アリータ:バトルエンジェル

アリータ:バトルエンジェル(2019:アメリカ)
配給:20世紀FOX
監督:ロバート・ロドリゲス
制作:ジェームズ・キャメロン
出演:ローサ・サラザール
  :クリストフ・ヴァルツ
  :キーアン・ジョンソン
  :ジェニファー・コネリー
  :ジャッキー・アール・ヘイリー
  :マハーシャラ・アリ

制作指揮のジェームズ・キャメロンの長年の夢を映像化した作品。朽ちたサイボーグ少女が身体と記憶を取り戻すとき、運命の輪が再び回り始める。天使のような姿から華麗な技で敵を打ち倒すサイバーパンクアクション。原作は日本の木城ゆきとの漫画「銃夢」。
まず驚かされるのは、主役の瞳が不自然に大きいこと。そこかい!って言われそうだが、作中一番気になってしまった。主役は人間の俳優だが、CGで描くことで小柄さを強調しているようである。それに作中では主役の軍属時代の上官も瞳が大きく表現されており、何らかの統一感がある様子。でもせっかくかわいらしい女優さんを配役しているのだから、そのままの表情を見たかったなと思う。
登場人物、背景、設定等々がサイバーパンク的超未来。主役の失われた技術であるサイボーグ体や敵たちの異様な機械の身体などはCGをフルに活用。滑らかかつ高速で戦うシーンは視聴して小気味がいい。作中の人気競技、モーターボールでの疾走感とバトルの爽快感は他の作品では観られないだろう。
彼らが住まうクズ鉄街の猥雑感も非常によく表現されており、生身の人間とサイボーグたちが混然と暮らす情景はSF好きにたまらない。そのクズ鉄街の上には空中都市、ザレムが浮かんでいる。巨大だが、その存在はおぼろげで、クズ鉄街の人間が知りえない上の世界を表現している。
主役はかつて火星の国家に所属していた特殊部隊兵。何らかの理由で朽ちてクズ鉄街のゴミ捨て場に廃棄されていたところを拾われ、第二の人生が始まる。が、彼女のサイボーグ体や技が運命のように戦いへと向かっていく。彼女が機甲術(パンツァークンスト)というサイボーグ専用の格闘術を使い、敵サイボーグを粉砕していくが、アクロバティックかつ迫力のある格闘シーンでCGとアクションが絶妙な融和を見せている。この辺りはCGの効果を熟知したジェームズ・キャメロンの得意技だろう。
しかし原作ファンとは仇なもので、設定の違い、オリジナルのキャラクター、ストーリーの詰め込みすぎなど、間違い探しのように気になってしまった。重要な黒幕のキャラクターの設定が違っていたり、主役のもつ武器が原作のデザインと異なっているのは違和感がありすぎた。原作では2つの章編で描かれた内容なので、それを一つにまとめてしまうのはあまりにも強引と思う。それぞれ章編には非常に魅力的なキャラクターがいるので、そこを大事にしてほしかったなというのが率直な感想。
主要キャラクターにも不満が残り、主役を拾い助けたサイボーグ医者には複雑な事情や感情があるのだが、映画内では描かれず、主役の父親になってしまっている。原作は善ではない善たち、悪ではない悪たちが人間ドラマを見せてくれたので、そういうシーンを期待したが、見事にスルーされてしまった。
その他致命的な設定の違いがあり、続編が作られるのならばこの設定は大きな矛盾になってしまうのではないかと不安を感じてしまう。
主役の使う機甲術独特の動きや技が少なかったのも残念。この機甲術が主役と火星を繋ぐ重要なファクターなので、振動を打ち込んで内部から破壊する技や相手の懐に飛び込んで小柄さを活かした攻撃なども観たかった。
なんでも続編を作る構想はあるらしい。ジェームズ・キャメロンと監督のロバート・ロドリゲスにとっても特別な作品ではあるようだ。二人が原作への思い入れがあって作り上げた作品ではあるが、それを見るファンも自身の思い入れがあるので、こういった映画は評価が難しい。続編はどうなるのか、不安でもあり、少し楽しみでもある。

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