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クロールはこの指導で誰でもどの子もできる! ポイントは息継ぎ「ブ―ッ」「パッ」

各学校で水泳学習が進んでいると思う。
次に紹介するのは、私が行ったクロールの指導方法だ。
この方法で指導をすることで、子供たちがクロールで息継ぎをしながら泳げるようになった。

前提として、大プールに入れる学年、身長であり、伏し浮きとけのびに十分に慣れていることが必要である。

3年生以上を対象とした指導では、スイミングスクールに通った経験のない子であっても、以下の段階的な指導をすることで、1シーズンで大半の子が10mくらいはクロール(的な泳ぎ)で泳げるようになり、2シーズンでほとんどの子が25mを泳げるようになった。もちろん、水に慣れている子、上達の早い子は1シーズンの指導だけで25m泳げるようになった。

1 まずばた足!

まずは、ばた足だけの指導。クロールは腕が推進力だが、ある程度ばた足ができないと体が浮かないし、前に進みにくい。

①プールサイドで足の動かし方を学習
プールサイドにビート板を敷いてうつ伏せになり、ばた足の動かし方を学ぶ。
水を足で打つ時、足首を伸ばして甲の部分で打つこと、膝を曲げ過ぎず脚の付け根から大きく動かすことは、どの教師もよくご存知だと思う。

うつ伏せである程度できるようになったら、プールの縁に腰掛けて水に脚をつけてばた足をする。疲れてきても最低で20~30秒間くらいは続けられるように慣れさせる。

リズムがつかめない子には、教師が「バタバタバターッ」と勢いよく言ってやるといい。

②プールの中でサイドの縁を捕まって(息継ぎなし)
プールの中に入り、腕を伸ばして縁に捕まり、ばた足の練習。顔はまだ上げたままでいい。
体を浮かせ、姿勢を良くして、正しいキックを続けることができるようにするための練習である。脚がうまく動かない子には、教師がプールに入り、脚を持って動きをサポートしてやる。

機械的な練習で楽しさも学び合いもないが、ここまでは仕方がないところである。
ある程度「慣れた」「できる」になれば、次の③を一度飛ばして④に進み、ビート板を使ったリレーをしたり、数人で協力してスティックフロートに捕まってばた足をしたりすることもできる。そこまでの辛抱である。

③プールの中でサイドの縁を捕まって(息継ぎあり)
顎を引き、面付けをした姿勢でばた足をする。
「ブ―ッ」「パッ」、「ブ―ッ」「パッ」のリズムで繰り返し呼吸をさせる。これがポイントである。
「ブ―ッ」は、水の中で息を吐かせる。吐いたらすぐに顔を上げさせ、「パッ」と言わせる。
息を吸おうとすると水を飲みやすいことを伝え、「パッ」とあえて言わせる。そして、「パッ」と言った瞬間、自然に息が吸えることを体得させる。

つまり、この段階は「ばた足+息継ぎ」練習である。
長い距離を楽に泳ぐためには、「息継ぎ」が必須であることから、この段階がとても重要であることはお分かりいただけると思う。

④ビート板で(息継ぎなし)25m
上記の③の練習はなかなか苦しい。そこで、ビート板を使い、顔を上げたまま息継ぎの心配をしないで「前へ進む=泳ぐ」ことを楽しませたい。

ビート板を持つ手には力を入れさせない。肘から先を乗せる感じで。

ある程度慣れたら、リレーをしたり、鬼ごっこをしたりと、変化を付けて楽しんでやらせたい。

なお、経験的に何割かの子は、バタ足がなかなか進まない。そのため、膝が一層曲がりやすくなる。膝を曲げ過ぎないことは指導するが、進みが遅くても気にしない・させない方がいい。腕で推進できるようになれば、それほど目立たなくなる。ばた足だけで進む時には、教師が引いてあげればいい。

⑤けのびからバタ足(ビート板なし・息継ぎなし)
ビート板なしのばた足に挑戦である。
顔を水に付けて姿勢を真っ直ぐにし、ばた足で進む。息が苦しくなったら立ち、また、繰り返す。

慣れてきたら、息継ぎなしでどれだけの距離を進めるか挑戦させてもいいが、安易にやらせないこと。無理は危険である。子供の状態をよく見極めて!

覚えておくべきは(よく知られていることだとは思うが)、子供は溺れる時には、「静か」に溺れると言われていることだ。ばたばたともがいて「大騒ぎ」で溺れるのは、ドラマだけだという。入浴中に溺れる時も同様だという。
水泳中は、「バディシステム」に頼らず、教師の目でしっかり子供の様子を観察すべきだ。

⑥ビート板で(息継ぎあり)25m
ビート板(または、フロートなど)を使い、息継ぎをしながら25mに挑戦させる。

⑦教師が手を引いて
上記、④、⑤、⑥を行う時、苦手な子に対して、教師が手を引いたり、ビート板を引っ張って補助をする。教師が後ろ向きに進んでいくことで、子供への水の抵抗が弱まるのだろう、子供が楽に進める。そして、何よりも安心する。苦手な子ほど、「安心」は大きな力になる。

2 ばた足+腕の動き

息継ぎしながらばた足がある程度できるようになったら、腕を付ける。
ばた足で25m泳げなくても、並行して行わせる。

①プールサイドで腕の動かし方を学習
片腕ごと交互に回すやり方でリズムを掴ませる。
けのびの要領で体の前に腕を伸ばして手のひらを重ね、「いーち」「にーっ」と言いながら、交互に回させる。

遠くの水をキャッチし、大きく腕を回し、水から出す時にしっかりプッシュすることをイメージさせる。

②プールの中でサイドの縁を捕まって(息継ぎなし)
プールの中に入り、まず、立った状態で、手をプールの縁に乗せて腕を回す。顔は上げておく。

次に顔を付けて同じように腕を回す。

その次に縁に捕まった状態で足を浮かせ、腕を回す。苦しくなったら一度立つ。息継ぎができる子にはどんどんやらせる。

慣れてきたら、足をばた足にする。

③プールの中でサイドの縁を捕まって(息継ぎあり)
縁に捕まった状態で足を浮かせ、腕を回す。息継ぎをさせる。顔を上げる方を右側、左側のどちらにするか決めさせる。「ブ―ッ」「パッ」、「ブ―ッ」「パッ」のやり方で、腕の動きに合わせて水中で息を吐き、顔を上げて口を素早く開けて「パッ」と言わせる。
その時に、横向きに顔を上げるのが大切なのだが、これが難しい。私は、「耳を伸ばしている腕に付ける」「後ろを見るようにする」と言葉がけをしてきた。

この③の指導が最大のポイントなので、頑張らせたい。

④息継ぎなしで「ダッシュ」
プールの縁での息継ぎの練習ばかりでは楽しくないので、息継ぎなしのクロールで泳ぐことに挑戦させるといい。腕を大きく力強く回す練習でもある。上述したように、遠くの水をキャッチし、大きく腕を回し、水から出す時にしっかりプッシュすることを意識させる。

⑤ビート板で(息継ぎあり)25m
③が何十回も続けてできるようになり、④が10m以上できるようになれば、いよいよビート板(フロートなど)を使って、息継ぎしながらクロールで泳ぐ。

横向き姿勢で呼吸をすることを特に意識させる。

⑥教師が手を引いて(息継ぎも補助)25m
⑤をやらせながら、教師が個別に息継ぎの頭の動かし方を補助する。
教師がプールに入って、子供の手を片手で引きながら、もう片方の手で、軽く頭を掴み、呼吸時に軽く頭を回してその動きを助けるのである。子供は、引いてくれている教師の手をビート板代わりにして交互に手を乗せながら、腕を回しつつ息継ぎをして泳ぐ。
頭を教師が回すことで、顔が正面の方向に上がらないようにする練習であることを、子供が了解していることが必要である。

⑦教師がビート板を引いて25m
ある程度形良く呼吸ができているが、25mは続かない子には、教師が軽くビート板を引きながら後ろに下がっていく補助をするといい。
一人では25m泳げない子でも泳げてしまう。先に書いたように子供が進みやすくなるようだ。

3 クロールでどんどん泳ぎ、形を整えていく

ビート板(フロートなど)なしで、クロールを泳がせる。
1ストロークに対して何回キックさせるかは、考えさせずに私は指導してきた。その前にまず、クロールの泳法で25m泳げるようになることを重視してきたからだ。

とはいっても、ビート板を用いて25m泳げたら、すぐにビート板なしでも25m泳げてしまうわけではない。

ここに述べた段階的指導は、先に進んだら、前段階は行わないというものではない。
その逆である。
1時間の授業の中で、例えば、まずビート板ありのばた足を準備運動的な扱いで行い、水に慣れたところで、ビート板ありでクロールを行う。息継ぎの形が良くない子は、縁に捕まって「息継ぎ特訓」をする。それから、ビート板なしでクロールに挑戦。その結果から、引き続きビート板なしクロールで自分の決めた距離に挑戦する子もいれば、ビート板ありクロールでもっと基本的な力をつけようと頑張る子もいる…というふうに学習が進むのである。そのように、「段階」を往復しながら、漸進的に向上していくのである。

ちなみに、私の勤務していた地域は水泳指導がさかんで、4年生の終わりには、大半の子がクロールで25m泳げるようになり、5年生の終わりには、同じく大半の子が平泳ぎで25m泳げるようになっていた。