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ゲーマー歴36年のダンジョン紀行#26 『ゲームの懐を決める。』(ダンジョンを作ってみて見えてくるもの。”報酬と障害”から作る場合編)

▼B83F:ゲームの懐を決める。”報酬と障害”

 ”報酬と障害”とは何でしょうか?
 魅力的な宝箱が報酬なのか。それは矢が飛び出る罠かもしれない。
 魔法で閉じられた扉は、目的地に辿り着く正解なのか。実は遠回りの為の偽りの扉かもしれない。はたまた隠された財宝の小部屋かもしれない。
 闇に潜む魔物達は、必ず我々に襲い掛かる蛮族なのか。それとも仕掛けを解くための情報を持つ重要人物なのか。
 謎の魔術師が仕掛けた身体が変化する罠は、通常では行けない土地を潜り抜ける光明と変わるのか。
 取り上げたどれもが、報酬となり障害となります。一体、報酬と障害の線引きはどこで起きるのでしょうか。そもそも、報酬と障害とは何を指しているのか、改めて振り返ります。

★三要素における役割。

 まず、ダンジョンを作っていくには「目的」「選択肢」「報酬と障害」の3つの要素を分けて考えています。他の2つからダンジョンを考える場合はすでに記事にしていますので、そこから比べてみましょう。
「目的」からダンジョンを考える場合、最奥を決めることになりダンジョンのモチーフやその全体像を想像しやすくなりました。
「選択肢」からダンジョンを考える場合、スタートからゴールまでの道程を決めていく作業になるので道程を具体的に考えやすくなりました。

 それでは「報酬と障害」からダンジョンを考える場合です。これは、ダンジョンの出来事や中身、上記とは違う道中のイベントやパーツを考える作業となるのではないでしょうか。
 報酬と障害はそれ単体で考えた際、最初に挙げたような宝箱や扉、罠や魔物など、ダンジョンを彩るパーツ、部品です。部品とは言え、そこに宝箱があれば中身を考える必要がありますし、それはダンジョンの中での役割、ひいてはゲームとして意味のある何かが手に入らなくてはいけません。RPGであれば臨時のお金が手に入ったり、回復アイテムがあったり、あるいはそこでしか手に入らない強力な武器や防具などをイメージする人は多いでしょう。
 意味のない何かが手に入ったとしたら、それはプレイヤーを混乱させる「障害」になるかもしれませんが、ダンジョンの役割として最善ではないでしょう。言葉遊びのように聞こえるかもしれませんが、「障害」と言う役割を与えるのであれば、それは意味のある存在になるので、本当の意味で「意味のないもの」と言うものは存在できません。つまり、登場させることによって、ゲームに彩りを加えることになるのですから、その役割をしっかり考えること。それが「報酬と障害」からダンジョンを作る最初の一歩になります。

 当たり前のことを言うようですが、報酬と障害とはまさしく「ゲームの楽しさに関わる物」であり、ダンジョンはその中身によって楽しさが作られます。それは、私の過去の記事良いダンジョン・悪いダンジョンを振り返ることでより鮮明に理解されることと思います。
参考:興味がありましたらこの記事の後に御覧頂けたらと思います。
#03『名ダンジョンから学ぶ』https://note.com/itituka/n/n5899c97cd9fd #16『ダンジョンの嫌われる部分を解析』https://note.com/itituka/n/n2e0f7a87d152

 ダンジョンは元来より”キャラクターとの『一体感』。そして戦闘を熱くさせる『臨場感』と『緊張感』を最大限に活かす舞台装置”。『緊張感』は「報酬と障害」と言うリスクとリターンがあってこそです。つまり、「報酬と障害」はダンジョンの中でも「楽しさ」の核となる。そんな要素となっています。


★「報酬と障害」の類型。

 さて、「報酬と障害」にはある程度の”型”があることは事実です。冒頭で”例え”を出せていたことが何よりの証拠でしょう。
 それを踏まえ、報酬とは何かを考えていくと、”「心理学」の分野が多くの示唆を与えてくれるようだ”と当記事を書きながら調査するにつれ行きあたりました。その分野においては素人の為、ゲーマーの視点から理解した範疇で皆さんと共有できればと思います。興味のある方は是非、心理学の報酬系などをご自分で調べてみてください。

1.学習による報酬と障害。

 これはRPGで敵を上手く倒せるようになることを含め、ダンジョンにおいて仕掛けを理解する”プレイヤー自身が学習する快感”です。
 例えば、出現した敵を見て、倒すのに有効な手段に気付くこと。或いは何度も敵に挑むことで、有利な戦略を取れるようになっていくこと。
 あるいは、ゴーレムがダンジョンの入り口を守るダンジョンで、ゴーレムには有効的に攻撃が通る核のようなものがあり、それを攻撃せねばならないとします。その核の形や色、存在する場所を覚えた後、ダンジョンの最奥に待つより巨大なゴーレムには同じような形や色、そこにある場所に2つや3つあったなら、それら全てを壊せばよいのかと理解すること。
 もしくは、ダンジョンの入り口では扉を開ける為に部屋の中にあるスイッチを押さなければ開かなかったとします。そして、中位階層に行くと今度はスイッチがすぐには見つからない場所にある。最後のボスの扉の部屋では、スイッチが複数あり、実はスイッチの形が最初と中位とで共通の装飾が施してあり、同じ装飾のスイッチを押すことで開くことができることを理解することなどです。
 そこに繋がる価値として、敵を打ち倒すことに繋がる武器や、情報が手に入ることが小さな報酬となることが考えられます。

 例)
・正解の道を理解する過程やヒント。
 扉に刻まれた図形や紋章などの印
 あるいは洞窟で足跡を見つけるコツや植物の植生などの情報。
 もしくは一度侵入したことがあり逃げてきた冒険者からの話
 
・敵の弱点を理解する過程やヒント。
 図鑑や古い手記に記された断片的な敵の情報
 あるいは世界観に則った物理法則が判明し気付く弱点。
 もしくは繰り返し戦えることで少しずつ上達していく自分自身の成長。
 
・上記をサポートするためのゲーム的なデータ。
 RPGであれば回復道具などの消耗品やお金。
 武器や防具が繰り返し戦う為の支えとなる。
 また世界観を伝えるちょっとした情報等も、クリアに向けての支えとなる。

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