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ダブルチェック

20221122

火曜日



午前中。

三代目「ランボーさんがやっているフィルムチェックを今後自分に回してください」


回す……?

回してってなんだ。
どの"回す"だ。

①ランボーと交代して三代目がダブルチェックをする。
②ランボーのチェックのあと三代目がトリプルチェックをする。
③ダブルチェックが終わったあと何かするからちょうだい。
④回す


どれなんだい。

三代目が何言ってるのかわからないとはよく聞く。
齟齬を生みやすい人だ。


 わたしに意味が通じてないことを本人に伝えると、
①ランボーと交代して三代目がダブルチェックをする。が正解だった。


わたしがデータ作成してランボーがダブルチェックしてたのを、今後は三代目がやるという。
そして簡単な印刷データも作れるようにしろと殿(社長)から言われて来たらしい。


三代目「殿から(のちに)言われると思うんですけど……」

別に疑ってはないわ。
でも三代目は来年定年を迎える営業の後釜なのでは?
これからどっぷり営業職なのでは???

また殿の思いつきかな。



 殿はわたし以外に印刷やら加工やら諸々のデータを作れる人がいない事にやっと気がついたよう。
いや、気がついてはいたけど、面倒くさくて後回しにしていた。
それは半年ごとの面談の時にものすご〜く感じていた。

「人を入れようと思ってる。ただ、入れりゃあいいってもんでもないからさ、まぁ追々」

こう言った口先だけの面談を何年も飽きずにやってきている。


 わたしは人手不足をベッキー達のように訴えることはない。
社会不適合者と言われようとわたしの考えは一貫している。

「わたしがいなくてデータが作れないってなっても、わたしのせいではない」

時間に追われている時にちょっとしたことで呼ばれたり、便利に使われたりした時に、共感できる人が欲しいとは思うけど、一瞬思うだけ。

基本的にはそういう責任を持つのは経営者だと思っている。

「定年を迎えるまであと10年、この会社で平穏に過ごしたい」ってなったらまた別だけど。




殿「安心だな僕ぁ。後回しにしている問題を後継ぎに任せられるなんて、僕ぁ安心だなぁ」

なーんて思っているかは知らないが、

三代目「Illustratorの操作方法だけ教われば自分、大丈夫っすよ」
とのこと。

何を根拠にダブルチェックする気なのかは謎。
作成者がOKなら僕もOKでーすって意味のダブルチェックなのかもしれない。
歴代の人はみんなそうだった。
ランボーだけは違うが。
でもみんな極端。


 ところで、作業的な知識なしでいいなら金出してIllustratorの初心者講座に行って欲しいと思わんかね。
操作だけなら1日、2日で覚えられる。どうかね。


・・・・・・まぁ、そういうわけにはいかない。


わたし「チェックは寸法も全部見るんですよ?
データの作成時はダブルチェックしてないんで、この段階で初めて第三者が入るんで」

印刷に回す直前の工程まで第三者チェックがないことを未来の社長に伝えた。

三代目「はい、文字とかどうするんですか?」

わたし「フォントですか?
ランボーさんには字の先が丸いか角張ってるか見てくれれば良いとしか言ってません」

ランボーだからルールはシンプルに限る。

三代目「そっか、それはいつしかさんが見てるから大丈夫か」

うん、だから心置きなく講習に行ってくれ。
知識が必要ないならわたしを頼るな。





 三代目が去ったので、来年定年を迎える営業・小町に話を聞いてみた。

わたし「三代目、シール部門で何か遭ったんですか?」

小町「何か遭ったみたいよ」

わたし「あ、そうなんだ。急にこっちのフィルムチェックするって話になったから、
また所属してる所で何か遭って嫌になっちゃったんじゃないかなって」

三代目は他の部署で怒られ、すぐにシール部門に逃げ込んだ。
「自分の万能感が損なわれるくらいならー!」って逃げちゃう人。
だから「知識がないから気付かなかった〜」の余地は残してあげようとは思っている。仕方ねえ、三代目だからね。


小町「嫌にはなってないだろうけど、何か遭ったみたいよ。すごい怒ってるって」

わたし「ふーん」

小町「……大変だよ。あの性格じゃあ」

O「好き勝手やり過ぎだよ。嫌になったら次〜って行って今までのは放り出しちゃうし。
『俺』もう定年だから関係ないもんね」

俺=小町。

小町「んん……」

わたし「現場の人達も言ってた。(三代目が社長になる頃には)自分達いないからって

そうだ。わたしだけではなかった。みんなどうでもいいんだった。

 経営者は社員の愛社精神があって当たり前だと思い込んでいるからずっとダサい。
モテる努力をしない勘違い野郎。
食べ物のシミがついて首のところが汗で黄ばんでアイロンかけずにシワシワなブランドのシャツが勝負服野郎。

言い過ぎた。これは言い過ぎた。





昼前。

 ランボーが現場から戻ってきて、フィルムチェックを渡した。
今後このチェックを三代目がやることになった。

わたし「三代目から聞きました?」

ランボー「はい。よく分からなかったですけど」

三代目は辞めさせたいほどランボーのことが嫌い。
しかしそんなランボーにもよく分からんと言われている。

わたし「わたしも分からなかった。
いつからやるんだかもふわふわしてて、多分またランボーさんにフィルムチェックしてもらう時があると思うんで、ルールとか覚えておいてください」

ランボー「はい」



ランボーこのチェックという作業大好きだったのにな。がっかりしたかな。
聞いたことはないけど。


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