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オールの小部屋から⑧ 佐野洋さんのこと

 ご無沙汰しております。目下、オール讀物11月号(10月20日発売予定)の入稿ラッシュで、ついつい更新が滞っております。
 本日10月7日は「ミステリー記念日」だそうですね。174年前のこの日、エドガー・アラン・ポーが亡くなったことに由来するのだとか。
 まさにいま放送中の日テレの推理ドラマ「THE MYSTERY DAY」も気になるところですが、原稿を待つ身としては、仕事をほったらかしてテレビ画面に見入るわけにもいかず……。
 そこで、ミステリーにちなんだ話題として、編集部の「佐野洋文庫」をご紹介しようと思います。
 みなさん、推理作家・佐野洋さんをご存じでしょうか。

佐野洋さん(©文藝春秋)

 1928(昭和3)年生まれ。2013年没。ミステリー界の巨人であり、『一本の鉛』『赤い熱い海』『轢き逃げ』といった傑作長編に加え、「推理日記」シリーズがまた面白く、1000作を超える短編ミステリーを残したことでも知られています。……と、私が佐野先生のプロフィールを紹介してもしかたないので、市川尚吾さんの名解説に委ねます。

 編集者としては、私、オール讀物で佐野さんの最晩年の担当をつとめ、名物コラム「おしまいのページで」や「昭和小説事件簿」といった読み物連載、オール最後の短編となった「自分史ゼミナール」(2011年1月号)などをいただきました。
 そんな佐野さんが2013年に亡くなったあと、若子夫人から「書庫を片付けるので、本をもらって」と言われ、ありがたく頂戴したミステリー関連資料があります。じつは編集部の本棚に置いてあるんですね。
 その一部をこっそりご紹介します!

 第一法規の『政治裁判史録』は、読み始めると時間を忘れてしまうくらい面白い、有名事件(「ひとのみち教団不敬事件」「ゾルゲ事件」等々)の裁判の流れをまとめたもの。都筑道夫の名著『黄色い部屋はいかに改装されたか?』は、私、佐野さん宅からいただいたこの本で初めて読みました。

 泡坂妻夫さんの『トリック交響曲』は、マジック、トリック、推理小説の関係について丁寧に整理した、泡坂さんならではの1冊ですね。

 高木彬光『邪馬台国の秘密』刊行を契機に勃発した(佐野さんが巻き起こした)「論争」をまとめたファイルもあります。ここに収められた松本清張「『邪馬台国の秘密』についての感想」は、昭和49年当時、清張さんが邪馬台国にどんな関心をもっていたのかをうかがうことができる、興味深いものです。
「佐野洋文庫」はまだたくさんあるのですが、編集部の本棚を出し入れしていると大変なので、このへんで……。
 編集部に遊びにこられた作家さんには(興味をもたれたものがあれば)さしあげたりもしていて、徐々に減ってきていますが、いまでもこれらの本を手に取ると、佐野さんとの思い出がよみがえります。

(オールの小部屋から⑧ 終わり)

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