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酒井くにお師匠、忘れません。

と言われても。

忘れませんよ、くにお師匠。


漫才師・酒井くにお師匠が旅立たれました。
発表があったのは11月7日。
あの夜から今もなお、SNS上にはくにお師匠を偲ぶたくさんの言葉が書き込まれています。

私も少しだけ気持ちを書きました。


右側は浮世亭三吾師匠です。
三吾師匠、この日は初のコントに挑戦されたのです。
ゲストとしてお越しだったくにおとおる師匠、
確かとおる師匠が女装されたと記憶しています。
くにお師匠ではなく、とおる師匠が女装。
超絶レア。なんで写真撮ってないかね(悔)

この写真は当日の楽屋風景。
例によって記録係の私がカメラを向けると

「どこの老人ホームや!!」

と絶妙なツッコミを入れる、くにお師匠。

そのキラーン!!と輝くお顔をご覧くださいな。



とおる師匠の笑顔もかわゆすぎん?

これ、ほんとに気に入ってる一枚なの。

他にも写真ないかな〜って探したら、たくさん残してありました。
2013年にスマホにかえたのでそれ以降のものになりますが。
今しばらく、くにお師匠フォトギャラリーをお楽しみいただきたいと思います。

写真ホルダー内で、いちばん古いのがこちらです。


くにおとおる師匠を挟むのは、同じく松竹芸能の漫才コンビ・ボルトボルズさん。
カメラを向けたらすかさず美しいフォーメーションをキメる、2コンビ。

素敵ぢゃわ。


そしてまた、こんな写真もありました。


くにお師匠の顔半分と、とおる師匠の頭がキレとるねん。

なぜかというと。

なぜかというとだね。

後日2018年。道頓堀角座が閉館になる際に、【角座のこと】として思い出を綴った投稿に答えが書いてありまする↓↓↓


そういう理由ですわ。

ほんと、はるか師匠が悪い。


いよいよ翌日、2018.7.22。

道頓堀角座、最後の日がやってきました。

ファイナルを飾る公演は「シンプレ寄席」。

楽しかったなあ。



同年秋、三吾美ユルの会「親父の三吾が50年」が国立文楽劇場で開催されました。

楽屋には大勢のお客様が訪れ、たいへんな賑わいでした。

その一コマをSNSに投稿してるから見て。

「財前教授の総回診です」
「うそ」
こっそりボケてこっそりツッコむ。
とても楽しそうな当時の私。

このあと打ち上げ、ミュンヘンへ。



いかがでしたでしょうか、くにお師匠フォトギャラリー。

まだまだご紹介したいのですが今回はいったんしめまして。

ここからは酒井くにおとおる師匠の漫才台本にまつわるエピソードを書いておきたいと思います。

私が初めてくにおとおる師匠とお仕事をさせていただいたのは、2012年の「上方演芸会」(NHKラジオ)でした。
当時の番組担当デイレクターだったSさんは、私たち後発の作家にあらかじめ「誰に書きたいですか?」と希望の演者数組を聞いて、それをなるべく現場に反映しようとしてくださっておりました。
私が希望リストに「酒井くにおとおる師匠」と書いて提出していたところ、念願叶ってお二人の台本を担当させていただくことになったのです。

さらにSさんは
「ネタを書く前に、師匠方と顔合わせをしときましょう」
と仰いました。

実際、漫才台本はフォーマットに合わせればそこそこのものは書くことができます。
「演者A B」で書くこともできる。でもリアルにお互いのことを知っていた方が、作家は書きやすく、演者は演りやすく、よりよいネタになりやすく、よりよい番組になるんじゃね??と、Sさんは思っておられたと思うのです。

だって仕事のカロリーを計算したら、馴染みのベテラン作家さんに「次、くにおとおる師匠の台本お願いしますね」とメール1本入れたら済むことやもん。
それを経験の浅い作家にふってくれ、事前の顔合わせまでセッティングしてくれるって……Sさん!!愛が深すぎる!!
親切、丁寧、真心のディレクター勝手に認定だよ!!

さて日記によりますと。
「2012.3.18(日)13:30  テンゲキ近くの喫茶店、くにおとおる師匠とSさんと打ち合わせ」とある。
テンゲキとは、当時、通天閣の地下にあった松竹芸能の劇場です。
その近くの喫茶店で、Sさんの立会いのもと、くにおとおる師匠と初めてお会いすることになったのでした。
お2人は、舞台のままのホンワカとした優しい笑顔で迎えてくださり、ホッと緊張がほぐれる私。
過去にそらもう超怖いお師匠さんや超塩対応のお師匠さんにもお会いしてますからな(震)

さてさて新ネタの内容をどうするかという話になりまして。
お2人のお歳が60代半ばだったことから
「60代男性あるあるみたいな話し、どうでしょうか」 
と言うと、くにお師匠が
「それいいわねえ」
とノッてきてくださった。

くにお「私、最近、足が上がらなくってねえ……」
とおる「そうそう。段差のあるところでつまづくならわかるけど、なんにもないところでつまづいたりしない?」
くにお「する。あれ、なんでだろうね〜」

おおお、ガチの60代あるある話しになっていっとるやないかーい♡と嬉しくなりながらお2人の話しをヒアリング。

すると、とおる師匠がクスクスと思い出し笑いをしながら
「この前、出前で喫茶店のホットコーヒーをとったのよ。コーヒーカップにラップしてるの気付かなくて、この人(くにお)ラップの上からミルクかけてちゃってね」
と、くにお師匠のオッチョコ話を暴露。

「それを言わないでよ〜〜〜」

と恥ずかしそうに笑う、くにお師匠。

はぁぁぁぁ……憩いの昼下がり。
癒されすぎて全身がほぐれていく。

ネタの打ち合わせというよりそんな世間話しに終始した初めての顔合わせでしたが、お2人の人となりや呼吸を間近に感じることこができたのは本当に有難いことでした。

では今日のお話から台本を進めていきます、となった時に、お2人が口を揃えて仰ったのが

「可愛いネタにしてね」

という言葉でした。

承りました。
可愛いネタにしかならんと思います♡  Love♡

ということで、台本完成。

「段差のないところでつまづいた話」を入れています。
「ラップの上からミルクの話」は話の流れ上、盛り込めませんでした。

そういえば晩年、「オシッコのキレ悪い」のくだりをよく使ってくださっていましたね。そんなのも嬉しかったりで。

おかげさまで収録は大変盛り上がり、お客様にもよく笑っていただきました。
後日、くにお師匠にお会いした時に
「あのネタ面白かったわぁ。また書いてね」と仰っていただきました。
ただ悲しいかな、番組は担当者さんの移動により演者も作家も変わるし、その他の理由もあったのかもわかりませんが、私にくにおとおる師匠の台本依頼が来たのは、この回限りとなったのでした。

もっと書きたかったよー!!(叫)

というわけで、くにおとおる師匠に書いた、たった一本のネタ。
私にとって宝物です。

表紙。


1ページ目。

1行目の上に
「草刈正雄 枯草まっさお」
と書いてあるのは確か
「阿部寛の前に、草刈正雄言うてから入るわ」と
とおる師匠が仰ったんですね。


こちらが音源。


久しぶりに聴いてみようかな。
 
おふたりにぴったりの
可愛いネタ。

         


漫才台本全編はこちらからお読みいただけます⏬
どうぞご一読のほど!!


(了)


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