雑文と長歌

○雑文

結局のところ…結局のところ…結局のところ…「結局のところ」で始まる言葉が何も書けないということが問題なのだ。
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 最後の最後でいつも仏教に立ち戻ってきてしまう。つまり虚無という重要問題が僕の前に立ちはだかってしまうのだ。

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 何もない街。建物も、道も、人も何もない街。目の前にはただ荒野が広がっている。かつてここが街だったという過去もなければ、いつかはここが街になるという未来もない。それでもここは街だった。ここが間違いなく街であるという確信が僕にはあった。

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 風が吹く。夢が吹き飛ぶ。虫眼鏡の歌。ジャイアントスイング。うちならされるハイアットの音。ミキサー。たくさんの線。マイク。大きな鏡。フローリングの床に落ちた汚れたコンドーム…

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 音のない世界は恐ろしいが、ありすぎる世界もまた恐ろしい。

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 抽象的なことについて語りたい。政治なんか非常にいいと思う。しかし言葉が浮かばない。湖の底にそれなりの分量の言葉が沈んでいることはわかるのだが、それをもぐってひきあげる熱意がない。

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 長歌だ。僕たちは長歌から僕たちはやりなおさなくてはならない。

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○長歌

咲く花を 踏みつけてなお 唇の 端の緩みの その隙間から 零れ落ちたは 大粒の 真珠のような 露は落ち 土を濡らせば そこがいずれ 森の種を 宿すにまさに ふさわしき 枕に髪の 零れおちて 匂いが部屋に 満ち満ちて 星は未だに 赤ん坊 白鷺の火は 燃え盛り 白亀の背は 吉兆を示し 綿毛を飛ばす 息はすぼめた 唇の 奥に縺れた 舌の先で 押し出されれば 雷の 味を覚えた 猿の手の 上に置かれた 果物の 汁を湛えた 割れ鍋を 沸き立たせた 鉄の火が 子供につけた 焼け跡と 二度と消えない 足跡を 封じて埋めた 宝箱の ありかを示した 古い地図を 手にしたはずが 夢のあと 窓から差した 夥しき 蛍の光の 1つでいい 1つでいいと 足をかけ 手を伸ばして 空を目指して 駆けにけり 空を目指して 駆けにけり

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