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【修了生対談】日本のイノベーション教育の先駆けであるi.schoolを一年間受講した修了生はプログラムをどのように振り返るのか?

i.schoolとは?

「イノベーションを生み出す人材を育成する。」を理念に掲げて、学部生と院生向けにセンスや個性に頼らないアイディア創出法を学ぶ機会を提供しています。

プログラムに参加できる学生を年度毎に募集する「通年生制度」を導入しており、通年生は年間を通じて開催される複数のレギュラー・ワークショップの全てに参加できるだけでなく、イノベーションのトップランナーを招聘する非公開のトークイベントなどにも優先的に参加することができます。

i.schoolは2009年6月に東京大学知の構造化センターの教育部門としてスタートした後、2017年からは東京大学から独立し、現在は一般社団法人日本社会イノベーションセンター(JSIC)が運営しています。また、i.school/JSICとして行政や企業、社会人個人にも門戸を広げて幅広く教育の機会を拡充しています。

今回は2021年度通年生としてi.schoolの通年プログラムをやり遂げたメンバーに来てもらい対談形式で一年間を振り返ってもらうことにしました。

(対談に参加してくれた2021年度修了生メンバー。左:かのん 中央:ちひろ 右:はるか)

修了生対談は感染症対策のため、写真撮影以外はマスクを着用し、外でソーシャルディスタンスを保って実施しました。

実際に何が学べたのか?

ちひろ:今日は二人とも来てくれてありがとう。i.schoolの学びを終えた今だからこそ感じることを色々伺えればと思います。まずは一年間を振り返ってみての感想を教えてください!

かのん:なんだろう、すごく充実してたな。好奇心が刺激される一年だった。

はるか:そうだね、普通に過ごしていたら知らなかった見え方や新しい考え方を広げられた時間だったと思う。でも、大変だった(笑)

ちひろ:いい意味で大変だったからこそ、充実していたのかもしれないね。

かのん:うん、体力は使うよね。通常プログラムの時間外でも自主的に集まってみんなで議論してたね。

ちひろ:チームでのコミュニケーションは大変だった記憶があるかも。議論を重ねてチームとしてアウトプットを出すための雰囲気作りに苦戦したなあ。

はるか:確かに。でもアイディア発想※1は、みんな後半戦慣れてきてたよね。そこまで負担にならなくなった。

※1 i.schoolではアナロジー思考のほか、ニーズ×シーズ発想、未来探索アプローチ、エスノグラフィックアプローチ、エクストリームユーザーアプローチ、バイアスブレイキングなどのアイディア発想手法を体系的に学ぶことができます。

ちひろ:ちなみにi.schoolでアイディア発想法について学ぶ機会は多いと思うけど、具体的にできるようになったことがあれば教えてほしい。

はるか:まだまだ良いアイディアを出せるわけではないけど、出すためのプロセス理解の解像度が上がったと思う。

かのん:普段の生活で出会う既存の仕組みやデザインに疑問を持つことができるようになったよね。「これはどんな意図で設計されているんだろう」みたいな。

ちひろ:確かにぼんやりと無意識的に行っていた思考に名前があるのかっていう驚きの感覚はあったかも。これってアナロジーによる発想手法※2なんだ、とかね。

※2 アナロジーとは、ある概念とある概念の間に存在する属性と属性、関係性と関係性の間の対応関係のことを指します。アナロジー思考とは、アナロジーを使って新しく有効な⼿段のアイディアを発想する⽅法のことです。

例えば、Amazonとくら寿司は全く業態が異なりますが、どちらも過去の消費データを基に最適な商品・お寿司がお客に提案される仕組みになっている「構造的類似性」が高いです。表層的類似性が低く、構造的類似性が高いアイディアは新奇性が高くなる可能性があります。

かのん:「いわゆる破壊的イノベーションはどのように生み出されるのだろう?」っていう疑問がずっとあったのだけど、i.schoolでは思いつきやセンスではない誰でも起こせるプロセスを学ぶことができたのがよかった。

はるか:そうだね、あと議論を俯瞰してみれるようになったかも、メタ認知のスキルというか。

ちひろ:確かワークショップでもうまくいかなくなると総括的分析をよく行ったよね。今までの議論の流れとプロセスを俯瞰した上でどこに失敗要因があったのか、どのように改善できるかを振り返って進めていくのは、かなり勉強になった。

かのん:うん、イノベーションを起こすって甘くないんだなって実感したな。

(誰でもイノベーションを起こせるプロセスを学ぶことができてよかったと語る、かのん)

どんな人が学びにくるの?

はるか:ワークショップ参加者の構成としては主に通年生と公募生、そこに企業の社会人も参加して1回のワークショップに合計20人弱くらいだったかな?

かのん:そうだね、毎回4〜6人でチームを作って設定された手法と領域でアイディア発想を行ってた。ワークショップごとに人も変わるし、毎回新鮮だったなあ。

はるか:もともと東大発ってこともあって学問的に裏付けのあるイノベーション手法やそのプロセスを学べるのは強みだよね。あと、たった一回だけじゃなくて年間を通して※3、何度も手を動かして経験するからこそ自然と考え方がインストールされた気がする。

※3 2021年度のワークショップは合計9つ。「高等教育の未来」、「中小企業のイノベーション」、「プライバシーの未来」、「人材育成のイノベーション」など手法もテーマも毎回新しいものを学びます。日立製作所のデザインチームや日本総合研究所、ビジネスデザイナー濱口秀司氏などのゲスト講師やパートナー企業を迎え入れながら、毎年特別講義を提供しています。

ちひろ:そもそも単位も学位も出ないからこそ、本気で一年間根気強く続けられるような、やる気のある人しか集まらないのが逆に良い雰囲気作りになっているのかもね。

かのん:なんか、使い方次第で本当に学校だなって思う。潜在的にイノベーティブな職種に関心のある同世代と出会うのはすごく貴重だし、これからも同窓会とかやりたいよね。

(質問事項を確認するちひろ)

ちひろ:そういえば、そもそも何で二人はi.schoolに入ろうと思ったの?

かのん:破壊的イノベーションがどう生まれているのかに、純粋に興味があったんだ。革新的な技術を生み出す力はなくても、アイディア次第で人の行動が変わるのは面白いなって思ったの。アイディアが生まれる仕組みを学んでみたいと思ってネットで色々検索して辿り着いたんだ。

はるか:自分は高校1年生の時に初めてTISP※4に参加した時に感動したのがきっかけ。それまでは勉強一筋でしかなかったけどi.schoolで出会った人たちは知識を持っているだけじゃなくてちゃんと学びを創造的な活動に昇華させていて衝撃を受けて...。自分もこんな東大生になりたいと思ったし、東大に入ったらi.schoolに行くぞってずっと密かに考えてた。

ちひろ:二人ともi.schoolの模範生だ...何か来るべくして辿り着いたような気がするね。やっぱり、自分こそと思った人たちにはぜひ挑戦して欲しいな。

※4 i.schoolではTISP(Tokyo Innovation Summer School)という海外の学生と地域の高校生と共に実施するサマープログラムも実施しています。2021年度は完全オンラインで、地域の「中小企業のイノベーション」をテーマに高校生とワークショップを実施しました。

(オンラインで実施したTISPの様子)

ちひろ:ちなみにi.schoolはこんな人に向いてそう、もしくはこんな人には向いていなさそうとかってあるかな?

かのん:正直、学問と両立するって強い意志がないと修了するのは難しいと思う。

はるか:向いている向いてないというより、忙しいからこそ両立する意思と時間の捻出は必要だよね。

ちひろ:もはや必要条件だよね。あと、大変でもやり遂げるみたいな粘り強い人は多いかなあ。

かのん:文理とかは関係ないし、考えるのが好きな人がすごく多い印象。議論が好きな人や物事を突き詰めることが楽しめる人はきっと頑張れると思うから、ピンと来たら、ぜひ来て欲しいな。

(i.schoolは忙しいからこそ両立する意思と時間の捻出は必要、と話すはるか)

一年前の振り返りとこれから

ちひろ:今ちょうど通年生募集の時期だけど、募集した時の自分たちにメッセージを送るとしたらなんて言う?

2022年3月にこの記事は公開されました。ちなみに2022年度の募集締め切りは【3月9日(月)23時59分まで】となっています。ピンと来た方は応募してみてください。

はるか:応募してよかったね、って言ってあげたい。あとは、もうちょっと自分からガツガツもっと踏み出した方が学びも多かったんじゃない、ってアドバイスしたいな。

かのん:わたしは、去年の応募締め切りの一分前に滑り込んだからまずは応募できてよかったねって(笑)少しでも気になったら、迷わず応募は早いうちにした方がいいと思った!

ちひろ:そうだね、実際に社会人のプロの方々も講座を受けに来るくらいだから、どんなフェーズでも学びになると思う。気にせずに、もう知ったなら「今行け!」だよね。

はるか:うん、まさに「今行け!」だと思う。

(募集した時の自分たちへの想いを語る)

ちひろ:じゃあ最後の質問です。i.schoolでの学びを通して今後やってみたいことなどがあればぜひ聞かせてほしい。個人的には、こういった恵まれた環境で教育を受けたからこそ、自分もイノベーションを生み出す義務があると思うし「自分でもできるんだ!」ってライトに捉えられるようになったと思うから、これからは自分のアイディアを社会で表現していきたいな。

はるか:自分も、いつかイノベーションを起こしてみたいと思えるようになった。あとは、今先輩の研究の手伝いをしているのもあって、これからは自分なりのテーマでi.schoolでの学びを研究に活かしたいと思ってるかな。

かのん:わたしは、i.schoolに来てから物の見方が変わったと思うからこそ、何かがうまくいかないと思っている人に「見え方や捉え方を変えたらうまくいくんじゃない?」って提案して一緒に考えられる人になりたい。

(対談、お疲れ様でした!)

今回は2021年度i.school通年プログラムの修了生が集まり対談形式でインタビューを実施しました。少しでも雰囲気や活動内容の理解を深めて頂けたら幸いです。興味を持った方はぜひホームページも訪問して頂けると嬉しいです。(インタビュアー、ライター担当:ちひろ)

i.school / JSIC公式ホームページはこちら。

2022年度i.school通年生の募集ページはこちら。

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