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絵の具はケチらず毎回全色パレットに出させるべし 大先輩の教え

前回に続き、図工の大家であったA先生からの「教え」を紹介する。

前回は、A先生の「教え」を基に、絵の具は低学年の頃から多く使わせると良いこと、ただし、その時には、共用絵の具がぜひとも必要であることをお伝えした。

今回は、3年生からいよいよ始める個人用絵の具の指導についてである。

次が、今回のA先生の言葉である。

水彩絵の具の指導では、毎回原則的に、パレットに全色の色を出させるとよい。
その時には、絵の具の箱に並んでいる順番通りに。そして、たっぷりと。

A先生がこう考えていた理由は、次の三つであると私は考えてきた。

1 色を覚えることができる
2 色彩感覚を育むことができる 
3 混色の指導が効果的に行える

この三つの理由により、結果として、よりよい描画指導ができるのである。

私は、最初の絵の具指導で、この三つの理由をしっかりと子供に説明し、毎回絵の具を全色パレットに出させてきた。

今回の記事は、この中の1と2の二つについて、お伝えする。

1 色を覚えることができる

子供たちが色について十分に知識をもっていると思ったら大間違いである。
子供たちが知らない色名は少なくない。間違って色の名前を覚えている場合もあれば、色の違いは認識できても、言葉で色名を表すことができないという場合もある。

絵の具をパレットに出す際に、毎回全ての色を出すことで、子供たちは、色と色名を正しく覚えることができるのである。

このことは、割合としては40人学級ならば一人はいると言われている、色覚に対して困難さを抱えている子供に対しても有意義であると、私は考えている。色名と合わせて色を「見る」ことで、わずかでも色の違いを認識することができると思うからである。
以前、私が指導したある子は、自分が周りの子とは異なる色の見え方をしていることを十分に自覚しており、それを踏まえて着彩をしていた。物の形を捉える技能も際立って高かったが、その絵は色彩も大変美しかった。私は迷わず図工の成績をAとした。

ちなみに、全ての国の人間が皆同じ色の見え方をしているわけではないことはよく知られている。国が異なれば、つまり、用いている言葉が異なると、色の見え方が異なるそうだ。今井むつみ氏(2010)の『ことばと思考』(岩波新書)に詳しい。

2 色彩感覚を育むことができる

絵の具の箱に並んでいる絵の具の順番はでたらめではない。
メーカーにより多少の違いはあるが、必ず色相の順番になっている。
色相環と呼ばれている順番だ。
毎回、この色相の順番で絵の具を並べることで、色味の近さや遠さ、補色などの色彩感覚が育つと思うのである。

だから、子供への用具指導では、絵の具を箱の裏側に記載されている順番通りに、いつもきちんと並べてしまわせることが重要だ。

そして、色相順にパレットに出させることで、効果的な混色指導ができる。

そのことは、次回にお伝えする。