JFAの目指す部活動の未来について

 JFA学校部活動検討委員会の池田委員長のインタビュー記事がJFAのWebサイトで公開されていました。

 私の活動とも深い関わりがある分野で、日本サッカー協会がどういう考え方や活動をしているかは知らなかったので興味深く読ませていただきましたが、非常にひっかかる内容でした。

JFAが目指す将来の部活動

 委員会で考えている将来の部活動の方向性として、下の図が示されました。これは最終的な日本の学校スポーツ文化の形としてJFA理事会で承認を受けたそうです。

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 Aが教育的側面を重視した部活動、Bが競技力向上と自己実現へのチャレンジを行う部活動、Cが学校外で競技力を高められる部活動とのことです。Cは「部活動」と言いつつ、地域スポーツクラブやプロクラブ等の下部組織、トレセンや世代別代表チーム活動等のことと思われます。

競技力向上あってこその教育的効果

 この図を見たときにまず気になったのは、「競技力向上」と「教育の一環」が逆方向の矢印で書かれていることです。Aでは「教育的側面」、Bでは「自己実現」が強調されていることも気になります。

 私の考えでは、競技力向上や自己実現と教育はセットです。「サッカーが出来ればそれでいい」というスタンス自体は否定されるべきではありませんが、教育的効果や人間的成長は「どうすれば上手くなれるか」、「どうすればチームがまとまるか」、「どうすれば試合に勝てるか」を考えて工夫して取り組んだ時のほうが大きいのは明らかです。

 委員長は、「文部科学省が提示する時間を基準にすると、学校は部活動で生徒の競技力向上や自己実現を目指すことが難しくなります。」とおっしゃっていますが、これは違うと私は思います。きっと、言葉のアヤともいうべき食い違いなのだと思いますが、限られた活動時間で全国大会出場を目指すのは難しくても、競技力向上や自己実現が出来ないわけではありません。むしろ制約条件のある中で工夫して少しでも上を目指すことに成長の種があるとすら思えます。

 むしろ、「レベルが高くなくても、競技力向上や自己実現を図る過程を通して子どもたちに成長や教育的効果をもたらし、スポーツに限らない多分野で活躍する資質を育んでいる」と言えなければ、(ガイドラインの範囲内であろうが)教員に時間外勤務をさせてまで部活動指導をさせるという意義を、スポーツ界以外の人々は見出してくれないのではないでしょうか。(先日の記事『スポーツ現場から暴力を無くすには』とも通ずる話です。)

 Aの部活動は「経済格差の解消、教育の機会均等を意味します」と言われているため、要は「普及」を主眼として、全国のどこでも誰でもスポーツ環境にアクセスできることを目指してのものなのでしょう。それはこれまで部活動が果たしてきた大変重要な役割のひとつであり、出来れば今後も残したいものです。

 しかしながら、Aの部活動を、そもそも対外試合で勝つことや大会で好成績を収めることも目指さない、いわばレクリエーションに近いものとして位置付け、しかも「都道府県にいくつか」あるBの部活動以外はそのような形にしてしまうというのは、果たしてそれが社会全体とスポーツ界にとって理想的な形なのかというと、疑問です。

 JFAの方々の目には、日本代表やプロになるような選手たちや、少なくとも全国大会を目指せるレベルの選手たちしか見えていないんじゃないだろうかと心配になります。

目指すべき学校部活動の方向性とは

 インタビュー記事では、AとBとCをどんな割合・配分で子どもたちの受け皿として整備しようとしているか明確にはわかりませんでしたが、全国大会レベルの高校(数%)をB、その他大部分をAとして残し、Cは徐々に増やしていくといった感じでしょうか。

 私が高校部活動の将来像を構想するのであれば、こんな感じです。

①強豪私立校はそのまま残す。

②強豪公立校(伝統校)は、地元やOB組織の強力なバックアップが得られるのであれば存続させるが、教員の時間外勤務ではなく、外部指導員を中心とする

③大部分の高校部活動は地域スポーツクラブのU-18カテゴリに移行する。学校は体育施設を提供し、教員の「兼職兼業」による指導もサポートする。(教員は時間外勤務ではなく、地域スポーツクラブから別途報酬を受けてクラブスタッフとして指導にあたる)

④へき地等、地域スポーツクラブの自立が難しい地域では、レクリエーションとしての部活動を存続させる。

 端的に言えば、高校部活動は超強豪とへき地等におけるスポーツ環境の維持とに二極化させ、それ以外は高校部活動以外のスポーツクラブ等が担うという形になります。

 スポーツクラブは、プロクラブの下部組織たるトップアスリート候補レベルや、一般的なレベルでありながら競技志向のクラブ、普及重視のエンジョイスポーツに近いレベルと、それぞれの地域で多様に展開されるのが望ましいと思います。

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