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文化人物録49(デビッドマシューズ)

デビッド・マシューズ(ジャズピアニスト、マンハッタン・ジャズ・クインテット、マンハッタン・ジャズ・オーケストラ創設者、2015年)
→マンハッタン・ジャズ・クインテット(MJQ)の創設で知られるジャズピアニスト。大変な親日家で、2013年以降は日本(青森県八戸市)に移住し活動を続けている。グループは結成から40年近くが経過した今も人気が高く、アドリブに加えてアレンジや統一感を重視するジャズアンサンブルの分野で大きな功績を残している。何よりも自身が楽しそうに音楽をする姿は若いころから不変で、聴く側も心が晴れる感じがする・

*MJQ結成30年を前に

・結成30年というのはショッキングなことだ。あと5年、10年と続けるうちに30年となった。あっという間だった。メンバーは交替しているが、今も続けられている。私たちが目指してきたのはハッピージャズだ。ハッピーでエキサイティングなジャズ。メンバーは変わってもサウンドを保ちつつ、私たちも楽しく音楽をやってきた。その結果観客もこれまで楽しんでくれたと思う。


・MJQによりジャズファンのすそ野はかなり広がったと自負しているCDはたくさん出してきたし、レコードもかなりの売り上げがあった。かなりの数のジャズ初心者がジャズの世界に入ってくれた。私もずっと好きな音楽はスイングするジャズで、それをやり続けてこられたのが嬉しい。

・1950~60年代はマイルスデイヴィスやジョンコルトレーン、ソニーロリンズなどがいてジャズの黄金期だった。まさにハッピーミュージックだった。しかしフュージョンが出てきてからジャズは多くの人にとって古臭い音楽になってしまった。さらにオーネットコールマンらがフリージャズをやるようになり、ジャズは観衆にとってますます縮小したように思えた。そこで、私たちはファンクやロック、イージーリスニングなどの凄腕ミュージシャンを集めてハッピージャズ、モダン時代のジャズに戻したかった。それがMJQの結成につながる。

・私はストラヴィンスキーの名言「音楽は音楽以外の何物も表現しない」という言葉が好きで、肝に銘じている。自然の音だろうがオーケストラで表現する音だろうが、音楽は音楽だと思っている。リズムやサウンド、音符が自分の中に存在していたということ。これをメロディ、グルーヴをつけて新しい方法で提示した。一種のハーモニーであり、アレンジメントでもある。編曲の際はメロディ、グルーヴにおいてどんなアプローチが可能かを考える。過去の作品は全く影響しない。ただ過去のものと全く違うものを創り上げたいと思ってきた。人のまねでなく自分の表現を追求するということだ。

・私はジャズ以外のジャンル、特にポップスにも興味がある。アルバムにビリージョエルやポールサイモンの曲を入れたのも、彼らの曲がスタンダードとして歴史の一部になっている。これらの曲もアレンジによってMJQのサウンドになっているはずだ。よく私はクインシージョーンズのようになるともいわれたが、彼は途中でアレンジをやめてプロデューサーに専念するようになった。しかし、私は音楽にしか興味がない。クインシーのように大きなイベントはやらないだろう。

・私にとって日本のファンは特別で、とても重要な国だ。MJQの最初のツアーも日本でやった。いつも熱烈に歓迎してくれるのが日本のファンだ。今後は日本の高校生などアマチュアとの交流もやっていきたい。ジャズに限らず吹奏楽やマーチングバンドなどもいい。私たちの経験をシェアしたいし、これからも今までやってきたことを同じように続けていく。

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