベキスタン経由で陸路入国し、そこから丸1日かけて首都のビシュケクへ移動。現在はビシュケク滞在5日目なのだけど
これまでの怒涛の日々から精神的に解放された影響で、自らどこかへさぁ行かんいざゆかんソレソレという気にはなれず、
ゲストハウスから1km圏内冒険に勤しむ日々を送っていました。

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ただ、いつまでも飯食って寝るだけの生活をするわけにはいかないと、3日かけて綿密な計画を練成。
キルギス観光はネット上に情報がまだあまりなく、ツアーオフィスに出向いて直接情報収集するなど、かなり時間がかかった。

結果として、次なる目的地をイシク・クル湖の南側にあるボコンバエバという町に定め、移動のための乗合バン(マルシュルートカ)を探すことにしたのが、10月10日の朝のこと。
こっから忙しいぞ〜!

ここで気をつけたいのが「ビシュケクの西バスターミナル(交通の要)はクセがある場所らしい」ということ。
外国人が中に入り警察に見つかると、不要な取り調べを受け、パスポート返却の代わりに賄賂を要求される。乗合バンに関しても、相場の3~4倍を提示される。などなど。

事前に拾える限りの悪い噂をインプットしておいたので、珍しく警戒ハリネズミさんモードで、ターミナルへ向かう。
ちなみに用意したパスポートのコピーは、宿に預けた大きな荷物の中に置いてきた。このハリネズミさんうっかりモノ。意味ない。

ターミナル付近につくと、早速何人ものドライバーが押しかけてくる。やめてぇ〜
キルギス語、もしくはロシア語話者がほとんどなのでまともな会話は成立せず。
私はただひたすらに「ボコンバエバ」を繰り返す。ボコンバエバったらボコンバエバ。カラコルじゃないってば、ボコンバエバ!!!えーい!!カラコルじゃない、発音か?ボコンバエーバ、ボーコンバエバ、ボコン!!!!バエバ!!!!!!!!

結局、乗り合いのマルシュルートカ(相場300SOM)よりも50SOM高いが、すぐに出発するというシェアタクシーで行くことに決めた。
※50SOM高いと言っても、円換算したら67円。

複数人が乗り合わせる移動手段においては、満席になるまで1ー2時間待つ、なんてこともザラである。

安くてすぐ出発だなんて・・・
そんなうまい話があるのかなぁ・・・と、しばらく不安に思っていたのだけど、
結果的にこのタクシーは大当たりで、8人乗りにも関わらず乗客2名で即出発。
かつ、乗り合わせた乗客の女性が少し英語の話せる方だったので会話も弾んだ。

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1時間ほど進んだ場所に路上八百屋があり、女性が4000SOM(約6000円分)の野菜を大量買い。
大玉のスイカ8玉、メロン8玉、たまねぎ、トマト、葉物野菜、たっくさん。
後部座席が床まで野菜で埋まった。

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私は紳士の心を持った女性なので、野菜の爆買いにかなり笑いながら運ぶのを手伝っていると、同乗者から「キルギスはすきか?」ときかれる。

今まで訪れた国の中では一番、人と人との距離がある気がしていたけど
インド、ウズベキスタンで少々人疲れしてしまっていた私には逆に居心地の良い国だったので、即答で「YES」

すると、「よかったら家に来る?」と。
これも「YES」

こんなこともあろうかと今夜の宿はまだ決めていなかったから、どこへでも行ける。(完璧な計画を練っていた話は?)

ということで、「ボコンバエバ」からさらに30kmほど東へ行った「バルスコーン」にあるお宅にお邪魔することになった。

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田舎、という感じ。

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おうちにつくと、室内は何かお祝い事の準備といった雰囲気。


Google翻訳をどうにか駆使して今日がこの家の「新築祝い」であり、
これから5日間通しで親戚を招くパーティーを行う、ということを知る。
野菜を大量に買い込んで来た理由が漸く分かった。

チャイをいただきながらしばらくお菓子をつまんでいると、
「お庭を見せてあげる」とお姉さん。

お花でも咲いているのかしらなんて気持ちで外へ出ると、
そこには大人の馬と、生後1年も経っていないように思える子馬が首を切り落とされ、
いままさにまるり剥かれんとしている場面
だった。


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肉塊となった生肉に関しては、タイやモロッコのマーケットでさんざん見てきていたけれど、
ついさっきまで生きていた動物の皮を剥ぎ、食肉にするシーンは鶏でさえ見たことがなかったので本当に驚きの連続だった。

当時の感想そのままなメモが残ってたので、メモと写真合わせて紹介します。

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ナイフで切り込みを入れ、皮と脂肪を剥がしながら丁寧にむいていく。
足の先まで、皮が一続きになっていることを感じた。

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<気づいたことメモ>
・皮は思っていたよりも丁寧にはいでいく。
(恐らく毛皮も何かに使うのだと思う。鞣しやすいように脂肪を極力残さないよう数人がかりで小さなナイフを使って丁寧に剥がしていた。)
・皮は剥いでも血は一切出ない。
・皮を剥いだ場所から、また肉に切り込みを入れた場所からはあたたかい湯気が出ること(ついさっきまで生きていたことが分かる。)

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有機物、無機物問わず、モノがどういった構造・原理で成り立っているのかを知るのが好きなので、どうしてもワクワクしてしまう。

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40分くらい動画回してた。これは生の脂肪を切り取って、くれるシーン。

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こっちは小さい方の馬の肉かな?
興味津々の私に逐一解体状況を見せてくれる。優しい。

<気づいたこと>

・足が邪魔なので、全て切り落とす。骨の真ん中から脊髄がしぶく。
・腸を切り離す時は2箇所をしっかりと縛り、中のものが出ないようにしてから切断する。(これは鹿の解体を何度か動画で見てるので知ってた)
・まず胸に切り込みを入れ、そこから正中線まっすぐに下まで切りおろす、その後両方に開く。内臓がこぼれ落ちないように腹の皮を持ち上げておく。
・内臓と筋肉の間には脂が大量についている。脂を少し切り離して、みんなで生のまま食べる。さすがに少し躊躇したけど口に含んで見ると、ほんのり甘くてゼラチンのような食感で、まずくはなかった。
・内臓の量すごい!!!生き物ってほとんど内臓でできてるんじゃんと思った。
・内臓は担架に乗せて別の場所へ。女性メンバーが丁寧に切り離し、洗っていく。
・骨と肉だけになった馬から血溜まりをすくう。釈10杯分くらいだった。
・肋数本ごとに肉を分断する。軽く刃を入れ、根元から折る。ばきょっと音がする。
・足の付け根からも順番に肉を切り離していく。適当な大きさのブロックにしてどこかへ運んでいく。足一本でも、運ぶのがとても重そうだった。

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内臓を、担架にビニールを敷いたものへすっかりうつす
一つ引っ張ると、他もくっついていたり繋がりあっているのがわかる
何より、少しもたせてもらったのだけど「重い」

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しばらく内臓は放置

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「肉」だけになりました。関節にナイフを入れて、肉片にしていきます。

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アバラの肉部分にナイフを入れ、一本ずつ折って背骨から剥がしていきます。バキバキ。
スペアリブってこの辺りの肉のことだったのか、と急に実感が湧く。
「知る」と「体験する」は大違い。

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子供達もみてる

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内臓処理班の姉さんがた到来

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大腸、小腸はまず中身を庭の木の元に撒いて(肥料)その後内部に水を流し、洗っていく。腸はものすごく長いのでそれなりに骨の折れる作業。

一つ一つ、綺麗に洗う。

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大腸から出てきたうんち

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内臓も大きな桶に小分けにして、保管。

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小さな頃から、こういった風景を見て育つんだね。

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かわいい

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最後に頭からも肉を剥がして、骨だけにしてから、バーナーであぶり
こそぎきれなかった肉・脂肪・毛などを綺麗に落とす。
焼くことで、一瞬黒コゲの骸骨になるけど、焦げた部分をナイフで削り取ることで白くて綺麗な、頭蓋骨となりました。


捌いた馬は、すぐに肉を調理するものもあれば、
内臓と合わせてソーセージにしたり、
骨つきの部位は、翌日時間をかけて煮込んだりしました。

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肉です

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ソーセージ作りに必要な糸を切っています。

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洗った腸に、脂分の多い肉を中心に詰めていき、しばります。

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私もやらせてもらいました。この1個で、クビになりました。
もう触らせてもらえんかった。笑

食べる前に煮て、輪切りにして食卓へ出しました。
だからパリンとした食感は味わえず。

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<当時のメモ>
・内臓含む肉を庭の大釜で9時間ほど煮込む。途中でしっかりと灰汁抜きをする時々薪を足す。
・頭の骨と切り落とした足以外全てどこかに行ってしまった。残った頭の骨はバーナーで丸ごと焼いて、焦げた部分を削り落とし、白い骨の剥製にしていた。足は捨てるわけではなさそうだったけど、どうするのかわからない。

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これも、かき混ぜるのを手伝ったけど、
すぐクビになりました。笑


ちなみに、この煮込みが、

とっっっっっっっっっっっっっっっても!!!!!!


おいしくない。。。。。。。笑


味付けがほぼされてなくて(ほんのり塩味)、骨と一生添い遂げる覚悟をしてしまった生臭硬肉って感じ。伝わりますでしょうか。

焼いたやつはめちゃめちゃ美味しかった。

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<当時のメモ>
切った肉の一部とポテトを使って早速炒め煮のような料理が出来上がった。
ウズベキスタンから思っていたのだけど、もしかしたら中央アジアは食事を残すことに抵抗があんまりないのかもしれない。
というのも、一皿の量が結構多くて、出されたものを全て食べていたら胃がもたない。
けど、習慣から何度か全部平らげてしまい、ものすごく苦しい思いをしながらよくよく周りを見るとみんな結構がっつり残してたということが何度かあった。
野菜やフルーツの端っこや皮と同様に、残したものは鶏や牛の餌にしているようだった。
しかし習慣はすぐには変わらないので、滞在中に何度もはち切れそうなお腹を抱えることになる。


学ばない女だね。ちなみに肉は硬いから、ウマいんだけど(馬だけに)顎が死ぬ。

<当時のメモ>

皮を剥ぐと湯気が出ること、
脊髄がしぶきをあげること、
生の馬の脂肪は食べられること、
あばらをボキボキと折る音、
ぜんぶ初めてのこと

本当にいい体験をさせていただきました。
感謝しかない。


もしも、ビシュケクでの滞在がもともと予定していた1日だったら
もしも、バスターミナルへ行く前にお気に入りのカフェに寄っていなかったら
もしも、シェアタクシーではなく、予定していたマルシュルートカに乗っていたら
もしも、お姉さんが荷物を運ぶのを手伝わずに見ていたら
もしも、キルギスのことを「すき」と即答していなかったら

世の中は 「選んだ道」 と同じ数だけ 「選ばなかった道」があって
それぞれに面白いこと、楽しいことが待ち受けているんだろうけど
重要なのは、何となくでも自分で決めることだなって、この日感じました。
そして選択した先で、自分らしく頑張ったらいい。


結局このお家には、まる4日お世話になります。
別の日の話もかなり濃いので、書くまで時間がかかりそう。
のんびりやるね。笑



▼ちなみに事前に予定していた旅程と、その結果

10日 (木): ボコンバエバ村に到着。情報収集がてらホステルに1泊。CBT(地元の旅行会社)を通さずに同じプランが組めるか勝負どころ。
11日(金): うまく山入りできそうな場合は、トレッキング開始(できれば馬で)。夕方までにどこかの村の宿泊小屋に到着して日の入り、夜の星、日の出を楽しむ。
12日(土):穏やかな朝を過ごした後に帰りながらランチピクニック。夜にはボコンバエバに戻る。
13日(日):バルスコーンを通り過ぎる際にまるでおとぎ話のような渓谷と言われる「スカスカ」に立ち寄り、カラコルを目指す。カラコル到着後は情報収集。(もしもプランが巻けそうだったら、土曜のうちにカラコルに行って日曜朝のみ開催している家畜市場を見学。)
14日(月):カラコル→ アルティンアラシャンへ向かう。トレッキングと温泉を楽しむ。1泊できそうだったらする。
15日:カラコルに戻った後、カザフスタンとの国境周辺まで車で訪問。戻りがてらチョルポン・アタまで進む。岩絵美術を見た後に、時間がありそうだったら一気にビシュケクまで戻る。

こんな予定だったんです。だったんだけど・・・・

10日 : シェアタクシーでたまたまいっしょになった人に着いていく。馬の解体を見学する。パーティーに参加する。おうち泊まる。
11日: おうち泊まる。庭で馬を煮る。湖に行く。出て行こうとするが引き止められる。
12日: おうち泊まる。湖に行く。もはや何もしてない。出て行こうとするが全力の引き止めにあい結局もう1泊。
13日:スカスカ渓谷に行く。山で馬に乗せてもらう。引き止めを振り切り、お別れをする。
14日:カラコルでぼんやり。宿のお兄ちゃん(同い年)がアルティンアラシャン行きのもろもろを手配してくれた。夕陽と夜景を見る。
15日:よく分からないうちにロシアの人達のツアーに紛れ込む。アルティンアラシャン泊。


これだから、旅って面白いんだよな〜〜〜〜〜〜〜〜


そんな話でした。また明日。





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