見出し画像

顧客が使うソフトウェア、自社で使うソフトウェア、その大きな違い

ソフトウェアを「顧客が使う」「自社で使う」の2つに分類すると、個人的には求められる性質が違ってくるのでスッキリします。

顧客が使うソフトウェアは、今の言葉ですと「プロダクト」に集約されると思います。C向けのプロダクトでは、各種SNSやスマートニュース、メリカリ、クラシル、その他諸々。広く言えばスマホゲームもプロダクトかな。

B向けのプロダクトだと、マネーフォワードやfreeeのような会計・決算の簡素化のためのもの、僕も使っているBoard、各業界のお困りごとを解消するためのプロダクトや、マーケティングツールなどでしょうか。

B2B2C向けになると、人材派遣や就職・転職斡旋がわかりやすいですね。雇いたい法人と、雇われたい個人をつなぎます。法人と個人をつなぐプラットフォームなサービスです。

顧客が使うプロダクトの使命は単純で、需要の創出です。新しく事業を作るのと同じ文脈で語られるべきもので、コアになるのはどんな未来を作るのかと、誰が顧客なのか。それを間違えると、提供する価値がずれてしまうし、刺さるポイントをコロコロ変えるわけにいかないので、絞り込んで作られる。また、売上を上げる事業なので、定期的なメンテナンス・機能拡張などが求められる。

これに対して、僕が得意としている「自社で使う」ソフトウェアというのは、プロダクトに比べて大きく3つの点が違う。ここでは、自社で使うソフトウェア=業務システムという言葉に置き換えて語ります。

1.  目的は需要の創出でなく、ストレスの解消
2. 複数のドメインにまたがって課題解決が必要
3. 売上を生み出すことが極めて少ない

業務システムの目的は、ストレスの無い作業環境を提供することです。15年近くやってきて、やっとミッションがわかったというか(笑)

「個人もしくは特定の部署に、高い負荷がかかっている」
「業務の受け渡しが紙、もしくは経路が複雑で、様々な手間が発生」
「どうやって作業を行っているのか、他人が見ても判断ができない」
「欲しい情報が取れない or 精度が低いので、経営判断を正しく行えない」

こういうのが代表的なストレスです。ストレスって、環境が作るものなんですよ。個人ではなく会社が作り出すものです。なので、人が入れ替わっても改善されるわけがないですね。ストレスが発生する構造が変わっていないわけですから。

業務システムを導入するとストレスが解消されるワケといえば、システムに業務のルールを埋め込んで標準化するため手順が簡素化されること、データ化されることで、適切な情報を取れるようになることです。

また、ストレスの解消が目的なので、ユーザーを切ることが出来ない。

プロダクトは仕様変更有りですよね。Twitterの仕様が急に変わっても「さーせん」で終わり。不特定多数のユーザーだから。でも、業務システムは特定のユーザーを対象にするので「私のストレスがまだ解消されていませんよ」から、逃げられない。業務システムの難しさはここかなと感じています。

複数のドメインにまたがってというやつは、会社内には性質の異なる複数の業務で構成されているので、全体最適を図るために全社横断的に見ないといけない、ということです。どこかにしわ寄せするようなエセ効率化ではね。

物売りですと「見積→受注→出荷→請求→回収」ですし、施工だと「引合→現調→見積→契約→作業実施→請求」になります。顧客向けのやつであれば、ある業務だけフォーカスすれば良い。見積だけ自分の好きなように管理出来る、契約処理が電子化で超簡単など。社内向けのやつは下手にシステムを入れると管理対象が増えるので、手間ばかりが増えることもあります。

業務プロセスってバケツリレーと全く同じなので、バケツを持っている人に目を向けてもしょうがなくて、なんでここで水が溢れるんだとか、ここだけやったら時間かかるなとか、そういうのを見なくてはいけない。

ユーザーよりも全体をきちんとみて、業務理解を高める必要がある。やったことがない業務であっても。その先はITの力で、業務上に流れるデータを整形手術して、スムースに回るように、欲しい情報が取れるようにして、ストレスを解消してあげる。

これが、僕がやっているシゴトです。

最後の「売上を生むことはない」が一番でかいけど、例えばSalesForceを導入します。それを使い続けるとお金が入ってくるかといえば、別問題です。極論すればアカウント作っただけじゃ、お金が出ていくだけ。使うとお金が増えるならいいけど、それはない(笑)

業務システムはお金を生むものじゃないので、継続的に手を入れて機能を増やしてもっと便利にというのは、なかなか困難。業務システムを使った業務サイクルが確立されるのがゴールで、コストが第一。売上で得た粗利から投資に回すのは抵抗があるし、業務ストレスが「深刻」であると感じるトップが少ないのも実情。そのため、人手が足りないなら人を入れたほうがいいになって、ストレスが解消されず、同じ過ちを繰り返している。

また、技術の先進性が求められるかも、別問題です。本業の売上や利益に直結するようなソフトウェアの技術が必要なのは、ソフトウェアで売上を生み出している会社ぐらい。業務システムは、先進技術を活用する必然性が薄いのです。ありふれたもので充分。PHP4でもいいんです。動くから。インフラには気をつけないとですが。

レガシーシステムって叩かれている事が多いけど、確立された業務プロセスの上に乗っていて、それでできること変わらないなら、それでいい。私が知っているメーカーで、40年モノが動いている。その代わり、メンテナンスできる体制があることが条件です。

動いてはいるが、どうして動くのかコードやドキュメントから判断できない、いじると何が起こるのかわからない状態は、安全ピンの外れた手榴弾みたいなものです。爆発するのは業務環境になるので、ご注意を。

思いつくままに書きなぐったら、だんだんまとまりがなくなりました。僕が思うには、プロダクト開発ならPdMがいて、エンジニアがいて、タッグを組んでやっていけると思うのですが、自社で使うシステムを正しく作る(使う)ための体制を作り、方針を決められる専門家がいない気がすることです。

もう3000万人が高齢者で、これから働ける人手を国内もしくは国外を含めてみんなで奪いあう時代。業務をこなすのにやさしくない環境を与える会社が競争優位に立てるとは思えない。

なので、業務運営のストレスをITで解消する会社のインフラを作る大切さを、今後も啓蒙して参ります!





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?