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新しい旅のカタチを模索する

「 自分を大切にする 」
誰もがどこかしらで出会ってきたであろう言葉だが、具体的にどうすればいいかを知っている人は、案外少ないのではないだろうか。

かくゆう私は「自分を大切にする」という言葉を知るよりも先に、傾聴!カウンセリング!とカウンセラーをしている母の影響で、自分と向き合う機会がたくさんあった。時には怒りや悲しみといった感情の行き先として、新聞をビリビリに破いたり、プラスチックのバットでクッションを思いっきり殴るなどした。

そんな幼少期を過ごした私にとって、カウンセリングは「自分を大切にする方法ランキング」の上位にランクインしていた。

「カウンセリング?自分とは無縁だな」
と思ったそこのあなた。あなたにこそ、是非とも読んでほしい。これからここに綴るのは、自分を大切にする方法を見つけるための、新しい旅のカタチだ。


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2021年4月。自分を大切にする方法を見つけられる場所として、奈良の山奥に古民家宿「イトグチヤ」をオープンした。

ここには「はなれる」「ひろげる」「さぐる」「しまう」の4つの章で構成された物語が用意されており、お客さんはその物語の主人公として一夜を過ごす。決して新聞紙を破いたりバットを振り回すわけではないので安心して欲しい。

日常とは遠く離れた自然の中で、“心地よさ”をテーマにした物語の主人公になってもらうのだ。​


主人公といえば、小説を読んでいてたびたび感心することがある。「この人は自分をよく知っているな」と。「私は雨の日が嫌いだ」とか「彼の言葉に違和感を持った」とか、内省を重ねた人間じゃないと語れない言葉がつらつらと出てくる。そんでもって、雨が嫌いな理由も「初恋の人にフラれたのが雨の日だったから」と、3ページくらいの回想シーンへつながる。

主人公という職業は、なんとも体力のいる仕事だ。現実は「雨だる。」の一言で夕飯の買い出しへと思考が飛ぶだろう。

なぜ主人公は自分のことをよく知っているのか。それはもちろん、主人公が自分の考えや思いを自覚できていないと進む話も進まないからである。雨が嫌いだと自覚しているから、気分を上げるために「雨の日こそお気に入りの服を着る」とか「雨の日に聴くプレイリストを作る」などとストーリーが進む。もしかしたら、雨の日を好きになるために初恋の人にフラれた場所まで行って、思い出を塗り替えようとするかもしれない。

では現実はどうだろう。人生という物語においての主人公は自分である。自分の考えや思いを自覚できてないと時間は止まるのか。そんなことはない。「雨だる。」で済ませたって仕事は、家事は、生活は、続いていく。


「物語の主人公として一夜を過ごす」というのは、こうした体力のいる主人公という仕事を、一晩体験してもらおうという試みだ。一冊の短編小説にアテンドしてもらいながら。

主人公はあなた。人によって解釈の異なる短編小説を読みながら、自分の考えや思いを自覚してみる。「雨だる。」で済ませてきたところを深掘っていく。

そんなことしたところで、旅が終われば変わらない生活が待っている。でもきっと、帰りのカバンの中には「自分を大切にする」ヒントが入っている。


道端に生える雑草にも名前がある。花が咲くわけでも、香りがあるわけでもない、緑色した青くさいそれ。「自分を大切にする」とは、そんな気にも留めない雑草の名前を調べることと似ているように思う。

華やかで彩りのある喜怒哀楽の感情のほかに、日常の中で芽生えては枯れていく小さな感情たち。意識しないと気づかないが、確かに存在しているそれこそが、心の奥底にしまわれた本音だったりする。

忙しければ忙しいほど、この小さな感情に向き合うのは難しくなる。雑草のように植物図鑑で調べられたらいいが、あいにく感情には図鑑などない。正体を探るためには時間と体力が必要なのだ。

その、時間と体力の変換方法の一つとして、私はカウンセリングを受けてきたわけだが、それは誰でも簡単にできることではない。「カウンセリングを受けるほどではないかな」と遠慮することの方が多い。

だとしたら人は、雑草のような感情の正体を知りたくなった時どうするのだろう。足のつかない椅子に座ったような気持ち悪さをどう解消するのだろう。「自分を大切にしたい」という気持ちが、人を旅に連れ出すのかもしれない。ここじゃないどこかに行くことに、時間と体力を使って。


そうそう。散々雨がだるいなどと言ってきたが、イトグチヤのある室生という地域は雨がとてもよく似合う。雨上がり、水蒸気に沈む森を散歩するのがおすすめだ。

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”【物語プラン】おひとり様限定の心と向き合う体験プログラム”はこちら
https://www.chillnn.com/1777fe5bbc136d/plan/17a4b8aa854330?inflowfrom=OTA_ORDINARY

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