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めっちゃ昆虫展(2023/6/25まで開催)

1.初めに

 おはようございます。こんにちは。こんばんは。IWAOです。2023/5/20と2023/6/3の2日で、めっちゃ昆虫展へと行ってきました。ひらかたパークにて開催された期間限定の昆虫展示イベントです。今回は、この昆虫イベントで面白かったことについて説明していきます。どうぞ、よろしくお願いします。

2.構成

 パネル展示、拡大模型、標本が展示物の中心となっていました。また、パネル展示は、文字での解説だけでなく、拡大写真を使い、昆虫の体の徳地王をより見やすくするなどの工夫がなされていました。一部、生体が展示されています。
 全9章で展示が構成がされており、その中で、最も印象に残った展示や是非、見てほしい展示についてここでは解説します。

3.多様性の宝庫、昆虫ー昆虫は虫の惑星

 ここでは、そもそも「昆虫」とは何者か世界中にどのような昆虫がいるのかということについて解説されています。

来館した最初に私達を迎えてくれるのは、ヘラクレスオオカブトです。
ずっとゼリーを食べていました。

 皆さん、「昆虫、あるいは、虫」と聞いて、イメージするのは、どういうものでしょうか?私は、カブトムシやクワガタです。人によっては、カマキリやコオロギ、クモ、ムカデ…などと様々な虫をイメージされると思います。では、分類学的な意味での「昆虫、あるいは、虫」とはどういうものでしょうか?
 まず、昆虫は、「動物界節足動物門六脚亜門(上綱)昆虫網」に分類されるものになります。これだけで分かることはないと思いますし、私でも混乱します。つまり、見てわかる昆虫の特徴を説明します。まず、①足が6本になります。そして、②体節(体の板にあたる部分)は、3つとなり、「頭部、胸部(*この胸部分も3つに分かれます。)、腹部」になります。さらに、③翅があり、その翅も4枚で構成されています。

昆虫の形を図でまとめるとこんな感じです。
我が家のヒラタクワガタにモデルになってもらいました。
一度も噛んでこないとてもいい子です。
翅は、前に畳み、飛ぶときに後ろの翅を広げます。

 以上3つが、昆虫の特徴となります。昆虫と同じように扱われるムカデやヤスデ、クモやサソリは、先程記述された形をしているかというと、していません。ムカデやヤスデは、「多足類」に分類され、クモやサソリは、「夾角類」に分類されます。つまり、昆虫には、分類されることはありません。
 ここで疑問に思った方がいるかもしれません。「クモやヤスデ(*他も含む)は、何故、虫と呼ばれてるのか?」ということではないでしょうか?結論は、日本での古来の呼ばれ方が使われたからです。日本では、魚、鳥、哺乳類などの動物を除く動物に対して、「虫または、蟲」という名称が使われていました。つまり、文化的な理由であり、虫という名称が、そのまま使われてきたということになります。

 世界中に昆虫がどれだけいるか、そして、どのような昆虫がいるのかについて標本を使って説明されていました。昆虫は、世界中に生息しており、分類が分かっているだけで、全生物の約6割が昆虫で占められるほど、色んな場所に進出し、反映している生物になります。地球は、昆虫の星と言ってもいいくらいに昆虫だらけです。

カブトムシでの比較です。
セミ、ナナフシでの比較です。

 特に、ここの標本での比較は、日本の虫と外国の虫を比較するように展示されています。私は、カブトムシやクワガタをそこそこ見ている方なので、「やっぱり、これくらい大きいよな」と分かります。しかし、ナナフシやセミだと、何倍も大きいです。よって、「エっ⁉こんなにでかいの⁉」と驚かざるをえません。ほぼほぼすべてが、日本と外国のものの比較になっており、世界は広いなと思わされました。
 他の標本では、「変な昆虫」として、奇妙で摩訶不思議な姿をした昆虫が展示されています。その中で注目してほしいのが、「ツノゼミ」になります。名前の通り、頭に角が生えており、体長は、1㎝もない非常に小さなセミになります。角の形も非常にバリエーション豊かなものになっています。そして、ツノゼミ最大の魅力は、「角がどう使われているのかよく分からない」ということになります。カブトムシの場合、闘争に使用することは、観察や動かし方によって、分かります。しかし、ツノゼミは、どう見ても闘争には向いてないのがある上、どう見ても、使い方が分からないものもあります。実際に観察した例もあり、そこでは、メスを獲得するための手段などではないかと考えられます。ただ、私個人が感じたこととしましては、「ツノゼミは、何故ここまで様々な角を持つものができたのか?」ということです。ここまで角の形が違うということは、生きている環境が違うことに起因しているのではないかと考えています。つまり、「ツノゼミの進化は、どのようなものだったのか」ということについて不思議に思いました。

ここで展示されていたツノゼミの標本です。
比較に2種並べました。角のたちが全く似てないことが分かります。

 ここでは、ゴキブリも展示されており、そのゴキブリは、生体として展示されています。皆さんは、ゴキブリというと、「カサカサして黒くてピューっと移動するものと思っていると思われます。」しかし、そのイメージ通りではないゴキブリもいます。つまり、のろいゴキブリがいるということです。ここでは、「あなたのしらないG」というタイトルで、世界のゴキブリが展示されており、あまりカサカサせず、じっとするものが多かったです。じっとするものばかりでなく、意外に模様があり、バリエーション豊かなゴキブリもいます。ここから分かるのは、家から出てほしくないゴキブリは、ゴキブリのホンの一部でしかないということです。

これは、ジャイアントウッドゴキブリです。
ヤシガラに擬態し、じっとしていました。
ドミノゴキブリになります。
ハテナゴキブリになります。

4.昆虫の生きる世界

 ここでは、昆虫たちがどのようにして生きているのか、どのようにして世界を見ているのかについて解説されています。
 まずは、「擬態」について紹介されました。昆虫の中には、周りの風景に紛れて、自身の正体を隠すものがいます。その理由は、様々で、身を守るため、あるいは、獲物を捕まえるためなどです。ここでは、大きい風景写真があり、そこに何匹、隠れているのかが、クイズ形式になっています。以外に多くの虫が隠れていました。また、生体も展示されており、実際に生きているものを見ることで、「あぁ、こうやって隠れているんだ」とイメージすることができます。

ハナカマキリになります。
こちらがヒシムネカレハカマキリになります。
こちらは、枝と上手く擬態していますね。

 ここで特に注目してほしいのは、「モンシロチョウの世界」です。皆さんは、周りをどのように見ているでしょうか?当然、目で見るものが中心になります。つまり、目で見たものの形、色からどのような風景をしているのか、動いているものが何かを認識しています。しかし、モンシロチョウは、そうではありません。モンシロチョウも目で周りの情報を得ていますが、彼らが見ているものは、「紫外線」です。特に、モンシロチョウのオスは、紫外線を基にして雌雄を見分けています。つまり、虫たちが見えている世界と私達たちが見ている世界は、根本的に違うものであるということが分かります。
 また、ここでは、紫外線でモンシロチョウを見た映像が流れます。よって、モンシロチョウがどのように世界を見ているのかを体験することができます。

赤外線で見ると、オスメスの違いは、一目瞭然です。

5.昆虫って、すごい

 ここでは、昆虫たちが生きていく上で手に入れた技術や武器についての展示となり、私達もその恩恵を受けていることが解説されています。 
 最初に、私が、面白いなと感じたのは、昆虫の触覚になります。下の図は、昆虫の触覚だけを拡大した模型になります。これだけで、昆虫の触覚の多さが分かります。では、このように大きな形の違いは、何故、生まれたのでしょうか?それは、「求めている情報の違い」に原因があります。ガの場合は、異性のフェロモンを嗅ぎ取るためにある一方、クワガタの場合は、樹液の匂いを見つけるためにあります。ここでは、匂いを求めますが、他にも振動を感じ取るためにも使います。昆虫も当然、「目」を持ち、目から情報を得ていますが、「視覚」以外の情報も大事な情報であり、視覚以外で得るべき情報を得るために触覚が発達したのではないかと私は、考えました。

左の奥から、ガ、チョウ、ノコギリクワガタ、ショウリョウバッタです。

 次に面白いなと思った展示は、「バイオミメティクス(昆虫、ミメティック)」です。つまり、昆虫の持つ体の構造や昆虫が持つ技術を人間の技術力へ応用するというものです。昆虫の持つ体の構造が、どのように我々人間社会へ応用されているのかが展示されていました。
 まずは、「ネイチャーウイング」になります。これは、「アサギマダラ」というチョウの体の構造をもとに作られた扇風機になります。このアサギマダラ特徴は、「長旅をするチョウ」であることになります。このアサギマダラは、北は北海道、南は台湾や中国南部まで飛来することのあるチョウになります。では、このチョウの長旅のできる要因は、どこにあるのかと考えた時に、羽の構造に原因があり、その理由は、2つになります。

こちらが、アサギマダラの羽を基にして作られた扇風機になります。

 一つ目は、「翅がくびれてること」になります。翅がくびれていることで、羽の枚数が実質的に増えます。羽の枚数を増やしても送れる風の量は増やせますが、それでは、消費エネルギー、つまり、消費電力が多くなるというデメリットになります。翅がくびれることで、羽の枚数を増やすことなく、風量を増やす事ができるというアサギマダラの体の構造を上手く取り入れました。

左がアサギマダラ、右がオオムラサキ
(*左:大阪自然史博物館、右:めっちゃ昆虫展にて撮影)


左がアサギマダラ、右がオオムラサキのつもりで作りました。
実際に扇風機が回転すると上の図のように見えます。
つまり、2つ面が回転するように見えます。

 2つ目は、「飛ぶときに翅がねじれていること」です。翅を横から見た時、一直線になっていないということです。翅にねじれがあることで、風の通り道を滑らかにし、効率よく風を送ります。

左がアサギマダラ、右が一般的なチョウをイメージして作りました。
普通の扇風機の翅と比べると、形が違うことが分かります。

 以上の2点、「羽がくびれ、ねじれる」ことで、羽を一振りすることで飛べる距離を伸ばしていることが分かります。アサギマダラの長距離移動の原動力を基に涼しく快適な生活を送ることができます。
 次は、「モスマイト」になります。これは、ガの眼をもとにして作成された低反射フィルムになります。ガの多くは、夜行性で、夜に活動するには、僅かな光を多く吸収しなければなりません。その時に、効率よく光を吸収するためのガの体の構造が、「モスアイ」になります。ガの眼は、凹凸があり、その凹凸が光の反射を抑えます。つまり、体に入る光を逃がすことなく取り入れるための工夫になります。

モスアイを持つガです。
左が何もないガラス面、右が、モスマイトを持ったガラス面
(*展示パネルをもとに作成)
写真では分かりづらいかもしれませんが、実際に見てみると、
モスマイトのフィルムは、全く反射しません。

 この「モスマイト」は、光で反射することがないため、私たちの実生活にも役に立ちます。例えば、カーナビや医療用モニターなどが該当します。外であるいは強力な光が出る所で使用されるため、反射が抑えられ、本来の仕事に集中しやすくなることが挙げられます。
 この「バイオミメティクス(昆虫、ミメティック)」では、他にも昆虫たちの構造や技術がどのように応用されたのかの展示が紹介されています。私は、この展示をよく見てほしいと思います。生物多様性を守る理由の一番わかりやすい事例になっていると思います。

6.昆虫と私達

 ここは、私たち人間が、どのようにして昆虫を利用してきたのかを紹介しています。主に、「文化」、「食」、「暮らし」の3点で、解説されています。
 まずは、「文化」という面では、「鳴虫」としての利用が紹介されています。コオロギ、鈴虫のような鳴虫の音声が流れ、実際に鳴虫の飼育で使用されていた民具が展示されています。現在、虫の鳴き声を聞いて楽しむ風習があるのは、日本と中国などと限られているそうです。
 また、日本は、昆虫との関係も深いです。ここでは、「歌」の解説がされており、『万葉集』では、昆虫の鳴き声を歌にしたものがあり、歴史は深いことが分かります。また、平安時代には、昆虫の選別や声や姿を競う娯楽が、貴族で流行り、江戸時代で、鈴虫が飼育され、どのように繁殖するのかの技術が確立していたそうです。これで、「娯楽」という面で、昆虫と日本の関係が深いことが分かります。

コオロギのような鳴虫をいれるためのかごです。
日本のものと中国のものが展示されていました。

*今回の展示とは関係ありませんが、下の土器圧痕と言われる土器の穴のようなものからも虫が見つかることがります。この土器圧痕では、コクゾウムシがよく見つかります。また、意図的に土器を作る時にコクゾウムシを入れたのではないかとも考えられています。もしかしたら、先史時代にまで虫とのつながりがさかのぼる可能性があります。

写真は、種子の痕ですが、昆虫の跡も出てきます。
(*朝日遺跡ミュージアムにて撮影)

 次は、昆虫食になります。ここでは、日本のものだけでなく、外国では、どのような昆虫が食べられているのかということも合わせて紹介されており、東南アジアと南アフリカの昆虫食が展示されていました。この3つの展示で面白いなと感じたのは、「同じだが違う」ということです。
 国が違うから、食べる対象となる昆虫も違うと思ったのですが、以外と共通する所がありました。特に、東南アジアの昆虫食は、日本のものとの共通する点が多かったと感じました。日本だと、イナゴやハチが昆虫食の中心になりますが、東南アジアでは、タガメ、ガムシなどが加わり、レパートリーがさらに広かったです。特に、日本と東南アジアは、稲作ということもあり、水田やその近辺に生息する虫が食卓に上がりやすく、その結果、共通した昆虫が食べられるようになったと考えます。ただ、南部アフリカでは、モパニワームが食べられており、これは、カラフルで大きいイモムシです。私個人としては、日本で食される昆虫は、不完全変態系の虫が多い傾向にあり、でかいイモムシを食べることは、あまり聞いたことがないため、南部アフリカの昆虫食は、日本のものとの大きな違いになると感じました。

こちらが日本の食卓に並ぶ昆虫です。
私は、イナゴとハチはよく食べましたし、めちゃくちゃ上手かったです。
こちらが、東南アジアの昆虫食です。
こちらが、南アフリカの昆虫食です。
モパニワームの模型です。

 ここの展示を見た時に、何故、昆虫食が大きく批判されるのかの理由も感じ、それは、3点あげられます。
 1つ目は、「昆虫を食べていることに慣れているのか」という点です。つまり、その個人の経験に大きく左右されるということです。私は、上に書いたようにイナゴやハチを食べたことがあるため、過去に食べたことのある、あるいは似たようなものは、抵抗なく食べることができます。しかし、モパニワームのような大きなイモムシが食べれることは、詳しくは知らなかった上、食べた経験がありません。そのため、実際に見た時に、「これは食いたくない」と正直、思いました。後述することにもなりますが、昆虫は別として、「カタツムリを食べたいですか?」と言われた時は、どう答えますか?これこそ、食べたことのある人、ない人で答えは変わるはずです。
 2つ目は、「食生活の変化」という点です。へんな生き物チャンネルさんで、実は、昆虫は昔の日本では、意外にも当たり前のように食べられていたことが紹介されてます。しかし、戦後の日本では、食料の輸入、食の欧米化により、私たちが食べるものも大きく変化し、昆虫自体も食べることが減るあるいはなくなりました。私も昆虫を食べていたとは言いましたが、たまに違ったものを食べるという程度でした。イナゴの佃煮とかも道の駅で売られてますが、結構高いです。つまり、「高額な郷土料理」となったと感じます。まして、食べたことのないもの、よく知らないものに対しての抵抗は強く、「食べて大丈夫か?」不安や疑問になってしまっていると思います。

 3つ目は、「価値観の変化、虫への偏見」という点です。そもそも「虫=下劣な生物、気持ち悪い」などと他の生き物の比べると見下していることが挙げられます。現在は、食生活の変化に加え、自然に触れる機会が減ってしまい、昆虫についてよく知らない人たちも多くいるでしょう。つまり、食生活の変化と自然に触れないことが、さらに昆虫が利用に適さないと世間に認識されるようになっていると感じます。昆虫食が叩かれ、批判される根本は、ここにあるのではないかと思います。
 ただ、価値観の違いは、文化との違いとも共通すると言えます。昆虫食が叩かれましたが、実際に他の生き物でも似たようなことは起きえると思います。私が過去に書いた『外来種は食べて解決できるか?』では、アフリカマイマイやジャンボタニシについて書きました。これは、結局、「カタツムリを食べる」ということです。これらは日本に食用目的で輸入されても利用されなくなったことに「日本人にはカタツムリが合わなかった」ことが理由の一つになります。そもそも、日本でカタツムリを利用する文化がないこともその根本の理由になります。仮に、10年後に政府が、カタツムリを食べることを奨励したら、同じように批判やバッシングが起きると思います。つまり、昆虫というものに対する価値観が変わったことや奇怪なものと見下されていることが、昆虫食へのバッシングの根底にあると思います。
 日本が、昆虫食を普及させたいのなら、ただただ「コスパがいい」「栄養がいい」というメリットのみを強調するだけでは限界だと思います。世間の意識を形成している根源的な所は、どこにあるのかを見なければならないと思います。

 最後は、「暮らし」での利用、「カイコ」になります。5000年前に以上前にクワコを家畜化することで、生まれた虫で、カイコが作る糸(生糸)を私たちの生活に利用していますし、利用していました。また、日本では、カイコによって経済が支えられていた時代がありました。明治~昭和前期の日本は、外国への主要輸出品で、外貨を獲得していました。しかし、最大の輸出先であったアメリカが世界恐慌によって娯楽品である生糸は、輸入が亡くなり、それ以降下火になりました。
 私の祖父母は、カイコの飼育経験があったことを教えてくれました。実際は、学校での理科の実習としての扱いだったそうですが、祖父母の上の代は、確実に家でカイコを飼育していたと言っていました。2階で、カイコの部屋を持ち、温めていたそうです。また、私は、地域の歴史博物館に行くことがありますが、各地でカイコを飼育していたことが多く語られます。

カイコの模型です。

 私が、カイコで注目したのは、「品種が1900種」「利用先を開拓中」という点です。
 「品種が1900種」では、各地域で多く利用されていましたが、その地域ごとに合わせて品種が改良されていたということです。真ん丸な繭を作るもの、くびれた繭を作るもの、黄色い糸を作るもの…などと非常に多くのカイコがあり、驚きました。つまり、日本のカイコそのものと利用のありかたが非常に多様だったことの表れであると言えます。ただ、現在は、養蚕を営んでいる業者が非常に少ないです。このままでは、各地域で作られたカイコが絶滅してしまいます。よって、農研機構で、ジーンバンク事業の一環でカイコが保存されています。

これが、日本のカイコです。
イメージと違うものもあり、こんなものもあるのかと驚きます。

 次の「利用先を開拓中」では、目的に合わせてカイコが改良されています。その一例が、「光る生糸」になり、遺伝子組み換えによって、クラゲやサンゴの遺伝子を持った生糸が作られるようになりました。遺伝子改良などを中心に、現在は、医療用ガーゼ、人工血管のような医療用分野で活躍できるものが作られています。カイコは、現在、織物以外で利用されるように進出先が広がってます。

これが、遺伝子を改良して作られたカイコになります。

 私は、カイコというと、高級な織物の素材として利用され、特に日本では、主要輸出品であったことから、日本の歴史を作ってきた、つまり、歴史の遺産のイメージが強かったのです。しかし、遺伝子改良を中心に新たな利用も模索されています。つまり、カイコとは、「歴史を繋ぎ、未来を拓く昆虫」、過去と未来を同時に見ることのできる優れものである生き物だと思います。

7.オオムラサキ

 今回のめっちゃ昆虫展の目玉展示は、このオオムラサキになります。オオムラサキとは、何者かという紹介だけでなく、生体であるオオムラサキが展示されています。また、「チョウと結婚した男林太郎」さんというチョウの紹介をされているYouTuberさんとのコラボ企画になり、林太郎さんが、このオオムラサキの生体展示を監修されました。また、私が来館した時の2回目で林太郎さんに会うことができ、オオムラサキについて色々教えてもらい、非常に勉強になりました。

 まず、オオムラサキは、タテハチョウ科に分類され、その中で日本最大のチョウになります。生息地は、主に日本の里山になり、主に6月~8月に成虫として姿を見せます。一方、幼虫は、秋から春までにエノキの葉を食べ、冬を越し、夏が近づくと成虫になります。こう見ると、カブトムシのような生態になっているなと感じます。オスは、鮮やかな紫色をしていますが、メスは、黒っぽい色をし、オスよりも大きいため、雌雄の違いは、非常にわかりやすいです。
 また、オオムラサキは、日本昆虫学会によって「日本の国蝶」に選定されています。そのきっかけは、「1956年に郵便切手にオオムラサキが使用されたこと」であり、その前からミカドアゲハ、アゲハチョウ、ギフチョウなどと候補が多くありましたが、中々決まらない中で選ばれました。

オオムラサキですが、赤丸のように前足を畳んでいます。
このような所が、オオムラサキを含めたタテハチョウ科の仲間の特徴です。
こちらが、オオムラサキのオスです。
こちらが、オオムラサキのメスです。

 ここでの生体展示で面白かったと思う点は、「時期ごとでも違いつつ様々な姿のオオムラサキが見れる」ということです。めっちゃ昆虫展が開催した時は、3月中旬で、オオムラサキの全てが幼虫で、冬眠のために茶色っぽくなっていたのを耳にしました。
 ただ、私が来館した時は、「幼虫→サナギ→成虫」への移行期だったため、卵以外の全てのオオムラサキをその場で見ることができました。実際の自然界では、中々見ることのできないものが見れました。

オオムラサキの幼虫です。終齢です。
オオムラサキのサナギです。

 本物のオオムラサキを見て、感じた点は、主に3点あります。
 1つ目は、「非常にパワー系」です。オオムラサキというときれいなチョウと思う人もいるますが、かなり気性の荒いチョウとしても有名で、樹液を巡ってオオスズメバチだけでなく、カブトムシやクワガタともバッチバチに争います。そして、飛ぶときのスピードも速いです。
 下の写真のように展示スペースの上にいるものが多かったのですが、そのオオムラサキが羽ばたいている時に指を近づける時の風を感じました。羽ばたく力が強いため、力の強いチョウだと感じました。

光を浴びて、体を温めているそうです。
私は、このオオムラサキに触っていないので安心してください。

 2つ目は、「サナギが、イメージするものと大きく違うこと」です。まず、サナギというと、頭を上に向けて、左右にたまにくねくねするものが一般的なものだと思います。しかし、オオムラサキのサナギは、頭が真下にあり、天敵が来たときは、体を上下左右に激しく揺り動かし、ブルブルと音が聞こえます。一般的なチョウのサナギは、頭を上にするが故、固定する部分が多くなり、あまり動き回れないと思いますが、オオムラサキは、お尻の一か所のみ固定しているため、動きをとるのにスペースが大きいため、激しい動きができると感じました。人間が近くに来た時に、驚かすために激しく揺り動かす所が見れました。

図にするとこんな感じです。

*下の動画の3:49でこの様子が見れます。


 3つ目は、「時期が違うとみられるものが大きく変わる」です。2023/5/20と2023/6/3の2日で来たのですが、この2週間で「エッ⁉こんなに違うの⁉」と思うくらい見れたものが違いました。まず、5/20に来館した時は、成虫が羽化していましたが、2匹のみで、そのほとんどが、サナギ、一部が幼虫という状態でした。私は、本物のオオムラサキが見れてその時は、満足できました。ただ、もう一度来館した時は、20匹近くのオオムラサキが羽化し、一部サナギと幼虫が残っていました。その時、全体的に見た感じだと、オスの方が多かったです。オオムラサキは、オスの方が羽化が早く、先にメスを捕まえようとする傾向にあるため、羽化時期に差があり、丁度その時期を体験できる時に来館できました。つまり、オオムラサキの生態を生で見ることができる時に来館でき、非常に運が良かったです。
 他にも、見るべき点は何点かあります。野生のオオムラサキは、樹液を飲んでいますが、ここでは、カルピスを飲んでおり、それにバナナを混ぜたものを与えています。つまり、実際の食事を見ることができます。

バナナに穴があり、吻を刺して飲んでいたのでしょうか。

 エサ木であるエノキには、天敵である「エノキクタアブラムシ」という虫がいます。そのアブラムシを退治するためにアブラムシの天敵であるテントウムシがつれてこられました。「生物防除」の生の現場を見ることができました。

この白いものが、「エノキクタアブラムシ」になります。
連れてこられたテントウムシです。

 以上が、オオムラサキについての解説になります。私も、野生のオオムラサキを一回だけ見たことがあり、それ以来何年ぶりという機会でした。ここに書かれているのは、私が、その時に見たオオムラサキの姿です。あなたが、オオムラサキに会いに行った時には、見せてくれるものが全く違うものになっていると思います。

8.まとめ

 以上が、めっちゃ昆虫展の解説でした。昆虫とは何者か、私達とどのように関係しているのかなど、幅広いテーマを扱っており、虫について全く知らない人でも解り易く展示が構成され、詳しく知っている人は、「これは、こうだな」とより深みに入る展示にもなっていたと思います。また、一番面白かったのは、オオムラサキでした。特に、監修された林太郎さんに実際に会うことができ、オオムラサキは、どのような昆虫なのかを実物を見せて教えてくれたため、非常に勉強になりました。実際に展示を作られた方による解説は、深みがあり、刺激も強かったです。林太郎さんがいらっしゃる時に来館することを強くお勧めします。
 また、この展示に関西の昆虫展や博物館が多く協力しています。その中の一部である伊丹市公園昆虫館と箕面公園昆虫館には、実際に来館しました。どちらも面白く、見ごたえのある展示が多いです。めっちゃ昆虫展をきっかけに協力した展示に行くのもいいと思います。そして、このめっちゃ昆虫展は、2023/6/25まで開催されています。これを完成させるのに開催期間内にできました。もし、まだ来館してないという方がいましたら、めっちゃ昆虫展にも来館してもらえると嬉しい限りです。

 以上が、めっちゃ昆虫展の解説となります。ここまで読んでくださり、大変ありがとうございました。


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