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「青い月の輝く夜 」 (リーグ第29節・サンフレッチェ広島戦:4-0)

等々力陸上競技場でのサンフレッチェ広島戦は4-0の勝利。夜空に輝く満月が綺麗でしたね。

 試合後の監督会見。広島のスキッベ監督の第一声は、ホームチームである川崎フロンターレが勝利に値したことに対する祝福でした。

「川崎フロンターレにおめでとうと称賛を送りたいと思います。勝ちに値するゲームだったと思います。今日は最初の25分、30分くらいまでしか自分たちの攻撃的なサッカーを見せることができなかったと感じています」

 ここまで潔くコメントする監督も珍しいですが、「最初の25分、30分くらいまでしか自分たちの攻撃的なサッカーが出来なかった」という言葉通り、立ち上がりから25分ぐらいまでは一進一退の攻防が続きました。

ただ30分以降は川崎フロンターレが主導権を握り続けたゲームだったと思いますし、その意味で、勝利も妥当だったと言えます。

2得点の家長昭博、1得点PK奪取の脇坂泰斗、ポストワークで攻撃陣を活性化させてPKによる1得点を記録した知念慶・・・・たくさんの主役が生まれたゲームでした。ただ特筆すべきプレーを見せたのが、左サイドバックで先発した佐々木旭です。

スタメンは第21節のガンバ大阪戦以来。最近の左サイドバックには登里享平や車屋紳太郎、あるいは橘田健人が入ることが多くなっており、夏場は出場機会自体が減っていました。

そんな中で迎えた、大一番での先発出場。

結論から言うと、素晴らしいパフォーマンスでした。先制点のアシストや4点目につながる仕掛けなど得点に結びついたプレーもあるのですが、何が良かったのかと言うと、攻守両面のプレーに迷いが感じられず、選択が常に前向きだったことです。

 何が彼をそうさせたのでしょうか。
試合後のミックスゾーンに現れた佐々木旭に尋ねてみると、彼は覚悟を持ってこの一戦に臨んでいたことを口にしていました。

もうやるしかなかったです。ここでオニさんが使ってくれたので、結果を残さないといけないという気持ちで入りました。得点もたくさん入ったし、無失点で終わったのは良かったと思います」

その「やるしかなかった」という言葉に覚悟を感じましたし、それを存分に表現した90分だったと思います。

ちなみに後半から右ウイングバックに入った広島の満田誠は、流通経済大学出身の新人。つまり、佐々木旭とは同期でした。アウェイでのゲームではお互いに先発でしたが、満田誠は左サイドで出ていたので、この時は左サイドバックの佐々木とのマッチアップはありませんでした(試合後はユニフォーム交換していた)。

ただ今回は直接のマッチアップ。後半が始まって、いったんプレーが途切れた48分頃、お互いに「よろしくな」という感じでグータッチをしたのを僕は記者席から見逃してませんよ・笑。

なので「後半、満田誠選手が入って来たときに燃えるものは?」と尋ねたら、佐々木は「ふふふ」と笑みを浮かべて、こう話し始めてくれました。

「そうですね。普段は右サイドをやっていないと思うんですけど、わざわざ自分のところに当ててくれたので、他の相手よりも負けられない気持ちは強くなりました。また自分も一段階、ギアを上げることができたので、ありがたかったです」

 満田誠は今季、広島でレギュラーとして活躍し、今年7月のE-1サッカー選手権では日本代表にも選ばれています。チームでポジションを失っていた佐々木旭からすると、彼に差をつけられたなという思いもあったかもしれませんね。

 そして、この日は無失点で終えた佐々木旭に軍配が上がりましたが、切磋琢磨しあう2人のマッチアップは、今後のこのカードでの楽しみになりそうな予感もあります。

 そして佐々木旭には、優勝するための「ラッキーボーイ」になってくれることを期待したくなりましたね。

 さて。
長々と語ってしまいましたが、ここからが本題です。相手の広島はここまでリーグ戦5連勝。公式戦で言えば、8連勝中でした。ただミッドウィークに天皇杯を戦っていたため、十分な準備が出来なかったこと、そして主力を入れ替えながら臨む難しさがあったはずです。

 一方のフロンターレは、1週間のインターバルがありました。
トレーニングを含めてどういう準備をしてきたかはプレビューに書きましたが、広島対策を十分に施して臨んだことがわかる試合展開だったと言えます。具体的にどこがうまくいったのか。そんなところから読み解いていこうと思います。

■「広島さんのゲームを見ていて、ボランチから前は連動しているが、後ろの3枚(3バック)をうちの3枚(3トップ)でピン留めする」(脇坂泰斗)。明確だった広島攻略法。プレッシングにおける陣形のギャップを見逃さないための、「つなぎながら、蹴る」とは?

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