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焼き菓子のスゝメ 1.

子供のころ、焼き菓子(洋菓子の)が嫌いだった。

理由は、シンプルに美味しいと思わなかったから。

大きな缶に色んな種類が入っていたけれど、カチカチだったり、モソモソしていたり、臭かったり・・・
子供のときはシナモンの香りがどうにもダメで、美味しい不味いの前に臭いとしか思わなかった。

ぼくが子供のころだから、かなり遠い昔の話。

もしかすると東京や大阪など都会でなら当時から美味しい焼き菓子があったかもしれないけれど、ぼくの故郷である田舎には洋菓子屋さんはあってもフランス菓子屋さんと呼べるお店がなかった時代。

いまでは生菓子と甲乙つけがたいほど焼き菓子が好きだけれど、それはよく言われる大人になって味覚が変わったとかでなく、当時は材料もそれほど良くなかったり技術もいまほど高くなかったからだと思う。
とはいえ、おばあちゃんのお陰でまったく食に興味のなかったぼくにとって焼き菓子は、誕生日やクリスマスに登場するわけでもなければ空腹を満たすものですらない、世の中から消えても何ら困らないものだった。

そんなぼくが焼き菓子の美味しさに気づいたのは、やはりフランス料理屋さんで勉強をはじめデザートやお茶菓子に触れるようになったことがきっかけだった。
さすがに料理と違い、おばあちゃんのせいにすることはなかったけれど、ちゃんとした材料でちゃんと作った焼き菓子は、こんなにも美味しいのかと驚いた。

また子供や学生のころは自分で買うことは皆無で、家族の誰かがお土産などでもらったときくらいしか口にする機会もなかったけれど、勉強のために自分でフランス菓子屋さんのものを買って食べるようになったときには、プロによる焼き菓子の美味しさに感嘆したものだった。

つづく


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