【ショートショート】アランニットの下の隠し事

あのお揃いのネックレスを無くしたのはいつだったろう。
どうしても思い出せない。
いつの間にか無くなっていたのだ。
半狂乱になって部屋中を探し回ったが見つけることは出来なかった。
仕方なしに僕は似たようなネックレスを買い求め、首から下げているが、ネックレスの先に付いているペンダントはまったく別のものだった。

僕のそのペンダントはアランニットの下に隠れてはいたが、彼女の視線が僕の首元のネックレスに向けられる度にいつだってヒヤリとした。
衣服と胸の間にぶら下がっている隠し事は僕の心臓の鼓動を聞いていただろう。

嗚呼、僕は彼女の恐ろしい目を見据えながら、真実を告白出来るだろうか?
勇気というものは時が経つほどに小さくなっていく!

彼女に会うのだ。
そして、即座に話すのだ。
失敗か成功か、苦痛か快楽か、損害か利得か。
そういったものを意に介しちゃいけない。
「即座」に「真実」を話すことだ。

窓外に目をやるとペンダントの色によく似た銀杏並木が青空の中で黄金色に光っていた。

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