子供に保護者を否定させてよいのか 教師のジレンマ
学校で子供に指導をしていると、
「これを子供に教えていいのか。それは許されるのか。」
と、悩むときがある。
その内の一つが、
結果として自分の保護者を否定することを、子供に求めてしまう指導
である。
前回この「ヒント帳」では、受動喫煙について述べたので、そのつながりで例を挙げると、外部講師を招いて行う「喫煙防止教室」や保健体育の「たばこの害」についての授業が、そうである。
主な指導内容は、喫煙や受動喫煙が体にどんな悪健康を及ぼすのかということだ。
そのとき、しばしば子供のこんな声が聞こえるのである。
「私/僕の家の人、たばこを吸うんだ」
こうした指導、特に、「喫煙防止教室」は、子どもを通じて家族や身近な人にたばこの害を伝えることや、受動喫煙を防止する意識を啓発することもねらいとしているので、上記のように、子供が喫煙する家族に目を向けることは、「望ましい」ことである。
だから教師は、こう言う子供に対して、
「今日、学んだことを家の人に話してあげるといいね。」
などと指導をすることが多い。
しかし、これらの一連の指導は、喫煙する家族を持つ子供に対して、
「あなたの保護者・家族は、望ましくない行為をしています」
というメッセージは内包していることになる。
「たばこの害」について学んだ子供は、その後、喫煙する自分の保護者のことをどういう目で見るようになるのだろうか。
家族なのだから、子供が保護者の健康を心配することは悪いことではないという考え方があるだろう。
しかし、全ての子供の家庭状況が、そうした理想的な家族関係であるとは限らない。
「お父さん、たばこをやめてよ」
「お母さん、私のいる所でたばこを吸わないで」
「今日、学校でタバコが体に悪いということを勉強したよ」
こんな子供の言葉に、苦笑をしながらでも、頷いてくれる保護者ばかりでないことは、容易に想像がつく。
「正しい」ことを学校で教えるのは、大切だ。
だから、そうした指導をする。
しかし、そうしながらも、
「私のこの指導が、子供の幸せを壊す契機になってしまわないだろうか」
と、少なからず躊躇している自分も、そこにいる。
子供が結果として自分の保護者を否定的な目で見ることにつながる場合がある指導は、学校現場にいくつもある。
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