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No,254.匿名攻撃者の心理

はじめに

X(旧Twitter)などのSNSで特定の個人に対して匿名で攻撃し、死に追いやるケースもある。

個人が特定(名前など認識)出来る状況では抑制が働き(いわゆる我慢する)攻撃性は低下されるが、匿名などの個人が特定されない状況になると抑制力が低下し、攻撃性が高まるといわれる。

Stingerら(1952)は、このような匿名による抑制の低下を【脱個人化】という内的状態として考えた。

脱個人化とは、自分がやっている行為の良し悪しが低下し、他者からその行為によってどう見られるのかに対する危惧や関心が低下する。
それに伴って罪悪感や恥に基づくコントロールが弱まり、衝動的行動を促進する。

つまり、善悪の判断力が鈍り、その行動によって他者からマイナスなイメージ(評価)を持たれることや、それによって罪悪感や恥をかくといったことがわからなくなる。

そのような道徳心の欠如である脱個人化を引き起こす条件として、集団の存在(集団でおこなう)、責任の分散(誰かがやったと責任転換)、匿名性(自分とはわからない)などがある。

内部告発

匿名は内部告発でよく使われる(組織の不正や問題を脱個人化によって公表することである)。

但し、内部告発には信頼性を保つために3つの条件が必要である。それらは以下の通りである。

1.告発者は組織の内部の者であること。
組織の従業員や関係者(組織内)でなければ、内部告発とは言えない。

2.告発者は不正な目的で告発しないこと。
通報によってお金や利益を得ようとするなどの不正な動機がないこと。

3.告発者は個人の命や精神、財産を傷つける意図がないこと。
このような場合は名誉毀損や嫌がらせとして法的に責任を問われる可能性がある。
(出典:株式会社ニコイチ)

嫌がらせを目的した匿名攻撃者の行動原理

流言や嫌がらせによる匿名攻撃者の行動には病理的状態な心理的要因が影響している可能性がある。

  1. 匿名性による安心感:

    • 匿名であることにより、攻撃者は自分の正体を隠すことができ、直接的な責任を感じにくくなります。これが攻撃的な行動に対する一種の安心感となることがあります。

  2. 社会的孤立感:

    • 攻撃者が社会的に孤立している場合、匿名で他者に対して攻撃することで、一種のコミュニケーションをとる手段となることがあります。匿名(脱個人化)での攻撃が唯一の発言手段となることが考えられます。

  3. 自己評価の低さ:

    • 攻撃者が自分自身に対して低い自己評価を抱いている場合、他者を攻撃することで自分を優越感に浸すことを試みることがあります。攻撃行動が一時的な自尊心の向上をもたらすと考えられます。

  4. ストレスや不満のはけ口:

    • 攻撃者が日常生活でストレスや不満を感じている場合、これを他者に向けて発散する手段として攻撃的な行動に走ることがあります。匿名性がこのような行動を容易にする要因となります。

  5. 群集心理:

    • 集団では、攻撃者が他者と同調しやすい状況が生まれやすいです。匿名性が、攻撃行動に対する社会的な非難を和らげ、集団内での承認を得る手段となることがあります。

先行研究

これまでの研究で扱われてきた匿名性による攻撃には三つの心理的背景がある。

1.攻撃した相手からの挑発的言動に基づく怒り、妬みなど(例えば,Geen, 1968)

2.攻撃した相手からの報復の可能性がある時、報復に対する恐怖の大きさは自分の攻撃行動の強さ(Baron, 1977)。

3.攻撃状況に入る前に見た状況により感情が不安定な状態になる(Donnerstein et al., 1975, Zillman,1971)また、攻撃行動の途中で与えられるノイズ(Geen &O'Neal, 1969)による不快感情などがこのタイプに含まれる。

さいごに

匿名攻撃者は正確な情報を持っていないまま攻撃を行うことがあり、デマや誤解を拡散する可能性があります。これが真実でない情報を広め、不正確な情報が蔓延する一因となる。

またそのような行為は他者をコントロールしたいといった誤った欲求の可能性が考えられる(※詐欺など)

結果的にコミュニティ全体の信頼性が低下し、健全な議論や情報共有が妨げられ組織全体が縮小するだろう。

総括

そもそも、そのことをわかっている人は匿名攻撃者にはならないだろうけどね(^^)/

引用文献

山口勧(1980)「恐怖喚起と匿名性が攻撃行動に与える影響について」『実験社会心理学研究』第20巻、第 1号、pp 1-8

Geen, R.G. 1968 Effects of frustration, attack,and prior training in aggressiveness upon aggressive behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 9, 316-321

Donnerstein, E., Donnerstein, M., & Evans, R.1975 Erotic stimuli and aggression: Facili-tati on or inhibition.Journal of Personality and Social Psycholagy , 32, 23

Geen, R.G., & O'Neal, E.C. 1969 Activation of cue-elicited aggression bygeneral arousal.Journal of Personality and Social Psychology,11, 289-292.


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