一山青(イッサンセイ)

工藝アート愛好家

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最近の記事

旅へ出た一山青さん

一山青さんが旅に出てしまいました。 旅行好きの一山青さんだけれど、急な旅立ちに驚いています。 一山青さんは、とても静かに暮らしています。 部屋ではテレビをつけず、音楽も聴かず、温かいお茶を淹れて読書をしています。 高級な羽毛布団の上に乗って、羽毛がつぶれてしまうほど 集中して読書をして、私に怒られています。 たくさんの本と、大切に育てている植物に囲まれて 静かに暮らしています。 週末の夜、夜更かしをして深夜まで、ごろごろしているとき 一山青さんは、週末のご褒美と言って

    • 本と絵画の800年 吉野石膏所蔵の貴重書と絵画コレクション

      2023年2月26日~2023年4月16日 練馬区立美術館にて。 建材メーカーである吉野石膏が収集してきた絵画コレクションと、その美術振興財団のアートライブラリーが所有する貴重書のコレクションから、絵画と本の結びつきに重きを置いた作品たちが展示されました。 一番古くは12世紀の福音書の零葉の展示が。挿絵、というのではなく、福音書の内容をより伝えるために描かれた装飾写本に魅せられました。 絵本作家が自身の子供へ送るために作った絵本は、ただ「美しい」というだけでなく、慈しみ

      • 戸栗美術館名品展II ―中国陶磁―

        ■きれいなコレクション 戸栗美術館の開館35周年を記念した特別展です。創設者・戸栗亨氏が残した、「中国の陶磁は世界の宝物。なかでも官窯のきれいなものがいい」という言葉通り、実に端正な優品揃い。メジャーな美術館と違って来訪者もまばらな展示室内で、名品たちとの静かな交歓を楽しむことができました。 ■定番の官窯品 なにしろ展示品2つ目と3つ目で、心をぐっと掴まれてしまいました。磁州窯系、金~元代(12~13世紀)の「油滴天目 碗」と「黒釉 白堆文 壺」です。前者は油滴状の斑紋

        • つながる琳派スピリット 神坂雪佳

          2022年10月29日~12月18日、パナソニック汐留美術館で開催。琳派の影響を受け、明治から昭和初期に芸術と意匠の両分野で活躍した、神坂雪佳の展覧会でした。 まずは、琳派のおさらいコーナーから。私の大好きな鈴木其一の「藤花図」を始め、細見美術館の所蔵品が数点出品されていたのは、うれしかったです。 神坂雪佳の図案集では、晩年の出版物『うた絵』が見事でした。芦手絵と呼ばれる、和歌を書き散らした絵画25枚の作品集です。展覧会ではガラスケースの中で開かれている1ページしか見られ

        旅へ出た一山青さん

          幻視の小宇宙 現代漆藝家4人の燐光

          セイコーハウス銀座ホール(旧和光ホール)にて、2022年12月1日~11日開催。漆芸家の青木千絵さん、浅井康宏さん、樋渡賢さん、吉野貴将さんの4人展です。 お目当ては浅井康宏さんの作品でした。いつもながら、一分の隙もないかっちりした精巧な美しさ。外からの光を蒔絵や螺鈿が反射して送り返すが、作品そのものは結晶のようにただ美しく、まったく揺るがないといった印象です。 ぜひ写真に収めたかったのですが、残念ながら撮影禁止でした。 他の3人の作家さんたちもそれぞれに個性的で、大変見

          幻視の小宇宙 現代漆藝家4人の燐光

          KOGEI Next展 2022

          2022年11月18-19日、六本木ヒルズ Hills Cafe / Space にて開催。昨年も見に行って、ギャラリートークがとてもおもしろかった展覧会です。今年は残念ながら、ギャラリートークの日時に行くことができなかったので、その分楽しみが減ってしまいました。 記事タイトル画像は、鈴木翔太 白花蒲公英−都市の養分− です。たんぽぽの花は、パソコン1台に使われるのと同じ量の金と銀で作られています。

          鈴木祥太展-水のカタチ 風のカタチ-/ACTIVATE KOGEI+ART GINZA2022

          現代工芸作品を訪ねて、日本橋高島屋(鈴木祥太展、2022年10月26日~12月19日)と松屋銀座(ACTIVATE KOGEI+ART, 2022年11月2日~7日)を回りました。 ■鈴木祥太展 会場はアートアベニューというところで、ギャラリーではないんだろうと予想はしていましたが、婦人服売り場の通路側に展示ケースがぽつぽつと置いてあるだけで、じっくり見ている人は誰もいませんでした。それでも一部の作品が売約済だったのは、婦人服を買いに来て見かけたついでに購入したということ

          鈴木祥太展-水のカタチ 風のカタチ-/ACTIVATE KOGEI+ART GINZA2022

          大蒔絵展―漆と金の千年物語―

          ■蒔絵の千年 三井記念美術館にて、2022年10月1日~11月13日開催。蒔絵は好きなのですが、想像以上の表現の振り幅に驚かされた展覧会でした。 12世紀平安時代のものから平成の現代工芸作品まで、まさに千年に渡って受け継がれてきた蒔絵の歴史を見られました。何しろ基本的な技法は変わっていないのですから、すごいことです。 ■室町・桃山の蒔絵 私は、梨子地に高蒔絵ぐらいの繊細な意匠が好きなので、室町時代辺りの作品がいいと思いました。「波千鳥蒔絵硯箱」は、群れ飛ぶ波千鳥が、法

          大蒔絵展―漆と金の千年物語―

          ホキ美術館名品展 ~驚きの写実絵画~

          金沢21世紀美術館にて、2022年9月16日~10月16日開催。 21世紀美術館も、金沢ではぜひ行きたい場所でしたが、今回興味を引かれたのはホキ美術館展。金沢まで来てなぜ千葉の美術館?という気もしましたが、ホキ美術館の写実絵画コレクションは一度見てみたかったのです。 期待以上にインパクトのある展覧会でした。一口に写実絵画と言っても、筆致は作家によってさまざまですし、近づけば筆跡も見えます。でも、どの絵も「本物そっくり」。 写実絵画の特徴として、例えば写真は一点にピントが

          ホキ美術館名品展 ~驚きの写実絵画~

          ジャンルレス工芸/加賀宝生のすべて 能面と能装束

          金沢の国立工芸館にて、2022年9月16日~12月4日。 いろいろなジャンルの現代工芸を、つまみ食いのようにちょこちょこと見ることができました。工芸自体がジャンルレスなわけではなく、工芸展としてのありかたがジャンルレスなのですね。 東京の近代美術館からの分離・移転後、国立工芸館にはずっと行きたいと思っていました。建物は旧陸軍施設を移築・復元。シンプルで、華やかな雰囲気はありません。 鍋島焼の伝統を受け継ぐ今泉今右衛門、先代と当代の共演。 見附正康さんは、私が以前から好

          ジャンルレス工芸/加賀宝生のすべて 能面と能装束

          響きあう名宝 曜変・琳派のかがやき

          2022年10月1日に、静嘉堂文庫美術館が丸の内に移転して新しくオープンしました。静嘉堂の創設130周年と新美術館開館を記念する第一弾が、この展覧会です。 確かに、静嘉堂の目玉、国宝「曜変天目」茶碗を始めとする名品揃いの展覧会ではあったのですが、正直どうも大味に感じられました。最近私が展覧会に期待するのは、珍品名宝よりも「なぜこの作品とあの作品が一緒に展示されるのか」というキュレーションの視点の取りかた、展覧会を貫くストーリー作りの巧みさのようです。 例えば、関西の近代数

          響きあう名宝 曜変・琳派のかがやき

          響き合う東西の美 ガラス・アートの世界

          箱根に一泊旅行に行くことになり、ぜひ箱根ガラスの森美術館に立ち寄りたいと思いました。「響き合う東西の美 ガラス・アートの世界」展(2022年9月28日~2023年4月16日)で、山本茜さんの截金ガラス作品を見るためです。 私の知る限り、山本さんは東京では最近個展を開いたりされていないので、作品を見るのは2020年の「和巧絶佳」展以来でした。 そもそも截金とは、糸のように細く切った金箔などを木材の表面に貼り付ける伝統的な装飾技法で、仏像の衣の文様を表すのに用いられたりしていた

          響き合う東西の美 ガラス・アートの世界

          古美術逍遥 東洋へのまなざし

          ■リニューアル後、初訪問 泉屋博古館東京にて、2022年9月10日~10月23日開催。泉屋博古館東京のリニューアルオープン後、初めて見に行った美術展になりました。リニューアル後の館内の構造は、ちょっと微妙です。中央のホールを4つの展示室が取り囲む配置なので、必ずホールに一度戻ってから別の展示室に入ることになります。泉屋博古館東京はいつも落ち着いた雰囲気ではありますが、もしすごく混雑したら、この動線だとえらいことになりそうですね? ■注目の作品 徐九方「水月観音像」は、本

          古美術逍遥 東洋へのまなざし

          第69回日本伝統工芸展

          昨年に続き、今年も行ってきました。東京では、日本橋三越本店で2022年9月14日~26日に開催されました。作家が禁止していない限り、撮影ができるので、いくつか写真に収めてきました。 漆芸 さまざまな技法があって、どれも楽しめる漆芸ですが、3作品ご紹介します。浅井康宏さんは、私が追っかけている作家さんの一人です。以前、個展の様子を記事にしました。 陶芸 陶芸からは1作品。 金工 金工からは2作品。佐故龍平さんも、私が好きな作家さんの一人。ちょうど昨年の今頃、個展を開

          第69回日本伝統工芸展

          日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱

          2022年8月6日~9月25日、東京藝術大学大学美術館で開催。なにしろ、若冲が出ます。行ったのは平日でしたが、まあまあ混んでいました。週末はけっこうな混雑になるようです。 書と絵巻物 さすが皇室ゆかりの美術品、クオリティがおしなべて高いです。個人的に工芸より得意でない書や絵巻物も、作品ごとの筆の肥痩や書き込みの細かさの違いなどを楽しめました。やまと絵には、意外と漫画的に見える表現もあって、日本の絵画表現のDNAなのかなと思ったりしました。 動植綵絵 伊藤若冲の動植綵絵

          日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱

          復帰50年記念 沖縄の美

          2022年6月23日〜8月21日、日本民藝館にて開催。お盆休みの民藝館は、なかなかの人出でした。 ◾️沖縄の美とは 第二次大戦前、柳宗悦による沖縄の工芸の「発見」が、日本の文化の体系に沖縄を組み込む一助となったことは否定し得ないでしょう。沖縄は、独自の文化圏というより「日本の一部として」、その美が認知されることになったわけです。「民藝の100年」展では、そうした認識が仄めかされていました。 ◾️琉球紅型 さて、それにしても紅型は美しい。 今回の展示品の中では、「水色

          復帰50年記念 沖縄の美