Artist: Matteo Uggeri
Title: The Telephone
Label: Grey Sparkle
Format: CD, Cass
Genre: Field Recording
Release: 2022

イタリアのミラン在住のビジュアルデザイナー兼作曲家のMatteo Uggeriによる、自身が主催するレーベルGrey Sparkleより。

アルバムタイトルにあるように、音楽家の仲間に電話を掛け、歌やカバーの演奏をお願いし、それを70年代の電話機に搭載されていた古いマイクを介して録音しているという奇妙な案件。

会話の断片、古ぼけた機材特有のLo-fiな音質、注意すればところどころ聞こえる息遣いの生々しさ、背景に流れるノイズ、フィルターがかった音声、電話を通して聞こえる具体音、恐らくは手元にあった楽器での演奏など、受話器を通して聞こえるアナログな質感が非常に独特。

Diana Ross、Depeche Mode、Guided by Voices、Pascal Comelade、Joy Division、Neil Young、AC/DCなど、誰しもが知っているアーティストの楽曲を演奏しており、果ては仮面ライダーシリーズやドラえもん(映画)、ドラゴンボール(映画)などの音楽を手掛けた菊池俊輔まで飛び出す始末。

日常生活において意識していない音をありありと記録し、周囲の環境に改めて意識を向けさせるフィールドレコーディング。包括的な意味での環境、Matteo Uggeriと相手のコミュニケーションから見えるもの、そういった意識外のものや目に見えないものに意識を向けるとき、普段、如何に無意識的に生活をしているかが浮き彫りになるような気がする。音楽的なアプローチ、意識の実験としての記録、多角的な切り口で楽しめる本作。