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一水四見

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

フランスでお世話になった大きなお店と最後に働いたオーベルジュ(宿泊施設付きレストラン)では、それまでに使ったことのなかった機器や道具を使う機会に恵まれた。
いまでは日本のレストランでも当たり前のように使われるスチコンや電磁調理器、真空調理機やパコジェット(アイスクリームやソルベを作る機械)などがそうで、目新しい道具や機器が好きなぼくにはとても興味深い厨房だった。

近年、エスプーマなどスペインからはじまった分子ガストロノミーが世界中を席巻し、日本でも最先端の料理を作られているお店では、ぼくは使ったこともなければ実物を見たこともない、物によっては使用目的さえよくわからないような最新調理機器まで導入されていたりする。
こういったものを導入されるのはその便利さもあるだろうけれど、恐らく一流料理人の方々がそれらを使用されるのは、これまでになかった新しい調理法や食感などを生み出すことを目的とされているのだと思う。

ぼくがフランスで触れてきたものは、いまでは目新しいものでなくなったとはいえ、それでも調理機器としてはそれほど昔から一般的にあったものでもない。
ひと昔前も一流のシェフたちは、それらを駆使して新しい調理法や味、食感などを生み出そうとされていた。
いつの時代であっても一流の志向は似ているな、と思う。
これは想像だけれど、初めてスチコンや真空調理機を手にされた一流料理人の方々は、こう考えられたに違いない。

これはすごい。この調理機器があれば、いままでになかった新しい調理法や味を作り出すことが可能になり、お客様を驚かせることができるに違いない

一方、二流のぼくがフランスの厨房で初めて触るスチコンや真空調理機の使い方を教えてもらっているときに考えていたことといえば、こうだった。

これはすごい。この調理機器があれば、少人数のスタッフでフランス料理のファミレスをつくることが本当に可能になるに違いない

ファミレスの厨房を思い出し、そこにスチコンや真空調理機などが設置された情景を思い浮かべたぼくは、きっとほくそ笑んでいたに違いない。


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