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医療機関の採用DX【これからの医療とDX #12】

今回は「医療機関における採用DX」をテーマに書きます。


採用DXとは

「採用活動にデジタルを導入することで、採用活動の問題点を発見しやすく、再現性を高める方法論」のことをここでは「採用DX」と呼ぶことにします。
採用は、医療機関にとっても重要な要素の一つとなっており、組織の継続と発展に直接関係しています。自院が求める人材を定め、その人材を採用できるように採用オペレーションを設計・運用していくことは、今後のトレンドになっていくだろうと予想しています。

2つの採用活動

採用活動とは「採用という成果につなげるための活動」を指します。例えば、求人公開、採用広報、書類審査、面接審査などがあります。

また、採用活動は大きく2つに分けられます。採用オペレーションと採用ブランディングの2つです。

採用ブランディングとは「候補者に自院を認知・想起・信頼してもらうための活動」です。わかりやすい例としては、採用サイトの構築・運用がそれにあたります。

採用オペレーションとは「採用業務の順番や方法」のことであり、「求人から応募、選考、内定、入職までの各工程での業務とその流れ全体」を指します。
最近では、入職後に職場や業務に慣れるまでのことを「オンボーディング」と呼び、これも採用オペレーションの一部に含む場合もあります。
ちなみに、オンボーディング(on-boarding)は元々「船に乗ること」を意味する言葉で、新入職者が「新しい職場環境」という”船”に乗ることに由来しています。

採用活動の難しさ

みなさんは採用活動のどこに難しさを感じていますでしょうか?
これまでいろんな医療機関の採用に関わってきて、以下のような悩みや課題を聞きました。

- 足りなくなったから採用開始したが、応募が集まらない
- 自院は郊外に位置するので、人が集まりにくいと思っている
- 近くに報酬水準の高い病院があるため、採用活動がうまくいかない
- 自院には対外的に打ち出すアピールポイントはないと思っている
- いろいろな採用サイトに求人を出しているのに応募がない
- 人材紹介会社に依頼しているのに応募も見学もほとんど来ない
- 面接官によって評価が異なるので、採用された人の能力に差がある
- 候補者が増えるほどに、面接官の採用面接の負担が増える
- 内定を出したが、断られてしまうことが続いている
- 入職したはいいが、仕事やチームに合わずにすぐに辞めてしまう

これらの課題は、採用DXを導入すれば手を打つことができるようになります。

採用で再現性を高めていくために

採用で再現性を高めていくためには、どのようにすればいいでしょうか。それを考えるには、「医療」の考え方が参考になります。
医療では、患者がよくなるために治療をおこないます。つまり、「患者アウトカム」につなげるために「治療」をおこなっているわけです。しかし、いきなり「治療」を始めているわけではありません。症状経過や検査結果などの「データ」をみて「診断」し、それに合わせた「治療」を実施しています。また、治療後にもデータをみて評価し、次の治療につなげています。
このサイクルによって、医療は再現性を高めています。

採用においても、同様のサイクルを持てば再現性を高めていくことができます。「データ」をみて「判断」し、それを基に「採用活動」をおこなうことで「採用(成果)」につなげていくという考え方です。

採用DXは、データの持ち方と、その使い方(=判断)を設計・運用し、採用の再現性を高めるための手法とも言えます。
判断するための根拠となるデータを収集・蓄積する必要があります。このデータを後からすべて手入力でExcelにまとめ直すのは実用的ではありません。デジタルツールを導入して、日常業務の中にデジタルで入力する作業を組み込んで、データが日常的に貯まっていく形を設計していくことが必要です。

医療機関の採用でつかえるデジタルツールには以下のようなものがあります。

採用DXのメリット

採用DXを導入することによるメリットには大きく以下の3点があります。

1)問題が発見しやすくなる
2)採用活動の再現性が高まる
3)採用責任者の負担が下げる

まず、採用担当者の感覚的な違和感に、データという客観的な情報が加わることで、問題が発見しやすくなります。わかりやすい例で言えば、応募者数の数の変化、合格率の変化などです。
2つ目は、前述のとおり、採用活動の再現性が上がります。採用活動の再現性が上がれば、成果としての「よい採用」の再現性を高めることにもつながります。
3つ目は、採用責任者の負担を下げることができます。現在、多くの医療機関では、採用責任者および採用担当者が候補者リストをみながら採用可否の判断をしていると思います。ある程度の共通認識に基づいて判断をされていると思いますが、ときに「なんであの人を採用したのか」「採用した人が入職後すぐに辞めてしまう」といったことが起こり、当時の判断について責任を感じてしまうこともあります。これは、採用責任者・担当者の「主観的な判断」による割合が大きいために起こっていると考えます。データと採用基準によって一定割合で客観性を持たせられれば、当事者の負担を下げることができます。

採用DX実践のポイント

DXという言葉をつかうと、デジタルツールを導入さえすればうまくいくと捉える方がいますが、現実には導入だけで改善する部分は半分以下です。
DXで最大限の効果を発揮するには、業務全体の設計と運用を含めて変えていく必要があります。
採用DXにおいては、実践上の2つのポイントがあります。

1つ目のポイントは、採用要件の定義から始めることです。
採用要件とは「その職種・ポジションにおいて求められる条件」のことです。採用要件を明確にして、それに基づいて、採用活動を設計しましょう。
採用要件を設定することで、どのような能力やマインドを有している必要があるか、それらを採用時にどのように評価すればいいかなどを明確にして、関係者で共通認識をもつことができます。

2つ目のポイントは、採用活動の進捗管理を徹底することです。
採用活動は、求人公開から面接、内定、入社まで多くの工程があり、各工程によって関わる人も異なるのが通常です。どの工程でどのような状況にあるのか、どの候補者と誰が面接をおこなったのか、どの候補者に内定を出したのかなど、ファクトを確実に保存し、進捗を管理することで、自院の手落ちによって大事な候補者を逃すことを回避できます。
実際に、採用活動を適切に進捗管理すると、採用活動上の重要な抜け漏れや、採用時に評価すべき能力を実際には確認すらしていなかった事実にいくつも気づきます。


今回は採用DXについて解説しました。採用で悩んでいない医療機関はほとんどないと思いますが、それに対してどこから取り組んだらいいかわからないということも多いのではないでしょうか。
自院の採用活動に少しでもお役立ていただければ嬉しいです。


以下の本や資料などを参考にしています。
1)採用に強い会社は何をしているか ~52の事例から読み解く採用の原理原則
 私の採用の師匠である青田努さんの本です。採用のバイブル本。
2)採用を体系的に学ぶ会
 私もここで採用の基本を学びました。オススメです。


株式会社DTGでは、医療機関のDXや組織・人事のコンサルティング、マネジメント研修を提供しています。
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