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ドレスコード 後編

昨年の夏、新宿時代からのスタッフが夏休みを利用し京都へ遊びにきていたので、京都スタッフ2人も誘い4人でフランス料理店 ラ・パールデューさんで会食をすることになった。

7月終わりごろの京都といえば溶けそうになるほどの暑さで、ぼくは例年通り短パンで過ごしていた。
この日もずっと短パンでいたけれど集合時間も迫ってきたのでパンツに履き替え、夏用のジャケットを羽織り、集合場所のプチメックOMAKEへと向かった。

東京からきていたスタッフは「西山さん、絶対に短パンでくると思ってた。ジャケットまで着てるし」と、いつものように忌憚なく言ってくれる。けれどもこれから、ぼくらが行こうとしているのはカフェやビストロでなく、レストランである。

ラ・パールデューさんは決して敷居が高くなければ、ドレスコードがあるわけでもない。それにぼくは以前からシェフとも面識がある。
それでもそこは親しき仲にも礼儀ありだし、いくら暑すぎるとはいえレストランという場へ訪れるものとしてのマナーぐらいは、ぼくにだってある。

このときのメンバーに1人、男性スタッフがいた。
彼はとても頭のいい人で、ぼくが彼に対しそう思うのは学があるからということだけでなく、道理をわきまえた人であることもそう印象づけていた。
そんな彼が仕事を終え、少し遅れてやってきた。

今回はみんな大人だし、ぼくがそれを示唆しなくとも大丈夫だろうと思っていたけれど、それは見事外れることになる。
なんと、彼は短パンでやってきた。
ドレスコードなしのお店だし、シェフが嫌な顔をされることもなければ、もちろん入店拒否なんてこともないんだけれど。

ぼくは、ドレスコードがあったとしてもそれは一応の目安だと思っている。
お店やシェフがそこでお客さんを線引きしようとか、ふるいにかけようなんて思われているわけでもない。
またドレスコードに対し、仮にお客さんが「これが俺のスタイル、ポリシーだぜ」とか「ボロは着てても、心は錦」などと思われていたとしても、それは恐らく論点がズレている。

レストランは料理だけでなく、空間やそこで過ごす時間を提供されている。
ひとときであっても同じ空間を共有する他のお客さんへ迷惑をかけないための配慮として、つまりお店のためというよりもその場の雰囲気を壊さないためのルールとしてドレスコードは存在している。多分。
レストランへ集う人たちが気持ちのいい時間を過ごすためにも、そこはお客さん側もやはり汲み取る必要があると思う。もうみんな大人なんだから。

このラ・パールデューさん、現在はシェフが独りでされていること、中心街から少し離れていることもあるけれど、十分すぎるほど行く価値のあるお店だと思う。
このご時世にあの内容と価格には驚かされるし、もちろん技術は高く、味もとても美味しい。特に東京の方だとカリテ・エ・プリ(Qualitè et prix)の良さに驚かれるに違いない。

ぼくは最近、あまり食べもの屋さんをお勧めしないようにしているつもりだけれど、それでも勧めてしまうほど素晴らしいお店だと思います。

La Part Dieu (ラ・パールデュー)
京都府京都市左京区田中里ノ前町59
定休日 月曜日
075-711-7643

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