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私たちはどんな世界観で環境を捉えているのか。

今日は今学期の後半が今日から始まり、Environment, Science, Sustainability(環境・科学・サステナビリティ)っていう授業が想像以上に面白かったので、復習がてらにアウトプットします。

(気候変動をどう伝えるかの続編は近いうちに更新します💪)

環境に対する世界観について

今日の授業で扱ったのは3種類のEnvironmental Worldview (環境に対する世界観)について。

1. 人間中心の世界観 (Human-centered worldview):人間は自然をコントロールする力を持っており、究極的には人間は地球を自分たちが望むように改変しても構わない。(市場原理主義による自然資本の管理など)。化石燃料産業などはこれの結果に近い。
2. 生物中心の世界観 (Life-centered worldview):人間は他の生き物の絶滅などを防ぐ倫理的な義務がある。人間よりも自然を中心においており、究極的には自然を残すためならば人間がいなくなった方が良いという考え方にも繋がりうる。環境保護活動家などは多くこれに当てはまりやすい。
3. 地球中心の世界観 (Earth-centered worldview):人間と生物たちは対等な関係で地球の生態系システムの中に存在しており、現在の世代は将来にも環境を残すために、生物多様性や生態系サービスなどのシステムを保全する必要があるという考え方。地球全体のシステムを考慮した世界観。原住民族などの考え方の中には、「自然の中に存在する人間」という概念が持たれているように感じる。

環境問題に取り組む人たちの中でも、それぞれが異なる世界観を持っていることによって、同じ問題に対する解決策も全く異なります。例えば、人間中心の世界観を持っている人は、気候変動の解決策としてジオエンジニアリング(大気中に太陽光を反射するような物質を放出し、太陽光の流入量を減らして大気の温度を下げるなど)によって地球のシステムを、完全に技術やテクノロジーで改変してしまうことを提案することがあります。一方地球中心の世界観を持っている人は、生態系の循環と調和するような資源のマネジメントや経済成長型の社会からの脱却を提案するかもしれません。

僕自身は「人間中心の世界観」と「地球中心の世界観」の間のような世界観を持っているなと思いました。自分が気候変動に対してアクションを取っているのは人間として生き残りたいという思いがあり、そのモチベーションに関しては人間中心的かもしれない。けど自分自身が生き残れるようなシステムってどんなものなのかと考えたときに、現在の気候変動を作り出してきた「人間が完全に自然をコントロールする」ようなシステムではなく、生態系の中でどう調和していくかを考えるシステムだなと。限られた資源をどう持続的に使って生き延びていくかを突き詰めていくと、地球中心のシステム思考に変わっていくように思っています。

個人の変化とシステムの変化

授業を受けていてかなり驚いたのは教授もクラスメートも、気候変動などの環境問題に対して、「システムの変化が必要だ」という認識を多く持っていたことでした。

「環境を改善するためには個人のアクションが最も重要だと思うか?それでは不十分だと思うか?」という問いに対してクラスの8割近くが「不十分だ」と答えており、一人一人のアクションは確実に必要だけど、社会システムの中で「誰が排出しているのか」を考えると、大きな化石燃料企業や政府の規制を変化させることの方が必要であるという意見が多く上がりました。

アメリカでは気候変動アクティビズムなどの影響で、経済や社会構造を変えることが必要だという認識が広がっていることに日本との違いを感じます。(自分自身ももっと頑張って発信しなければと思います)

個人の変化とシステムの変化という文脈で教授が話していたのは、「個人のアクションや責任に気を取られすぎると、往往にして企業や政府といった構造的な変化が必要だということを忘れがちになってしまう」ということでした。

もともとの環境運動は「環境問題のためにエコなことをしよう」というメッセージが多く広まっていましたが、「プラスチックボトルを使うのをやめたから、私はもう十分やっている。」という認識を持ってしまうことは問題を深刻化させることにつながってしまいます。

授業の中で出てきたこの漫画がとても面白かったです。

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1~2枚目は「気候変動、使い捨てプラスチック、海洋酸性化、石油利用のピーク、海面上昇」の問題の解決を求める手が、沈みかけています。

3枚目で「気候非常事態を宣言して、紙ストローを使う!」というメッセージとともに、「それさえすれば大丈夫」というようなハイタッチをしています。しかし命を救うために必要なのはハイタッチではなくて、根本的に引っ張り上げて救助すること。個人のアクションが十分であるというメッセージは根本的な解決につながらないということを表しています。

ただ、同時に個人のアクションも最も重要になってきます。気候変動運動を成り立たせているのは、一人一人の個人であり、その個人が消費行動を変えることが社会的な文化を変えることにもつながります。

また個人が生活の中で自然との関係性を取り戻すことも、地球や自然との調和した社会に変えていくために重要になります。実際、生活の中で日常的にアスファルトではなく自然とのふれあいがある人たちは、メンタルヘルスが向上すると報告されています。

どのようにシステムを変えるべきか

またもう一つ印象的なだったのは、「人口増加が気候変動の大きな原因である」という仮説は必ずしも正しくないということです。

なぜかというと、上位17%の先進国が世界全体の70%の資源を使っており、実は人口増加が最も激しい地域は、最も資源の利用が少ない地域だからです。最も裕福な10%が世界の49%のCO2を排出しているというグラフもありますが、問題なのは人口増加よりも先進国が湯水のように資源を使い続け、豊かさを保っていること。

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(FoE Japan Websiteより)

現在の物質的な発展を世界的なロールモデルにするのではなく、均等な資源の配分や使う資源を減らせる社会システムの形に変えることが不可欠です。

私たちにできるアクションとは?

授業の最後で、どのようにしたら持続的に環境のインパクトを減らして生きることができるかという問いに対するアクションが紹介されていました。

特にその中で好きだったのは、

・もっと自然から学ぼう
・友達を作って、家族を大事にしよう。(精神的な充足やシェアすることがより可能になる)
・地球は私たちが生活する上で十分なニーズは満たしてくれるが必要以上の貪欲さは満たしてくれない

あれ、これって本当に「環境科学(science)」の授業なのかな?と所々で思うんですが、環境問題に取り組むには心理学や哲学、社会正義の考え方を無視できないということをよく表していると思います。

環境問題や気候変動は社会正義・人種差別の問題、植民地主義などの考えとは切り離すことができない。教授自身もバードウォッチングがとても大好きだけど、鳥たちを気候変動から守るためには、政治的なアクションが必要になってくる。解決策の複雑性や他の学問との関連性を意識することを強調していて、とても学びがいがあると感じます。

個人的にすごく嬉しいのは、科学の授業にも関わらず、世界の原住民族が昔から行ってきた自然との関係性や伝統へのリスペクトや学ぶ姿勢がとても強いことです。前学期の授業でアメリカの原住民族は、人間を自然の一部として捉えており、調和しながら営みを行う文化を持っていることを学びました。環境運動ももともとは裕福な人々が多く結果的に白人中心的になってしまった過去を踏まえて、環境正義運動などの台頭により人種的マイノリティや原住民族などの人々を包括的に含んだ運動に変わってきています。

現在の西洋的な科学でわかっていることだけに縛られることなく、昔から何世代も続いてきた自然との関係性のあり方について学ぶことの重要性を、科学専門の教授が教えていることに考えの広さを感じます。

まだ自分自身も勉強できていないですが、日本でもアイヌの人々の自然との関係性は全く今の私たちの文化とは異なるという話を聞いたことがあります。日本の文化の文脈の中でも、持続可能な伝統や慣習はあるのか、より学びたいと思わせる授業でした。

また書きたいと思います。

システムを変えるためのアクション

それとシステムを変えるアクションということで、今だからこそ出来るアクションを紹介したいと思います。

日本政府は今2030年までに日本をどんなエネルギーで賄おうかを決める「エネルギー基本計画」という政策を決めている真っ最中です。気候変動対策を進めるためには、2030年までに出来るだけCO2を減らせるよう再生可能エネルギーを増やすことがとても重要だと個人的に思っていますが、現在のままだと原子力発電と火力発電をめちゃくちゃ推している、審議会の委員や経産省中心の政策になってしまいそうです。

原発に関しては国民の理解がないのに、どんどんやった方が良いっていう意見ばかりが審議会で出ており、違和感しかないです。

この議論に合わせて、資源エネルギー庁が国民の意見を「意見箱」で募集しています。

再エネをもっと増やして欲しい。原子力発電の使用を話す場には国民を巻き込むことが必要。石炭火力発電を2030年までに無くしてほしい。

あなたの思う意見を書いて、意見箱に送ってみてほしいです。

Fridays For Future Japanのウェブサイトからアクセスできます!どんなメッセージを送るかの例文も出ているのでよかったら参照してください。


それでは、また。

Isao

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