見出し画像

サランデルの冷凍ピザ

小説の主人公が食べているものが、不思議と美味しそうに響く。

スウェーデンの国民的ミステリー、スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』シリーズには、ヒロインのリスベット・サランデルが、セブンイレブンで冷凍ピザを買い占めるシーンがある。パン、牛乳、チーズ、冷凍ピザで潜伏を乗り切ろうというんだから相当ジャンクな生活だ(野菜どこいった…?)。

2巻を読んだ勢いで、きょうのお昼はアルプラザで買った冷凍ピザを2枚。マルハニチロの、マルゲリータと、4種チーズのなんとか。少し解凍して、230度で余熱したオーブンにアルミホイルを敷いて焼く。けっこういい味だ。たぶん、作品が書かれた頃よりも、冷食の味は数段上がっていると思う。家の近所にはセブンがないけれど、セブン・プレミアムの冷凍ピザは値段も味もプレミアムらしいし。

オーブンレンジは小さいので複数枚を一気に焼けなくて、複数人の家族の昼食にはちょっと不便だ。ひとりで引きこもって過ごすような時にはちょうどいい。コーヒーも合う。よくチラシがポストに入っている宅配のでかいやつより、大幅に安上がりで済む。

***

映画『ドラゴン・タトゥーの女』で知られる、ミレニアムシリーズ。実は1巻の冒頭、北欧特有の固有名詞(名前や地名)がさっぱり頭に入らなくて挫折していた。が、上巻の半ばまでは、いわゆるジェットコースターの「上り」。動き出してからはとことん面白く、名前もすいすい頭に入ってくる。ブルムグヴィスト。アルマンスキー。ザラ。特に1巻の大ドラマを踏まえての2巻~3巻は息付く暇もなく読み続けてしまう。

件の冷凍ピザのシーンは、2巻の前半、新しい急展開に向けた前奏的な一幕になる。1巻終盤で大立ち回りを演じたリスベット・サランデルが、隠れ新居を手に入れて「生活を立ち上げていく」描写は少し異色だけれど、人物の幅をさらに豊かに表現しているように感じた。


🍻