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Appleの哲学に触れる4つの動画

私はいわゆる「Apple教信者」と呼ばれるような人たちの一人です。情報機器については30年以上前からApple以外のものを(個人用としては)使ったことがありません。きっかけについては、別のnoteで書かせていただきましたけれど、Macintoshから始まって、PowerBook/iBook、Newton、iPod、iPhone、Apple TV、iPad、Apple Watch、AirPods、Apple Pencil、HomePodと新しいカテゴリの製品が出るたびに入手して使い倒してきました。リンゴのマークがついたガジェットでこれまで買ったものを数えてみると…なんと48もありました。( ̄◇ ̄;)

というわけで、私は完全にAppleのエコシステムに取り込まれてしまっており、同時に間違いなくApple製品によって人生は変わったと思います。
しかし、それは単に製品やテクノロジーによって変わったのではなく、その中に埋め込まれている哲学であり精神に強くインスパイアされているからだと思っています。そうでなければ30年以上も一途には使い続けられないなと。

なぜ、そこまで惹かれ続けているのか?
それを考えたときに、私に影響を与えたであろう4つの動画が思い起こされます。思えば、これらの動画を見たときに魂が震えるような感動を憶え、時が経った今見ても心にジーンと響くものがあります。
ひょっとしたらこれを読まれる方もよくご存知のものばかりかもしれませんが、それぞれの動画が作られた背景と見た時の私の想いを交えて、シェアをしてゆきたいと思います。

1984

あまりに有名で、最近ではFortnite訴訟に絡めてパロディまで出てるCMですね。
オリジナルはスーパーボウルのスポットCMで流されたものです。

当時はAppleではなくApple Computerという社名でした。スティーブ・ジョブスとスティーブ・ウォズニアックという二人の天才(オタク?)がガレージで作った世界最初のパソコンはやがてApple IIとなって世界を席巻しました。
その後ビジネス機器の巨人であったIBMが参入してきました。最初は「ようこそ、IBM。マジで(Welcome IBM, seriously)」とApple Computerは横綱相撲のつもりの広告を流す余裕ぶりでしたが、あっというIBM PCによってパソコンという市場をほとんど持っていかれそうになっていました。
そんなときに、起死回生の製品となるべくApple Computerで開発されたのがMacintoshでした。

CMは、ジョージ・オーウェルの映画「1984」を意識していて、支配者たるビッグ・ブラザーとIBMを被らせ、Macintoshのイラスト入りTシャツをきた女性がスクリーンに大写しになっているビッグ・ブラザーに向かってハンマーを投げつける…というものです。その後に画面に、
「Apple Computerが1月24日にMacintoshを世に出します。そしてあなたは、なぜ1984年が映画『1984』のようにはならないのかを知ることになるでしょう(In January 24th, Apple Computer will introduce Macintosh.  And you’ll see why 1984 won’t be like “1984”.)」
というメッセージが流れるというものです。
そしてこのCM、なんと映画「エイリアン」の監督でもあるリドリー・スコットが監督をしています。

私がこれを見たのは、初めてのコンピュータとしてMacを買った後だったと思います。このCMが作られた背景も同時に知り、自分達が作り上げたパソコンという市場をIBMに持って行かれそうになっていた当時、どんな想いでこれを作ったのか、どれだけエネルギーをかけていたのかまでを分かったときに感動したものでした。
日本ではPC98全盛でしたけれど、Macでいいんだと心から誇れました。

ガレージからスタートした頃の挑戦してゆく気概を忘れることなく、ジャイアント・キリングであり、アベンジすることを常に目指している…そんな海賊的な反骨精神に強く惹かれたのかもしれないと思っています。

ナレッジナビゲーター

Appleが考える理想の製品を映像化したコンセプトビデオがこれです。これが作られたのが1987年というのが驚きです。

このビデオに先立つこと15年、アップル・フェローでもあるアラン・ケイが1972年にダイナブック」というコンセプトを出しています。それはそれでコンピュータといえばメインフレームだった時代の構想としてはものすごいことだとは思います。
しかし、ナレッジナビゲーターはダイナブックのコンセプトにGUIの究極とも言えるインターフェースを組み込んで見事に映像化しているものであり、プロダクトがもたらす世界観をわかりやすく伝えているという意味で大変優れたものだと思います。

ビデオをご覧いただくと気づくことができると思いますが、キーボードがない画面だけのスレートデザイン、Siriのように音声でやりとりできるアシスタント、タッチスクリーン、テレビ電話機能…
何かに似ていませんか?
そう、iPadですね。インターフェースはMacのそれになっていますけれど。つまり、このビデオで考えられたことのほとんどが今、Appleの製品やサービスで実現しているということになります。

私がこのビデオを知ったのはマックを使い始めて数年経った頃、マルチメディアという言葉が現れ始めた頃ですがまだWindows95が出てくる前でした。確かAppleがQuickTimeの規格を策定しマルチメディアパソコンを出し始めていた頃だったと思います。
当時私はPowerBookを使っていてそれなりに満足をしていたのですが、このビデオを見て衝撃を受け、いつかはこんな夢のような世界を体験できるようになるのだとワクワクしたものです。

今、私のメインマシンはiPadです。Siriにはもうちょっと頑張って、このビデオに出てくるアシスタントぐらいになってもらえると嬉しいなと思っています。

Think Different

1997年。ジョブスがAppleに戻った時に作られたキャンペーンであり、あまりにも有名なビデオです。
倒産寸前でAppleがオラクルに買収されるという噂がある中で、当時のCEOだったギル・アメリオがNeXTを買収し、ジョブスはAppleに戻ってきました。その後ギルとジョブスは意見が合わず、ギルはCEOを退きジョブスがAppleの実権を握ったときに最初に行ったのがこのキャンペーンでした。

世の中を変えていった偉人、芸術家、格闘家…の中でもとんがっていた人たちの映像を白黒で流し、ナレーションで彼ら彼女達がいかに現状にチャレンジし、時代を作っていったのかが熱く、静かに語られています。
「自分達が世の中を変えられると考えるようなクレイジーな連中こそが、本当に世界を変えているのだ。(People who are crazy enough to think they can change the world, are the ones who do.)」

Window95が世の中を席巻し、Macのシェアが5%にも満たなくなっていた時に、「それでも俺たちは違うんだ、世の中を変えていくんだ。胸を張ろうぜ!」というApple社員へのメッセージにもなっていたのではないかと思います。

1984やナレッジナビゲーターのビデオの時とは違い、私はこれをリアルタイムで見ることができ、初めて見た時は涙が止まらなくなったのを覚えています。
他の人たちが考えないようなことを考え、現状に満足せずにチャレンジし続ける。もちろんそこには失敗もあるし、周囲から理解されずに白い目で見られることもあるでしょう。それでも自分のやっていることに価値があると信じ、目指すものに向かって頑張り続ける。それでいいんだ、と勇気をもらえました。

そして、ご存知の通り、Appleの快進撃はここから始まりました。
iMac、MacOSX、iPod、デジタル・ハブ構想、iPhone、AppStore、そしてiPad…パソコンのCPU(M1チップ)までも世の中に送り出していきます。
それにより、コンピュータの使い方を変え、音楽の聴き方を変え、電話を再発明し、ソフトウェアもハードウェアもサービスも統合した独自のエコシステムを作り上げ、産業の構造も、ひょっとしたら本当に世の中も変えてしまったのではないでしょうか。

Designed by Apple in California

このビデオは2013年6月のWWDC(World Wide Developers Conference)のイントロで流されたものです。このビデオが流された後、場内は大歓声の拍手喝采でした。
2011年10月にスティーブ・ジョブスが世を去り、ティム・クックのAppleになっています。喝采を受けてのティム・クックのアップデートは実に堂々たるもので、ジョブスが乗り移っているかのようにも見えました。

実際、2013年のWWDCはAppleにとって大きな転機になっていたと思います。
例えば、それまでMacOSの名前をWindowsに対抗してネコ科の動物にしていた(LeopardとかLionとか)にしていたのをカリフォルニアの地名にしたり、ジョブスの時からiOSのリーダーであったScott Forstallが解任となり、Craig Federighiに引き継がれると共にJohnny Iveの協力のもとiOSのデザインは刷新されました。
こうしてジョブスの時代から引き継いできたものを手放していったのです。

また、新しいMac ProのSneak PeakをしたPhil Schillerが「Can’t innovate anymore, my ass!(もうAppleからイノベーションは出ないなんて言わせないぜ)」と吠えたのも印象的でした。ジョブスが居なくてもAppleは大丈夫、というエネルギーに溢れていましたね。
実際これの5年後の2018年には時価総額1兆ドルを超えた世界初の企業となったわけですから。

さて、WWDCはソフトウェア開発者向けのイベントではありますけれど、このビデオはものづくりをする人すべての人に向けてAppleから送られたメッセージのように私は感じました。
納得のいくものを世に出すために、考えられないほどの数の試行錯誤を重ねているからこそ、皆から支持を得られるのである、と。ものづくりにおいて妥協はしないその姿勢に心打たれるものがあります。

There are a thousand no’s for every yes.
(全てのYesと言える結果は、1000ものNoの後に現れる)
ジョブスは、自分が納得できる製品になるまでは遠慮なく何度もやり直しを命じ続けたと言われています。彼がいなくても、彼が残したAppleのデザインにおける基本的な精神は残り続けるんだと信じることができました。

Appleから私がもらったもの

Appleが世の中に向かって流したメッセージビデオで私がインスパイアされたものを4つ紹介してきました。
私自身の価値観に響いたから感動したり涙したりできるのだとは思っていますけれど、それだけではもちろんなく、Appleからものすごい沢山のパワーをもらい続けてきたなと思います。

どんなに敵が巨大で強力でも涼しい顔をしてチャレンジして鼻を明かしたり、
あり得ないようだけれどすごく鮮明な夢を人に与えたり、
従来の考え方に挑戦し、ぶっ壊し、新しい道を作り出したり、
納得がいく最高のものへと創り出すものを極め続けたり…

何かに挑戦していても挫けてしまいそうになる時、ビデオの根底にあるメッセージを思い起こします。
そうすると、もうちょっと頑張ってみよう、と思えるのです。

Appleが存在する世界に、時代に生まれたことに本当に感謝しています。
そして、思います。おそらく、死ぬまで使い続けるんだろうな、って。
何せ、既に30年前に信者ですから。(笑)

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