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「おもてなし」とは何なのか。

「おもてなし」で「対価」を意識してはいけない?


前回「等価交換を意識したサービス」について記事を書きました。

これは「対価を意識したサービス」ともとれるのですが、よく接客を学んでいる専門学校の生徒さんとお話するときに、この話をすると驚かれることがあります。

その理由が「おもてなし」という言葉に隠れているようです。

学校では、おもてなしとは「相手に敬意を持ち、対価を求めない心でもてなす」という意味で教えられている生徒が多いようです。

ポイントは「対価を求めない心」という部分。

将来、接客業に付きたいと専門学校に通う学生には「相手に喜ばれることをしたい」という奉仕の精神のようなものが強い人が多いです。そのため、「対価を求めない心」でと教えられると、お客様の満足の為にはできる限りのことを何でもしなくてはいけないと考える人が多いようです。

もちろん、お客様の満足を得る為には、自分が出来ることの全てをお客様に注ぎ込むくらいの意識が必要です。
しかし、この考え方が問題なのは、最大限のサービスを「無償で」提供しようとすることです。

サービスマンは「接客サービス」という商品を売っている

私達の「接客サービス」は一つの商品です。
それは、どんな形であれ、しっかりと料金をいただいています。前回の「等価交換を意識したサービス」でも書きましたが、私たちが提供するサービスと料金は等価でなくてはいけません。料金を必要以上に高くいただいてもいけませんし、提供するサービスが料金を超えて過度なものになってもいけません。

私は実際の接客教育の現場を見たことがないので、確実とは言えませんが、学校という教育の場では「おもてなし」の真の意味だったり、その言葉に含まれるどういった接客サービスが日本人らしいと外国の方々に認められているのかをしっかりと説明できていないように感じます。

私は「おもてなし」の真の意味とは「一期一会のお客様に対しても、対価を少し超えた心遣いを意識した接客」だと考えています。

ポイントは「対価を少し超えた心遣い」という部分。
接客に対する対価は等価交換を意識しながら、それにちょっと上乗せした接客サービスを提供する。この「ちょっとの上乗せ具合」の絶妙さが日本人特有の接客の上手さで、外国の方からしたら、とても素晴らしいものに見えるのだと思います。

さらにこの「対価を少し超えた心遣い」を初めてお会いするお客様にも意識して実行することが出来るのが、日本人の接客の素晴らしさだと思います。
たとえ常連ではなくとも、まるで身内をもてなすかのように、しっかりと準備しもてなすことができることこそ「おもてなし」の真骨頂だと私は考えます。

「奉仕」という言葉が対人サービスの考えをややこしくする

この「無償のおもてなし論」が広まったのは、おそらく、海外の「チップの文化」との違いを説明する際に「日本ではサービスを提供するものが直接金銭を受け取る事はない」という説明をしていたことから派生したのかなと勝手に推察します。
ただ、その説からいくと日本にも「お心づけ」という文化もあるので、そもそも論として間違っていることになるのですが。

これは蛇足になるのかもしれませんが、保育や介護に関わる方々の給料がなかなか上がらない問題にもこの「無償のおもてなし論」のような考え方が間違って刷り込まれていたからではないかと私は勝手に推測しています。
人の成長や終わりを補助する活動は「奉仕活動」という名でお寺などが無償でやっていたという歴史があります。(正確にはお寺も地域の人々から農作物などをもらっていたと思うので、全くの無償ではないと思います。)
「奉仕」を辞書で調べると「国家・社会や目上の者などのために、私心を捨てて力を尽くすこと。」と出てきます。
人のお世話=奉仕活動という考え方が「私心を捨てて奉仕活動をする人間が、高い給料などを求めてはいけない」という間違った刷り込みをどこかで植え付けてしまったのではないでしょうか。
どちらも命を預かるとても大事で重大なお仕事なので、本来は医者と同じくらいの地位を確保すべき職業だと私は考えています。

そして、「接客サービス」に関わる人達もただの「お給仕さん」ではなく、お客様の大事な時間に関わる重要なお仕事としてもっとその地位を高めていかなくてはいけません。
その時に必要になってくるのは、本当の「おもてなし」の理解と実践になると考えます。

まとめ

この「無償のおもてなし論」「お客様は神様です」の考え方については、一度、自分の意見をまとめておきたいと思っていました。
私の考えとしては「おもてなし」とは「一期一会のお客様に対しても、対価を少し超えた心遣いを意識した接客」であると考えました。
「接客サービス」とは一つの商品であり、商品である以上そこには「等価交換の法則」が働きます。
対人サービスは確かに「奉仕の心」が必要ではあります。
ただそれは私心を捨てて相手に尽くすことであり、自分の商品価値を投げ打ってまで相手に尽くすことではありません。

人の関係に「上下」をつけることが間違っているように、サービスを受ける側と提供する側に上下をつけることも間違いです。

お互いが「対等」な関係にありながらも、接客サービスを提供する側は、「対価を少し超えた心遣い」を意識して接客サービスを提供していきたいものです。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
よろしければコメントにてあなたの「おもてなしの定義」も教えてください。
みなさんの意見が私の学びになります。


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