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秋イカ胴体詰め物語

秋です。秋イカが釣れるシーズンです。

夏に生まれたアオリイカたちが生長し、数釣りが楽しめる秋は、イカ釣り師たちが竿を振るう季節です。

江戸時代からの漁具「餌木」とは?

秋に釣れるイカは、まだこの世界に興味津々な好奇心旺盛なキッズイカたち。動くものにはつい近寄って抱きついてしまうので、初心者にも釣りやすいとされています。

イカ釣りには、「エギ」というイカ専用ルアーを使う釣りや、生きたアジに針をつけてエサにする「泳がせ釣り」など、複数の釣り方があります。比較的年配の人は泳がせ、若い人はエギを使って釣っていることが多い印象です。

これがエギだ!

エギは日本語では「餌木」と書き、アオリイカ専用の和製擬似餌(ルアー)です。元は江戸時代に漁師の道具として作られたものだそうで、要は海老に似せたルアーです。これを竿を上下に激しく「しゃくる」ことで、海老が泳いでいるように見せてアオリイカが抱きにくるのを待つのです。

ちなみにエギでイカを狙う人は通称「エギンガー」と呼ばれたりします。エギンガー。マジンガーZのような響きです。なんか気恥ずかしい言い方なので自分は「エギの人」と言っています。

コロッケサイズ、とんかつサイズ

エギンガーのほかにも、イカ釣りには独特の言い回しがあります。そのひとつが「コロッケサイズ」「とんかつサイズ」です。

まだ小さい秋イカの大きさを表現するのに「コロッケサイズ」、少し大きければ「とんかつサイズ」と皆さんおっしゃいます。

「なんで揚げ物に例えるねや!」とすごく疑問ですが、確かにコロッケサイズと言われたらその大きさが分かりやすいし、とんかつサイズと言われれば「お!ちょっと大きい」と思えます。よくわからないですがイカ釣りの世界では大きさを揚げ物に例えるのです。その割に「イカリングサイズ」とは言わないのは不思議ですが。

今秋釣れたとんかつサイズのアオリイカ

秋イカは初心者向きというけれど

秋イカは浅瀬にも群れで泳いでいて、堤防からその姿が見えることもあります。隠れ場が多く餌の小魚や甲殻類が多い岩礁帯などにいることが多く、三重県なら南伊勢方面が秋イカのポイントとして人気です。

「簡単に釣れるよ」と人が言うので、自分も毎年、見様見真似でエギンガーとなって秋イカを狙のですが、どうにも釣れません。エギを投げながら「ほんとにこんなので釣れるの?」と疑う心が常にあり、それが釣れない要因かもしれません。ルアー釣りは魚種を問わず、とにかく1日中投げ続ける執念が必要なものです。

「やっぱり自分にイカは無理だな」とあきらめムード漂う頃、釣り場で知り合ったおっちゃんがとんかつサイズのイカを1パイ分けてくれました。自分にはプライドがなく、港に居ついた猫のように人が釣った魚を喜んでいただくので、よく人から魚をもらいますにゃん。

今回はこのいただきもののアオリイカを食べて喜びます。

イカの胴体に米を詰めて煮る

これまで釣ったりもらったりしたイカは、数日寝かしてねっとりと旨味が増したところで刺身にしていました。しかし今回頂いたとんかつサイズのイカを見た時、そのフォルム、大きさ、どこをとってもアレにぴったりのサイズと感じました。

すなわち、イカ飯です。

北海道物産展などで真空パックにされて結構な値段で売られているイカ飯。今回はあれを自作して思うさま貪り食います。いざ。

まな板に置くと結構でかいけど、胴体だけ見るとイカ飯にぴったりのサイズ

西洋ではクリスマスに七面鳥の胴体に詰め物をして丸焼きにして祝うようですが、はからずもこの日は我が家の9年目の結婚記念日。この記念日にイカの胴体に餅米を詰めて煮て祝うのです。奥さんの喜ばない顔が思い浮かぶようです。

内臓をとって空洞化したアオリイカ

本来イカ飯はヤリイカなどでつくるようですが、なに構いはしません。アオリイカだってきっと美味しくできるはず。まずは胴体とゲソを分割して、内臓を取り除いておきます。

空洞化した胴体の中にティースプーン1杯の餅米を詰めます。この時に米をパンパンに詰めないことが肝要です。なぜなら火を通すと餅米は急速に膨らみ、イカは急速に縮むので、これぐらいの余白がないとイカがはじけ飛んで台所が大惨事になり、結婚記念日が一転、離婚記念日になりかねないからです。

爪楊枝で胴体の入口に鍵をしめるのをお忘れなく

そしたら、酒・醤油・みりんを等分に入れた煮汁に浸して煮ていきます。面倒なら麺つゆだって構いはしません。

落としフタをして弱火で20分、火を止めてさらに10分の蒸らし。まさに米を炊く要領で煮ます。もう美味そうやんか!急に大きな声出してスミマセン。

最後に煮汁を煮詰めてかければ、照り照りのイカ飯の完成です。

また板で切ってみると、米がこぼれることもなくスッと切れました。

食べやすいように全部輪切りにしてタレを回しかけて食卓へ。

まず、一緒に煮たゲソを食べてみましたところ・・・味付けばっちり!かなりの時間煮ましたが固くもなく、濃厚なイカの旨味がタレに凝縮還元されてイカの旨味モンスターです。

続いて本丸のイカ飯を一口・・・。
これも美味い。これぞイカ飯の味!という想像とおりの美味さです。
ただ、写真でもわかるように、若干米に芯が残っていて、100点かというと惜しい感じ。本当はもっともっちりむちむちの餅米に炊けてほしかった。

多分これは、餅米をひと晩水につけて吸水させておく行程を省いたのと、ヤリイカにくらべてアオリイカの身が分厚く、米に火が通りにくかったのが原因ではないかと思います。あと10分煮ていれば完璧だったな。

ともあれ、1ぱいのとんかつサイズのイカでも大満足のボリューム。結婚記念日にイカ飯。渋いだろう?うまい~か?とダジャレ気分で奥さんを見ると、イカ飯を1個ぐらいしか食べていない。やばい。イカ嫌いなん・・・?

イカがダメな時の保険

イカ嫌いなん・・・?と青ざめて、あたふたしているようでは2流。ハハ、そんなことだろうと思って、俺は保険として昼間にワタリガニを釣っておいたのさ。みんな大好きワタリガニ。とにかくめでたいワタリガニ。離婚届を突き付けられてもワタリガニが跳ね返してくれるってよ。

2匹のワタリガニをおしげもなく息子と奥さんに捧げる
めでたい色だなあ

だてに9年結婚生活を重ねてきたわけではない。二重にも三重にも策を張って、とにかく家族に怒られないように生きていく。それが俺の処世術だ。どうかこれからも面倒な目に遭いませんように。

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