【感想】silent 第7話
※この記事にはネタバレを含みます。また一週遅れです。
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気持ちをまっすぐに伝えること。難しいことで、それができない人もいる。たぶん、私もそうだ。伝えることによって受ける傷もあれば、それでしか得られない嬉しさもあるだろう。
好きな人に告白する姿は、いつの時代でも美しい。そこには、何よりも「気持ちを伝えよう」と必死になっているからだと思う。その思いに下心や計算がなければなおさら。
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なぜ、紬(川口春奈)は奈々(夏帆)に手話だけで伝えようとしたのか。正確に伝えるなら、機械に頼った方がいいかもしれない。だけど、手話の先生に訳してもらい、手話だけで伝えようとした。
人は、話す内容だけで気持ちを受け取るわけではない。第一印象は3秒で決まる、とよく言われるけど、それだけ気持ちはただ「聞こえる」だけではなく、その人の表情、視線、身振り手振りといった姿勢からも気持ちを受け取るのだ。「バカ」と言えば悪口だけど、それは言っている状況によって随分と印象が違ってくる。
紬は、正しく伝わることよりも、その気持ち自体を受け取ってほしかったのだろう。その方が伝わると思ったのかもしれない。機械を通してしまえば、目を合わせて言葉を聞けない(聞く時間と理解する時間が異なる)。奈々に伝えたい言葉なのに、奈々が持つ世界(≒言語)とは別の言葉を使うことになってしまう。相手のフィールドで会話しなければ伝わらない思いもまた存在するのだ。
そして、図書館で子どもが本を取ってほしいと想(目黒蓮)に言うシーン。言っている言葉は彼に伝わらない。けれど想は子どもを抱きかかえ、一緒に本を探していく。
その声が伝わらなくても、その様子が気持ちを伝える。伝えようとする気持ちがあるから、思いが伝わるのだ。そこに受け入れようとする相手がいるなら、きっと伝わってくれる。
最後、紬の言葉は想に届いていないかもしれない。けれど、その視線と姿勢が、これまで積み重ねてきた会話と関係性が、気持ちを伝える。
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奈々が想に渡した”手話”という世界や気持ち、それらが紬にも渡っていくこと。誰かを大切に思う気持ちが、言葉にされなくとも渡されていく。言葉が大きくて恐れ多いけど、あえてためらわずに言えば、そこには確かに愛情がある。
口に出る言葉がすべてじゃない。いい意味でも悪い意味でも使われることの多い主張だとは思う。それでも信じたい。自分が、その身体を持って確かに聞き取った気持ちを、今度は誰かに渡せるようになりたくて、こうして文章を書いているんだと。
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