『イスタンブールで青に溺れる』発達障害者の世界周航記

横道誠
文藝春秋 2022年

この本の存在を知ったのは、確か新聞のどこかに書いてあったからだ。興味を持ってすぐにメモして、図書館に行った時に調べたが、すでに借りている人がいて「また今度」と思っているうちにそのままになっていた。
そうしたら、ある時図書館に行ったらたまたま配架してあって、「おお!」と思って早速借りた。

そもそもの知識としては【著者が発達障害の方で、海外を旅行した時の記録】という認識だけだったので、読んでみて予想外で面白かった。

著者は京都大学卒。知的レベルが高い方だ。英語・ドイツ語・スペイン語が堪能。すごい。私も語学に興味があるので、語学方面からの視点があるのも楽しく読めた。身に付けようとする外国語で言えない表現は日本語でも言わないようにしてしまう、ということだったので、この本に書いてあるレベルはその3言語で言えるということか、、、すごい。

まだ外国語を使いこなせなかった学生時代から、その後大学で勤めるようになってからなど、様々な時代の様々な国について書いてあるのも興味深かった。そして、発達障害による特性により、どのように感じて、どのように行動してしまうのかなども。

ところどころに引用してある本も世界各国のものだし、どうやら自分で訳したものだったりもするらしい。それが旅行した先の何かに触発されつながったものとして出てくるのは面白い。ただ、出てくるものがここまで色とりどりかどうかはともかく、人それぞれ連想して出てくるものはあるだろうな。

前から思っていたが、私も結構凸凹してるんじゃないかとこの本を読んで改めて感じた。頭の中の思考は止まらず夢想家だし、過集中もあるし、空気を読むのが苦手だし、その他いろいろ。私はものすごく生きづらさを感じているけれども、たぶんそんなこと言ったらかなり驚かれるくらいはたから見たら世の中に順応しているように見えるだろう。人とは本当にわからないものだ、だから決めつけてはいけないと普段から思っている。

この本には、著者の性的嗜好についても赤裸々に書いてあって仰天した。今はLGBTQ+のことも何かと話題になるけれども、確かに神経発達に関わることであれば関係してくるのかと思う。自分が何者なのかパキパキと分けられず、分けてあるこの世界で戸惑うのが発達障害なのかもとも思う。

著者の思考のままに書いたような形で、変化に富んで面白い本だった。

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