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タイプ論のツールを上手く使おう

採用面接やチーム・ビルディング、そしてコーチング。
人事系の仕事をしていると、さまざまな人々と関わってゆく上でタイプ論とその応用方法について学び、実践する機会が多いです。

タイプ論はよく性格診断と混同されます。
思考や行動の傾向を分類しているところまでは同じですが、他の人や基準値との相対的な比較によって判断をしている特性論ではなく、どちらかというと絶対的な他者との違いを特定するための類型論に根ざしているため、強みとか弱みとかという考え方になりません。

相対的ではない分、タイプ論は人を知る上でとってもパワフルですが、正しい使い方をしないと人と人との間に分断を作ってしまいます。逆に言えば、うまく使うことで異なる人々の間に橋をかけることもできるわけです。

私がよく活用するツールを簡単にご紹介しつつ、使い時の注意点と効果的な使い方についてまとめてみたいと思います。

お勧めのタイプ診断

私がよく使う順に紹介をしてゆきましょう。
一つ目は、ソーシャル・スタイルです。

ソーシャル・スタイルは、ユングのタイプ論がその考え方の根底にあると思われます。
人のタイプを、感情を表に出す/出さないと自己主張するか/主張を聞くかの二軸のマトリクスで4つのタイプに分けます。
4つのタイプには、メインとサブがあり。それらの掛け合わせをすることで細かくは16タイプがありえます。

ほとんど同じ内容と言って良いものに、DiSCLuminaSparkがありますが、タイプの呼び方が違っていたり、より精緻な分析をできるように工夫していたりしていますので、使い分けはできるかと思います。

ソーシャルスタイルの良いところは、シンプルで分かりやすいところですね。いろいろなところで診断ツールが出ているので、手軽にやってみることができます。

二つ目はMBTIMyers Briggs Type Indicatorです。
私はこちらの認定ユーザー(2023年9月まで)でしたけれど、タイプ論のツールとしては最も信頼性が高いものではないかと私は考えています。

MBTIは4つの二律背反の軸を使って16のタイプが表されます。
外向と内向、直観と感覚、思考と感情、知覚と判断の4つが軸なのですが、これが二律背反たる所以は、同時に成立し得ない正反対の傾向であるからです。

二律背反であると、事象に対して判断したり行動するときに、いずれかを意識的・無意識的に選んでいること(選ばざるを得ない)になり、そこにその人独自のものがたち現れるわけです。
例えていうならば、利き手や利き足のようなもので、走ろうとした時に必ず右足か左足のどちらかが出てゆくことになり、両方が一緒ということはないというのと同じかなと思います。

また、MBTIにはダイナミクスという考え方もあり、自分のタイプの中に主機能補助機能があり、それを普段は使っているのだけれど、成熟するにつれてそれ以外の機能(劣等機能)も使えるようになり、「心の全体性」と手に入れるという発達理論的な考え方もあります。

三つ目はエニアグラムです。
ソーシャル・スタイルやMBTIが心理学をベースにしているのに対して、エニアグラムのシンボルとなっているダイアグラムはその期限を2,500年前のバニロニアとも言われています。それだけに神秘的な匂いのする性格タイプ論です。

MBTIが二律背反の軸を使って人を分けてゆくのに対して、エニアグラムの中で出てくる考え方は3進法に近いものがあります。いくつかの基本的な傾向には、両極端とその中間の状況があると考えており、それらを掛け合わせて9つのタイプが表されています。

タイプは番号で表されますが、タイプにはウイングという考え方があり、タンプの番号の前か後のいずれかがウイングとなります。そしてウイングはメインのタイプの補佐したりタイプの性格のテイストを若干変えてゆきます。

エニアグラムには発達理論的な部分が色濃くあり、各タイプは9段階の発達段階を上がったり下がったりしながら人間としての成熟を目指します。

また各タイプの統合の方向分列の方向というのがあり、それらは自分のタイプとは別のものになっていて、統合のタイプの人と交流することで自分の発達と成長、安定が得られますが、分裂のタイプとの交流は自分にとっての停滞や混乱を招くことにもなるというのがなかなか面白いです。

私が使うのは、だいたいこの三つなのですけれど、性格タイプとは別に最近よく使うのになったのがセクシャリティ診断のanone(「あのね」と読みます)です。

心の性、恋愛傾向、性的指向、表現したい性の4つについての診断結果が、簡単なテストで得られます。
私も実際にやってみて驚いたのですが、バリバリの男性だろうと思っていた自分が実はかなり中性的な部分を持っているし表現したいと思っているのだと分かり、「性別」や「ジェンダー」に対する考え方がかなり変わりました
あくまでも傾向ですし、性的嗜好は年齢や環境によって変わってゆくので、環境が変わってしばらく経った時点で診断し直してみるのが良いかなとは思いますけれど。

私はこの診断をダイバーシティについて考えるとき、男性と女性という二つだけで見るのではなく、男性性の中にも女性性の中にもいろいろなものがあるのだということをわかってもらうためにこの診断をよく使っています。

他にも、タイプ論のツールとしてはエゴグラムがありますが、私はこちらはちゃんと勉強したことがないのでコメントは控えます。
また、特性論的な性格診断ツールも有名なBig 5を含めてたくさん世の中にはあるので、タイプ論のツールとは目的に応じて使い分けると良いのではないかなと思います。

タイプ論を使う時の注意事項

タイプ診断は実際にやってみると自己発見があるし、他の人についての意外な一面がわかることもあったりして、楽しいものです。
組織の中ではチーム・ビルディングとして、友人同士のパーティとかでもアトラクションでやると大いに盛り上がるのではないでしょうか。

しかし、タイプ論を扱うときは注意しなければならない点もあります。
使い方を誤ると人を傷つけてしまったり、関係性が悪くなったりします。気をつけるべき点は4つ程あるかなと思っています。

まず、人をレッテル付けして判断しないこと。
「あの人はISTJだから」みたいにタイプで決めつけて、それ以上その人を見なくなるのは相手にとって失礼ですし、あなた自身もその人の本質を見誤ることになるでしょう。

そして、タイプに優劣はないと知っておくこと。
同じタイプの人とは気が会うでしょうし、自分と合わないタイプもあるかもしれません。だからと言って相手が劣っているとか自分が劣っているということはありません。ただ「違う」だけなのです。

タイプはわかりやすくするために、きっちりと別のタイプと分けて考えるようにしていますが、実際にはスペクトラムのようにタイプの強弱や段階があります。タイプ論であるけれど、この傾向が強い、大きい、ぐらいに捉えておいた方がその人の可能性を広く見ることができます。

そして、大切なのはタイプは変化するし、成長するし、発達してゆくものだということです。
「今はそのタイプなのである」と理解するとともに、それが時間の経過や環境の変化で少しずつ変わってゆくものだということを知っておくと良いでしょう。MBTIのところでも書きましたが、最終的に人は全体性を手に入れられるはずなのですから。

タイプ論の効果的な使い方

タイプ論を知ること、要所要所で使うことは人に関わる仕事をしている人たちにとってとても重要な知識でありスキルだと私は思っています。
何よりも大切なのはタイプを知って何をするか、ですよね。

まずは自己理解。自分の中でどのような傾向があるのか、それはなぜ起こるのか典型的な反応のパターンとそれに対処する方法。タイプ論は多くの統計的な分析に基づいて体系化されていますので、そこから得られる知恵を活用しない手はありません。

自己成長のためにも使えます。
自分のタイプにあるはずのものでまだ使われていないものであったり、自分のタイプが発達したり成長した時に起きる状態をイメージすることができれば、より良い自分への近道がひらけてゆくのではないでしょうか。

そして、最も大切なのではないかなと私が思うのは、「自分と違う人がいる」ということを理解することではないかな、と。
タイプ論を勉強すると、「自分と正反対のパーソナリティを持っている人」というのがあり得ることがよく分かります。そして、そのパーソナリティの行動原理であったり大切にしているものも…
それを理解し尊重できれば、相手と対話を始めてゆくことができます。

タイプ論を勉強をし始めることがあったら、ぜひ自分のタイプだけでなく、他のタイプについてよくよく知ってみてください。
それが「自分の行動パターンや考え方が普通」を疑ってみることにつながりますし、実はそれが真の「多様性の尊重」の入り口になるはずだと私は思っています。

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