2013年10月6日「太宰治の「水仙」を読んで」
そんなつもりはなかったが太宰治の水仙を読む。色々あって水仙について調べていたら太宰が水仙という名前の小説を書いていたことを知ったのである。
感想は「面白い」である。これはまず間違いなく面白い。筋書きもそれなりにちゃんと物語をしているし、文章そのものの面白さというものもある。(やはり太宰の文体は星新一に似ている)
認められない天才の悲しみというか悲劇と、目の前にいる天才を妬む凡人の気持ち、しかし自分を凡人と考えているほど謙遜であるということが天才の証明なのではないか?という自分が天才であるという考えを完全には捨て去ることができない女々しい気持ち…色々なものがラストの絵を破くところで表現されている。あそこは筋的も劇的だし、火にくべるシーンは詩的といってもいい。単純にあの破られ、燃やされる絵が、凡人のせいで世間に認められることがなかった天才の象徴「というだけではない」ところがいいのだ。
短編ながら味わい深い作品だ
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