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カバー曲で、原曲の素晴らしさを再認識する

あまりにも音楽を知らずに、又、触れる機会があっても、感性が鈍く、感化されず、少青年時代を通り過ぎてきた事を悔み、今になって、時間が許す限り、NHKの「The Songs」「COVERS」等で、興味ある歌い手の歌を聞きかじっている。以前は、布施明、ちあきなおみ、南こうせつ、中島みゆき等の歌唱力、歌詞、曲等一辺倒だったが、カバー曲を聞く事で、多様な歌の良さを認識し,歌詞が沁み入る様に入ってきたり、原曲のシンガーソングライターに辿り着き、改めて聞き惚れるなど、往ったり来たりしながら歌の世界も楽しんでいる。

かって、芥川賞作家の故新井満さんが、友人の死に因んでアメリカ合衆国の詩歌を訳し、作曲した「千の風に乗って」をオペラ歌手の秋川雅史が歌って大ヒットした。その時、いい歌は、時代や処をかえ、何度も蘇り、我々の前に登場するのだと思った。最近では、イルカの「なごり雪」がきっかけになった。かなりの知名度があり、愛唱されているが、二人の歌手の元歌とカバーを聴き、より鮮明に情景が浮かんできた。作詞作曲の伊勢正三の丁寧で細やかな、優しさ溢れる表現とCoccoの情感沸る歌い振りには感動を覚えた。

ごく最近、「ユーミン特集」で目から鱗を実感した。国民的シンガーソングライターなのは知っていたが、今ひとつ馴染めなかった。歌は、楽曲が耳に心地良く、歌唱力、歌詞が相まって大ヒットするのだと思う。朝ドラ等のわかりやすいテーマソングもあるが、変調?の曲で難しく、何故か親しみにくい先入観があった。カバーアルバムを出したJUJUは松任谷家では、うちの子みたいに言われ、コケティッシュで、イノセントなところを絶讚され、カバー曲を歌うに相応しい他の歌手も紹介された。秦基博は、ユーミンの曲を深く理解し、カリスマ性にのめり込み、これからも後を追って、音楽活動を続ける心境を述べ、「ひこうき雲」を独自の感性で、抑制と解放のバランスが取れた、声量あふれた歌唱力で聞かせてくれた。今後、オリジナル曲にも注目したい。「The Songs」に出演したCocco は、沖縄の祖父の踊りに心酔していたのに、歌手活動を始めてしまった事に悩んでいたが、知人に、祖父の踊りが歌に引き継がれていると聞かされ、安心して取り組めるようになったと言う。しかし、コンサートの度に、やり切った感が募り、いつ辞めてもいいと思う反面、いつの間にかその魔力にも取り憑かれ、これ迄歌い続けて来れたそうだ。やはり「ひこうき雲」を思い入れ豊かに歌い上げ、独自の世界観を示してくれた。自作の「強く儚い者たち」も披露してくれたが、夥しい飛魚が飛翔し、至福の時を迎えた故郷沖縄で、海原を疾走する舟からの情景をパワフルで、意気揚々とした者達の視点で描いた作品は、圧巻であり、今後の活躍ぶりも気になる。

何かを優先したり、諦める事も必要なのだろうが、そこが要領の悪さで、端折れないのである。せっかく知った、豊かな時間と空間。自分を通り過ぎた、古きを尋ね、斬新性、多様性を知る等ありがたいことで、人並みに遅ればせながらも、人間性を取り戻しつつある様な気がする。時間が切迫している中で、カバーであれ、オリジナルであれ、どれだけ理解できるかわからないが、時に応じ、聴いてみたいと思う。高齢になり、何時迄も何かを続けていたり、忘れ物や保留物を気にして費やす時間は、他の人には意味のない事であっても、その人にとっては、無駄にはならないのではないだろうか。肉体は、病んで、衰えても、せめて自分にとって、気持ちが昂揚する時と空間を持ち続けたいものだ。




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