石井一成

文藝春秋という出版社で編集者をしています。 2023年7月より、小説誌「オール讀物」の…

石井一成

文藝春秋という出版社で編集者をしています。 2023年7月より、小説誌「オール讀物」の編集長。 香川県坂出市出身。

最近の記事

  • 固定された記事

オールの小部屋から① 自己紹介

 文藝春秋の小説雑誌「オール讀物」をご存じでしょうか。  7月より、この雑誌の編集長をしている石井一成と申します。よろしくお願いいたします。  いま、お盆休みで静まりかえった会社の隅で、「第169回直木賞」を発表するオール9・10月合併号を校了しています。  オール讀物という小説雑誌が、どんな編集部員によって、どのように作られているのか。その舞台裏の一端をお伝えできたら……と思いたって、小文をしたためていくことにしました。  まずは、私の自己紹介から。  2000年、新卒で文

    • オールの小部屋から⑳ 編集部員シマダの偏愛おすすめ(後編)+AI文字起こしについて

       みなさん、ご無沙汰しております!  気がつけば4月も半ば。まもなくオール讀物5月号が発売されてしまいますが、まだまだ3・4月号を粘りづよく宣伝すべく、おなじみ最年少編集部員シマダさんのおすすめ紹介企画の〈後編〉をお届けします。  本の話ポッドキャストの人気番組【オールの小部屋】より、【3・4月合併号編集部員のおすすめ企画はこれだ!(第1回)】の音声をAI文字起こしした記事です。 〈前編〉にお目通しいただいた上で、こちらをお読みください!  石井 では、オール讀物3・4月号

      • オールの小部屋から⑲ 編集部員シマダの偏愛おすすめ(前編)

         みなさん、こんにちは。  今回は、おなじみ最年少編集部員シマダさんに登場してもらい、先日、ポッドキャストで放送した「【オールの小部屋】3・4月合併号編集部員のおすすめ企画はこれだ!」の文字起こしをお届けしようと思います。  ポッドキャストをふだん聞かない人にもおもしろ企画をお届けしたい(3・4月号の宣伝もしたい)というのがひとつ。  もうひとつは、最近、AI文字起こしの性能がどんどん上がっていて、音をきれいに録りさえすれば、かなり正確な文字起こしが自動的にできるようになって

        • オールの小部屋から⑱ 編集者はタイトルを考える

           気がつけば1か月、更新が滞っていました。ついこの前、年があけたばかりなのに、もう2月も終わろうとしていて、驚くばかりです。  このひと月、何をしていたかをふりかえりますと……  2月5日、文春文庫『時ひらく』刊行を記念し、日本橋三越で開催された阿川佐和子さんのトークイベントの進行役を務めました。夜、東京に大雪が降った日です(大変な日に来場してくださったみなさま、ありがとうございました)。 『時ひらく』は三越創業350年を記念して編まれたアンソロジーで、三越を舞台にした短編

        • 固定された記事

        オールの小部屋から① 自己紹介

          オールの小部屋から⑰ 直木賞選考会と伊集院静さんのこと

           本年もどうぞよろしくお願いいたします!  1か月更新が滞ってしまいました。年が明けるとすぐオール讀物2月号の校了、そして第170回直木賞の選考会……と、昨年末から息をつく暇がなかったのです。  この「オールの小部屋」第1回にも記しましたように、直木賞は年に2回のビッグイベントで、編集部全体、会社全体が独特の雰囲気に包まれます。張り詰めた空気の中でおこなわれる選考会の司会はとても緊張するもので、終わるまではいろんなことが手に付かないんですね。  とくに今回は3時間をこえる長時

          オールの小部屋から⑰ 直木賞選考会と伊集院静さんのこと

          オールの小部屋から⑯ 高校生直木賞について

           ようやくオール讀物新年号を校了しました!  雑誌って、現実の発売日よりも少し先の日付を表示するのが慣習になっていまして、12月21日に発売するオール讀物は、まだまだ年内なのですけれども【2024年新年号】ということになるんですね。  実は、日本雑誌協会の定める「雑誌作成上の留意事項」というルールがあり、月刊誌については「16日発売日以降は2か月先までの月」までに限って月号を表示する、と決まってるんです(つまり12月21日発売の号は12月号でも1月号でも2月号でもOK。でも

          オールの小部屋から⑯ 高校生直木賞について

          オールの小部屋から⑮ 編集部員紹介 トリハラ青年の巻

          「オール讀物」編集部ではいま、どんな人が、どんな志を抱いて働いているのか――。  大好評をいただいているオール編集部員の身内インタビュー企画。先日のシマダさんに続く第2弾は、次に若い、トリハラ青年をご紹介します。1985年、鹿児島県生まれ。最近どんどん増えている転職組のホープです。  今回は聞き手をシマダさんにやってもらいました。どんな話を引き出せているかも注目ですね。 トリハラ オール讀物編集部に2023年7月に配属になりましたトリハラです。聞き手が後輩のシマダさんという

          オールの小部屋から⑮ 編集部員紹介 トリハラ青年の巻

          オールの小部屋から⑭ 編集者って何?

           こんばんは。気がつけばもう冬ですね。  ちょうどオール讀物12月号が発売されたばかりです。  東野圭吾さんのガリレオ新作「重命(かさな)る」や、髙見澤俊彦さんの「神様の話をしよう」、夢枕獏×澤田瞳子×蝉谷めぐ実×武川佑さんら4氏による大座談会「『陰陽師』が好きすぎる!」が早くも話題を呼び、大きな反響をいただいています。買ってくださったみなさん、どうもありがとうございます!(まだの方は上記リンクからチェックしてください!)  勢いにのって12月号の宣伝をどんどんしたいところで

          オールの小部屋から⑭ 編集者って何?

          オールの小部屋から⑬ ”台割”って何?

           急に涼しくなりましたが、みなさんお変わりありませんか。  目下、オール編集部は12月号の校了中です。 「本屋が選ぶ時代小説大賞」など豪華特集目白押しの12月号についてはあらためてお知らせすることにして、今回は、好評発売中の11月号の「台割」について書いてみたいと思います。  小部屋⑨「目次づくりと文春のジャングル」で、目次の不思議について書いたのですが、お読みくださいましたでしょうか。オール讀物の目次は、小説や記事の実際の並び順とは関係なく、いちばん読んでほしいメイン特集

          オールの小部屋から⑬ ”台割”って何?

          オールの小部屋から⑫ 編集部員紹介 シマダさんの巻【後編】

           文春にとびこんだ大学生は、何を見、何を思い、どのように編集の仕事を覚えていくのか――。前回につづいて、編集部員シマダさんのインタビュー【後編】をお届けします。 ――入社後、1年半「オール讀物」編集部で働いてきて、「これは頑張ったぞ」という仕事って何ですか。 シマダ 「高校生直木賞」をオール編集部で運営してるんですけど、その関連で高校生を呼んでイベントとかをちょくちょくやってまして。今年2月に阿部智里さんのオンライン読書会を開催したんです。課題図書として2作、用意して、そ

          オールの小部屋から⑫ 編集部員紹介 シマダさんの巻【後編】

          オールの小部屋から⑪ 編集部員紹介 シマダさんの巻【前編】

           いつも自分の話ばかりだと広がりがないので、急遽、突然、思い立って、編集部員インタビューをお届けします!  精鋭5人。いま「オール讀物」編集部ではどんな人が、どんな志を抱いて働いているのか、その実態に迫りたいと思っています。  記念すべき第1回ということで、1999年生まれの最年少部員、シマダさんをお迎えしました。聞き手・構成は石井が担当します。 シマダ どうぞよろしくお願いいたします。入社2年目になります。去年の4月、新卒で文藝春秋に入りました。入社からずっとオール讀物編

          オールの小部屋から⑪ 編集部員紹介 シマダさんの巻【前編】

          オールの小部屋から⑩ 鮎川哲也賞の贈呈式

           先週の金曜日、4年ぶりに鮎川哲也賞の贈呈式におじゃましてきました。 『帆船軍艦の殺人』で受賞された岡本好貴さん、おめでとうございます!  鮎川賞のパーティは、作家と書店のみなさんがとにかく多くて(編集者は少なめ)、ふだんめったに会えない方とたくさん話せる、ミステリ者にとっては夢のような会として知られています。  今回も、選考委員の祝辞が東川篤哉さん、正賞の贈呈が麻耶雄嵩さん(同時開催の「創元ミステリ短編賞」の祝辞は辻堂ゆめさん、正賞贈呈は米澤穂信さん)。そして乾杯の音頭が北

          オールの小部屋から⑩ 鮎川哲也賞の贈呈式

          オールの小部屋から⑨ 目次づくりと文春のジャングル

           すっかり涼しくなってきましたね。  ついにオール讀物11月号、校了しました! 読みどころ満載、まるで1冊の新書のような総力特集「絶対、小説家になる!」については、10月20日の発売日にむけておいおいご紹介していくとして、今日は、目次の話です。  オール讀物の目次は「両観音開き」になっています。  表紙を開くと、まず、こんなふうに折りたたまれた目次が出てきます。  これを左右に広げると、  さらに左側をもう1回、広げると、  目次の全貌があらわれる……こういう仕組みにな

          オールの小部屋から⑨ 目次づくりと文春のジャングル

          オールの小部屋から⑧ 佐野洋さんのこと

           ご無沙汰しております。目下、オール讀物11月号(10月20日発売予定)の入稿ラッシュで、ついつい更新が滞っております。  本日10月7日は「ミステリー記念日」だそうですね。174年前のこの日、エドガー・アラン・ポーが亡くなったことに由来するのだとか。  まさにいま放送中の日テレの推理ドラマ「THE MYSTERY DAY」も気になるところですが、原稿を待つ身としては、仕事をほったらかしてテレビ画面に見入るわけにもいかず……。  そこで、ミステリーにちなんだ話題として、編集部

          オールの小部屋から⑧ 佐野洋さんのこと

          オールの小部屋から⑦ 村山由佳さん、千早茜さん、新人賞

           急に涼しくなりましたが、みなさん、お変わりありませんか。  私、ふだんは健康そのものなのですが、久しぶりにぐったり疲れまして、今朝(日曜日)目がさめたらお昼の11時半。あわてて息子をサッカーに送っていき、いま試合を観戦しながらこのnoteを書いています。  疲れの原因は、昨夜(9月23日)開催した〝千早茜さん×村山由佳さん「恋愛小説」書き方講座〟でしょう。私は進行係をつとめました。  講師のおふたりには、小説を書くにあたっての秘話を惜しげもなく披露していただき、濃密かつ充実

          オールの小部屋から⑦ 村山由佳さん、千早茜さん、新人賞

          オールの小部屋から⑥ 投資戦略から生まれた『極楽征夷大将軍』

           発売中のオール讀物9・10月合併号。店頭に2か月並ぶ号なので、しつこくPRをつづけますが(笑)、お許しください。  第169回直木賞の特集記事の中で、いちばん「おおっ」と思ったのが、『極楽征夷大将軍』で受賞した垣根涼介さんと池井戸潤さんとの記念対談「やっぱり大事なお金の話」。旧くからの友人どうしであるおふたりのトークは、互いへの敬意と友情とに満ちた幸福感あふれるもので、たとえば、対談会場で会って最初のやりとり、  こうした服装についてのかけあいなど、思わず笑ってしまいます

          オールの小部屋から⑥ 投資戦略から生まれた『極楽征夷大将軍』