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ウェルビーイングの4領域と3階層

ウェルビーイング(Well-Being)という言葉は、今やそこかしこで聞くようになってきましたね。
私も少し前に以下のnoteを書かせていただきました。

上のnoteでは働き方に焦点をあてて、仕事の詰め込み過ぎにならないように「ブレイク」「リチャージ」「セットアップ」の時間を取ることが必要なのではないかと提起しました。

しかし、それから4年ちょっとが経った今日この頃ではウェルビーイングが会社組織の中で論じられるようになり、働き方だけでなく社員のウェルビーイングをどのように会社が支援するのかという話になってきています。

そこで、このnoteでは働き方だけでなく、もうちょっと俯瞰的にウェルビーイングを考えてみようと思います。

ウェルビーイングとはどういうことか?

Well-Beingを言葉通りの意味に解釈すれば、「(より)よく在る(生きる)こと」となると思います。
ただ、ここでいう「より良い」は人によって異なり、求めているものもまちまちなのではないでしょうか?

なんとか生きていけるレベルまで持っていかないといけない人(マイナス状態から標準レベルになりたい)も居れば、生きてゆく上で不自由はないのだけれどより充実したい(標準レベルからプラスに持ってゆきたい)人もいるでしょう。
その人の置かれている状態によって、求めているウェルビーイングも必要な支援も全く異なるになるものになるわけです。

にも関わらず、ここに来てそれが大事だといい始めたのには新型コロナウィルスによるパンデミックの影響が大きいと私は考えています。

例えば、在宅勤務やフレックスが当たり前になり、決まった時間、決まった場所で決まった人たちと一緒に働くわけではなくなりました。

仮にそういう制度がなかったとしても、ロックアウトや出社制限があったことで自分の生活と仕事のバランスを考える機会や時間が誰しもの中にでき、「人それぞれ」の生き方をもっと大切にして良いのではないかと考えるようになってきています。

ウェルビーイングが人それぞれであるにも関わらず、なぜ会社は支援しないといけないのでしょうか?
理由は二つあると思います。

もう「会社のために」で無理してもらえなくなってきているので、それぞれの生き方に歩み寄ることで会社に居続けてもらうためというのはまずあるでしょう。
言葉を変えれば社員のリテンション、ですね。よりウェルビーイングの高い状態のために転職したり、働くことを辞めてしまわないように、ということです。

もう一つは、より良い仕事をしてもらうためです。
人事をやっていると思いますけれど、生活がうまくいっていない、家族関係がうまくいっていない人というのは必ず仕事に影響が出てきます。
疲れやすくなっていたり、集中力が落ちていてパフォーマンスが出ないのです。生活の基盤がしっかりしていて、そちらの面で心配事がないからこそ思い切り仕事ができるわけです。なので、場合によってはまとまった休みを取ってそちらの問題を解決して集中できる状態を作ることを薦めることもしばしばあります。

ウェルビーイングの4領域

では、会社は社員のウェルビーイングへの支援で何ができるでしょうか。
大雑把には4つの領域があると思います。
それは身体、精神、経済、社会です。
順番に見てゆきましょう。

最初に身体フィジカルなウェルビーイング)、つまり身体的な健康のことです。
病気にならず、元気に体を動かせて、身体的にベストな状態で仕事に臨んでもらうにするために会社ができる支援には、どこの会社でも義務としてやっている健康診断がありますね。その他にも、健康相談、睡眠・快眠支援、休み時間の体操やウォーキング・チャレンジなどもあるでしょう。

そして精神メンタルなウェルビーイング)、これは心の健康ですね。
今やウェルビーイングというとこちらの方が先に頭に浮かぶくらいになってきているのではないでしょうか。
こちらも義務となっているストレスチェックから始まり、社員の心の相談窓口として従業員支援プログラム(EAP=Employee Assistance Program)を入れていたり、ストレスマネジメントやメンタルヘルスの研修をやったり、瞑想の時間を組み入れたりしてる企業もあると聞いています。

忘れちゃいけないのが経済ファイナンシャルなウェルビーイング)ですね。
お金、すなわち生活して行けるのかの心配があっては働くどころではありません。より給料の高いところや生活保障が保てるところに社員は移るでしょう。
これは現在の給料のことはもちろんなのですが、退職した後のことや働けなくなった時のことをも考えた経済的な安心感の提供が求められます。
具体的には、退職金・年金、投資知識の教育、お金に関するカウンセリングや、社員持ち株制度なども含まれるでしょう。

そして最後に社会ソーシャルなウェルビーイング)です。
孤独を感じるのではなく、人々との繋がりを感じられたり、社会に対して役に立っている自分を感じられることが、その人の働き甲斐であり生きがいとなります。言い方を変えると社内外での人と人とのつながりを作ってゆくこととも言えますね。
具体的には、クラブ活動であったり、社内イベントの開催、ボランティア活動やチャリティ活動を行っている企業もあります。
また、社内での読書会や勉強会コミュニティを作ってゆくことも多くの企業が取り組んでいます。この辺りは前回書かせていただいたインフォーマル・グループ醸成の効果とも繋がってきます。

ウェルビーイングの3階層

ウェルビーイングの4領域について話してきましたが、これらはすべての会社が用意するというものではありません。…というかそれは無理があります。
ウェルビーイングの実行、支援の提供には3つの階層があります。
それは、会社、職場、個人、です。

会社の階層というのは、会社が人事制度などで整えていく規程やツールです。
健康保険や健康診断もそうですし、研修などもツールと言えるかもしれません。制度になっている以上、全社員に公開され、要件を満たせば利用できますので、ある意味で社員の権利のようなものかもしれません。

職場の階層は、日々の仕事をする中でのウェルビーイングです。言い換えると、職場にウェルビーイングを大切にする文化を作ってゆくことになります。
会社がどんなに制度を作っても、それがそのまま文化を醸成することには繋がりませんし、仕事のやりがいなどは仕事をしてゆく中で、みんなで作ってゆくものではないでしょうか。
例えば、一人でずっと籠って仕事をするのではなく、共同作業をする時間を持ったり、休憩時間にみんなでお茶を飲んだり…そんな小さなことでも、社会面や精神面のウェルビーイングをよくしてゆくことになります…

最後の個人の階層ですが、ウェルビーイングが人それぞれである以上、これは必須と言って良いでしょう。
会社がしてくれない、職場が良くない、ではなく自ら自分のウェルビーイングを上げてゆくための行動をとってゆくことが大切です。そう、まずは声を上げるところからかもしれませんね。あるいは、それ以前に自分のより良い状態を考えてみる時間を自分で作ってゆくことでもあるでしょう。キャリアについて考える、などはまさにそれです。

「福利厚生」とはどういうものか?

会社が社員のウェルビーイングを気にして何らかの手を講じて行くことは、何も最近始まったことではなく、昭和の昔から、いや、もっと以前からあります。
それは「福利厚生」と呼ばれていた
のではないでしょうか。

ただ、ここまで書いてきたように、画一的な社員に対して公平?に提供する福利厚生ばかりでは今日のウェルビーイングに対応できません。
だから、自分から取りにいく必要があります。

しかし、その前にあなたの所属している組織の福利厚生を調べてみましょう。
あなたが知らないから使っていない福利厚生の仕組みはないでしょうか?

私も会社でもよくあるのですが、
「そんな制度があるなんて知らなかった」
という社員の声をよく聞きます。

保養所や社員割引、相談窓口にベイビーシッター・サービス…
多くの企業で福利厚生や多様化し、多岐に渡って分岐して行っています。それをそれぞれ別の業者に頼むのも大変なので、いろいろな福利厚生サービスをセットにしているベンダーと契約しているケースもあるでしょう。
福利厚生がカタログみたいになってきていて全部を見ていないことの方が多いのです。会社も説明会をしたりしてますけれど、使わないときに聞いても社員は忘れてしまいますよね。

そして、福利厚生プログラムを企画する人事側は、社員がそれらを利用しているかどうかはよくウォッチしています。そして、社員があまり使わなくなっているサービスやツールは別のものへと入れ替えてゆきます。費用対効果を見てるとも言えます。健康診断のような必須なものを除いて、ね。

つまり、企業の福利厚生サービスは、利用する社員が少なければどんどん削ぎ落とされてしまうわけです。
昭和の昔では多くの会社が保養所や別荘を持っていたりしましたけれど、維持費や固定資産税が高くつく割に一年中利用されるわけではないので、令和の今になるかなり前に閉鎖し、旅行会社のプログラムや割引に変えているところが今はほとんどなのではないでしょうか。
そう…あなたが使わない気づかないうちに、あなたの組織の福利厚生はかなりしょぼくなってしまっているかもしれません。

待っていても向こうからはやってきませんし、自然にウェルビーイングが良くなって行くということにはなりません。
あなたのウェルビーイングをよくして行く起点はあなた自身のはずです。

まずは考えてみましょう。
自分がより良くあるとはどういうことか?
身体面では?精神面では?経済面では?社会面では?
多分、色々あるのではないでしょうか。
そして、その中で自分にできること、誰かに支援してもらいたいことは何かを明らかにしてみましょう。

ウェルビーイングって、まずはそこからなのではないかな、と私は思います。

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