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「対あなた」の力

22歳、男。

僕は、aikoが好きです。

「好きな歌手は誰ですか?」と聞かれたら、米津玄師でもなくあいみょんでもなく、aikoの名前を真っ先に挙げる。

もちろん米津玄師もあいみょんも好きだよ。カラオケに行ったらLOSERをくねくねしながら歌いたいし、健康的な朝を迎えた日には君の愛してるが聞きたいやとさえ思う。君といえる人がいないけど。

でも、一番はaikoです。

じゃあなぜaikoが好きなのか。

「何でaiko好きなの?」「aikoのどういう所が魅力なの?」

自分なりに言葉を紡いで言ってみるが、上手く答えられない。

「なんだ、そんなに好きじゃないじゃん」「いまいちaikoの良さわからない」と思われてしまう。

aikoのことは好きなのに、aikoの魅力を伝えられない自分が嫌になる。

よく恋人のどこが好きなのと聞かれて「全部」と答える人がいるが、一番求めていない答えだ。そんなこと知ってる。フィルターかかっているんだから当たり前。その「全部」のなかでもお前が一番気に入っている点を教えてくれという話だ。お前の熱を届けてくれよと。

しかし論をひっくり返すようで悪いが、そんな僕もaikoの全てが好きだ。

歌声、歌詞、メロディ、ライブ、コールアンドレスポンス、顔、ファッション、笑い方、走り回るところ、変態なところ、プレッシャーに弱いところ、ナキムシなところ。

挙げたらキリがないが、これでは言われた方はaiko愛が強い人という印象しか残らない。もっとaikoを伝えたい。aikoを好きな人がもっと増えてほしい。

こんなライブレポートも読みながら、ずっと悩んだ。

何で僕はaikoが好きなのか。

最近、ようやくその答えが出た。


「対あなた」の力だ。

1対1の力とでも言おうか。この「対あなた」の力というのは絶大だ。塾や家庭教師も1対1の方が授業の密度が濃くなり、集団授業より成績も伸びやすい。それに1対1のほうが興奮する(話が違う)

いや、アーティストの魅力が1対1だなんて正直月並みで申し訳ない。申し訳ないとは思っているけど、aikoはこの「対あなた」の力がずば抜けている。この世に絶対はないけどこれだけは絶対。他のアーティストのライブ行ったことないけどこれだけはマジで。というかaiko以外のライブに行く気がない。

僕は20歳までライブとかコンサートとかそういった類のものに行ったことがなかった。2年間の浪人生活を送っているとき、大学生になったらライブに行こうと考えていて、そのときは一番好きなPerfumeのライブに行きたかった。

よく「STAR TRAIN」や「Dream Fighter」を聴いて勇気をもらっていた。浪人を終えてすぐにPerfumeのファンクラブに加入してライブを熱望した。だがPerfumeはそのときツアーをやっていない時期だった。

同時期、ちょうどツアーが始まるアーティストがいた。それがaiko。

世間の人はaikoと聞いて何を連想するだろうか。

甘い匂いに誘われてしまうあたしを比喩した天才的な歌詞の「カブトムシ」だろうか、かけ声を合わせてテトラポットに登ってしまいたくなる「ボーイフレンド」だろうか、花火は下からでもなく横からでもなく、上から見下ろしたい「花火」だろうか、デビュー10年以上にして初のオリコンシングルチャート1位獲得曲「milk」だろうか、花より男子ファイナルの挿入歌「KissHug」だろうか、はたまた「キラキラ」か、「二人」か、「もっと」か、「恋をしたのは」か。これだけ挙げれば普通に音楽を聴いている人なら1曲くらい好きな曲あるのではなかろうか。

僕はaikoのベストアルバム「まとめI・II」がライブラリに入っていたし、普通にaiko好きだったから「とりあえずaikoがツアーやるみたいだからいっちょ行ってみっか!」ぐらいの気持ちだった。

今でも忘れない。日付は一昨年の4/28。行った結果はというと。


無理。その一夜にして完全に虜になった。気づけばファンクラブ加入の手続きをしていた。なんだよPerfumeって。aikoだろ。aiko以外ないだろ。

すぐ無理とかいうJKになってしまった。いや違うの。Perfumeがダメってわけじゃないの。批判するつもりは全くない。Perfumeも好きだよ。今でも聴くよ。かしゆか大好きだよ。変態丈をこの目で拝みたいよ。中田ヤスタカ最高だよ。最高の曲をたくさんありがとうだよ。

けど。けど一回aikoのライブに行ってこれ以上ない体験をしてしまった自分はPerfumeに限らず、もう他のどのアーティストのライブでも、行きたいって感情がなくなってしまったの。それは今もずっと。もうaiko以外会いに行けない体にさせられたの。

単純脳だから他のアーティストのライブ行ったら多分ハマると思う。例えば、Perfumeのプロジェクションマッピング。この目で見たらすごいんだろうなと思う。

でも本当に、心の底から、aiko以外に会いに行くの嫌なんだって。他のアーティストのライブチケット取ったとしても、当日電車に乗って会場向かうときに絶対その駅に降りれないって自分。ツアーグッズ見ながら何買おうかなあとか考えてる自分無理だって。

もちろん比べるものじゃないからこれ以上の議論はしないけど、これはaikoと僕のルール。ライブに行こうと決めた時期にaikoがライブを始める時期だったというのも運命を感じている。歌姫aikoが歌い続ける限り、僕はaikoについていく。

aikoはライブの終わり際、「aiko以外聴かないでください!」とか平気で言う。たまらないだろ。ミュージックアプリにaiko以外の曲が入っている自分を殴りたくなるだろ。

それでも僕はライブに参戦した数日後、余韻に浸りきった頃には他のアーティストに目移りしてしまう。

「浮気してんのやろ?」

「aiko以外も聴いてるんちゃう?」

「aiko以外のライブ行ったらあかんで」

心の中のaikoがすぐさまこう問いかけてくる。とことんaikoは心を占領する。aikoで頭がいっぱいになる。ビッグダディの土下座並みのスピードで「ごめん、aiko」と心の中で謝る。すぐさまaikoのプレイリストに戻る。本妻の元に戻る。歌声が脳にダイレクトに響く。やっぱりaikoだと思える。

aikoは徹底的に「aiko対自分」という世界にしてくれる。ライブ会場でも「aiko対みんな」ではなく、最前列にいる熱狂的な「aiko対20代コンタクト女子」、僕の前にいる少し背が高くてaikoを見づらくする「aiko対30代裸眼男子」、後ろの方で小さく手拍子をしながらゆっくり見届けるaikoと共に成長してきた「aiko対40代メガネ女子」、もはやaikoを我が子のように見守る「aiko対50代老眼男子」のようにそれぞれの世界が存在する。

aikoはひとりひとりの顔を見ながら、ときにはわかるように指をさし、こちらが私?俺?と反応すれば笑ってコクンと小さく頷いてくれる。曲調に合わせて小さくステップを踏んだり、ステージを端から端まで走り回り、後ろや2階席を持ち前の視力の良さで見渡す。aikoはライブ会場の時間の許す限り、歌声を響かせてくれる。

aikoの曲に「恋愛ジャンキー」という曲がある。

気持ち悪いわ 酔いしれて
眠れないのよ 嬉しくて
失倒しそうよ あなたがいて
いつもそう あたしは恋愛ジャンキー

この曲にちなんで、ファンは自分たちのことをaikoジャンキーなどと言ったりする。クラスタとかそんなようなものだ。ジャンキー(Junkie)とは、「病みつきになっている人、熱中者、熱狂者、中毒者」ぐらいの意味。つまりaikoジャンキーとはaiko中毒なのだ。みんなが「aikoと自分」という独自の世界をつくりあげる。その世界にとことん没頭させてくれるアーティスト、それがaikoだ。


少し熱くなってしまった。
ともかくコンテンツというものは、どれだけ「対あなた」を感じさせるかはひとつの指標になり得ると思う。

最近noteで「この人の書く文章、とても好きだなあ」と思う人がいる。ここで名前を挙げてしまうのは当てつけがましいので言わないが、実はこの『「対あなた」の力』という記事、その方の文章を読んでいてヒントをいただいた(その方にも読んでほしいなあこの文章)

その方がnoteを書くスタンスは、大勢に向けた文章ではなく「対あなた」ということを意識して書いているらしい。

「素敵」って思った。素敵と感じた瞬間、aikoが脳裏をよぎった。aikoも、僕を「対あなた」の世界に連れていってくれる。ライブ会場にはごまんと人がいるのにaikoはそんなことは気にさせず、自分に対して歌ってくれていると感じさせる。noteも誰しもが見れるサイトではあるが、文章を読んでいるときというのは書き手と読み手の1対1の世界だ。

「自分に向けて歌われているようだ」「自分に向けて書かれているようだ」

そんなことは、そのときの自分の精神状態に大いに左右される解釈の問題ではある。だけど、それでもそのように感じた自分の感情は否定できない。

明日その曲を聴いても、明日その文章を読んだとしても、同じように感じることは限らない。むしろそのときそう感じた瞬間を大切にするべきである。


僕も、「あなた」に向けて書けるといいな。


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