雨に置き去り
ハンドルを握る君の視界にたった一瞬でも写りたいと願った私がフロントガラスに飛び散って乱反射する。
流れる世界がもう終わりだと囁くから、それならいっそ置いていってほしい なんて我儘に気付かない優しさを、踏みにじりたいという欲。
真っ直ぐに前を見つめる横顔が私のものではないこと、きっとずっと前から気付いていた。
追いかける背中は遥か彼方に遠ざかって、微かな煙に寄り添う私はどこへも行けやしないからただよっていよう、もう少しだけ。
揺れる車内で辿った雨粒の道が君に続いていてほしかった夜、ひとりよりも寂しいことがあるのだと知って目を閉じた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?