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ナーロッパについて真面目に考える。

ベランダ側の足場撤去が思いの外進んで、外をうろつく知らない工事のおじちゃんたちもいなければ、壁面にかけられていた飛散物を防ぐ布もなくなりました。久しぶりに落ち着いて日向ぼっこできる状況に戻り、猫たちも嬉しそうです。ずっと窓際にいますね。

足場から見えないようカーテン閉めてたから久々に堪能

でもまだ土はタイミング会わず実家に取りに行けてないので、アガベの植え替えはできない…月曜に行く予定です。うぐぐ。なので、この週末は一部の植物棚と植物を外に出す作業に勤しみます。

いや、ベランダそろそろフルで使っていいんだよね、もう…?(特に管理組合側からベランダ側工事完全終了の布告などないため、マンション中がそろそろ終わったんだよね、いいんだよね…?とソワついてそうなやつ)

そんなこんなで、今回は曰く創作における「ナーロッパ」とかいう、「日本人がモヤッと妄想している、中世ヨーロッパっぽく見せかけておきながら全く中世でもヨーロッパでもない、魔法やら魔界などの概念や、地球の現代社会並みの高レベル規範や文化がある、謎のファンタジック異世界」について考えてみようかなと思います。

今回も無駄に長いぞ!記事2回分くらいの文字数書いたぞ!


そもそも、ナーロッパとは。


ここで私が言うナーロッパとは、「小説家になろう」などの小説投稿サイトやその商業出版された単行本でよく使われている、「日本人が想定している、中世ヨーロッパ的なイメージにインスパイアされた、剣と魔法の世界観」を雑にまとめて言っています。

あと、私は普通にナーロッパ舞台の作品を好きで読んだりもするので、「ナーロッパ」という表現をもってこれを貶めたい、みたいな意図も全くないことを、まず先に述べておきたいと思います。

というか、この「そういうフワッとした一連の世界観」に対してまだ名前がついてなかったところに、うまいこと「ナーロッパ」という単語がようやく当てられたので、便利に使わせて頂こうという次第です。

それでですね、このナーロッパ。もはや「なろうという小説サイト」のみならず、もう「ライトノベルな小説を読む日本人の脳内に初期アプリとしてインストールされている洋風ファンタジー異世界のテンプレート」となってしまった感があるわけですね。なろうでない他の小説サイトでもこの世界観のものが多いですし。

以前「フリーレンはレベルの概念とかないし、なろうっぽくなくて新しいファンタジー」みたいな感想をどこかで拝見しまして、おう…まじか…となってしまいまして。そっか、なろう作品から入って見馴れてるとむしろフリーレンは「新しい」んだ…そうなんだ…とカルチャーショックを受けたというか。ババア的にはなろうの方が新しいという認識だったから。

フリーレンは「伝統的なハイファンタジー~死んだ愛され勇者と仲間たちと、テンポに今時感を添えて~」の認識でした。昭和的な純喫茶が若者に新しい!思われたりクリームソーダに緑以外の色が現れて映えてる状況と似てる気がする…。


何十年も前から「剣と魔法のファンタジーの物語」は日本にあった。


なろうのサイトができる前から、普通に世の中には「中世ヨーロッパっぽい世界の剣と魔法のファンタジーの物語」はあったわけです。

私が30年以上前にティーンズハートとかコバルトの少女向けライトノベルを読んでいた時点で「龍と冒険する話」とか「現代日本から違う世界に行く話」とか「ヨーロッパやら中華風な世界観でお姫様が恋したりお嫁さんになったり嫁ぎ先で苦労する話」みたいなものは既にありましたし、40年くらい前ヨーロッパからやってきたテーブルトークRPGというルールブックやカードや小物を使ったゲーム→ロードス島戦記というゲームのリプレイの小説化があって、その後ドラクエやFFなどのテレビゲームも出ていたわけですね。

私は「マリーのアトリエ」というゲームのアトリエシリーズの元祖が好きで発売当時からやっていたわけですが、もうこの時点で「ヨーロッパ風の町並みと文化と王政国家」と「錬金術師が通う学園」と「レベルとHPやMPと前衛後衛のバトル形態」は存在していたのです。

1997年に出たゲーム、つまりもう約25年前には男性向け女性向け関係なく、「なんかヨーロッパっぽくて王様や貴族がいる国で、学園作るほどの教育の概念があって、魔法とかもあるしモンスターもいるし、冒険者もいて依頼を受けるギルドや酒場や宿屋もあるし、レベルで人が成長していく世界」みたいな、そういう「基本型みたいなもの」はできていたんだと思われます。

ただ、まだ「萌え」はなかったですね。マリーも今でこそキャラデザで胸…と一部の人に言われますが、正直全く男性向けゲームじゃなかったというか。エロっていうより「健康的な肌見せ」の方だし(その肌見せにエロさを感じる者はいる、というのはあるものの)。マリー出た時点では「なんだ、女向け単純ゲーかよ」と思った男性ゲーマーばかりだったのでは。だってボタンを押すだけで戦闘も錬金の調合もできるので、簡易過ぎてバトル好きの男子には全然つまんないやね。

ここ最近、特にロロナの魔法少女風とかライザの健康的太ももあたりから、キャラデザでの野郎釣りが増えたと思います。あと、百合釣りみたいなものも。

女性向け的な萌えも、マリーの段階では「王子と知り合う」という展開自体はマリーのシナリオにもあるわけですが、彼と恋愛からの溺愛とかは別にない。一部の男性・女性キャラと仲良くなるイベントはあるけど、がっつりいちゃつくわけでもなく。恋愛要素があるキャラもいたけど、そこまでそれがメインとして描かれるわけでもないし。どちらかというと友情メイン、友達のために頑張る展開強めだった気がする。

男性向けのゲームも夫がやるから横でストーリー追って見てましたが、言うほど昔はハーレム展開などもなかったし。男性向けのエロゲやヒロイン選ぶ系のビジュアルノベルゲームや女性向けのネオロマンスからの流れが他のゲームや小説や漫画にも波及してから、ですかね。

「あなたはどっちのヒロイン・ヒーローがいいです?」みたいな派閥的な思考は複数キャラがいる恋愛漫画・小説などでは昔から定番的にありましたが、ゲームの方から1対複数というハーレム・逆ハーレムの概念が出てきたのだと。それと声優文化の発展、アイドル化ですかね。複数のキャラデザや声の確定なしに「どのキャラが好みか」という考え方もなかった、というか。

というわけで、まずヨーロッパ産のテーブルトークRPGやカードゲーム等やファンタジー小説からの輸入の「昔のヨーロッパっぽい、剣と魔法でファンタジーのイメージ」+ドラクエなどの日本産のテレビゲームにおける「魔法がありHPとMPとレベルなゲームシステムと、敵のモンスターの基本イメージ」という雛型。そこに、伝統的な魔王や敵を倒す冒険ものや恋愛小説や友情ものやライバルとの戦いやら父を越えろものやら子供向け童話における継母と娘といじめ展開やらの「物語的な展開」が加わる。そして一番最後に美味しいトッピングの要素として加わったのが「萌え」だと思います。

あと、最近の「魔法学園」の具体的イメージは主にハリポタから流入してますね。「ちょっといい階級のイギリス特有のトラッドなおしゃれ感」みたいなもの、日本人好きだろ。制服かわいい学園ものも好きだろ。魔法が出てくる時のアニメの音楽が、毎度ハリポタっぽいんだよな…。「ああいう曲調」がもう「魔法的なイメージを喚起させる音」として世間様に定着したんやなと。

つまり「ナーロッパ舞台ファンタジー」とは、日本人ファンタジー物語愛好家による足掛け40年くらいの魔改造の産物、なんですね。その結実が、何でかたまたま「小説家になろう」というひとつのサイト中心になされてしまった、と。「いち投稿サイトとしての成長」と「日本人の中のヨーロッパ的ファンタジーな概念の完成」が同時に起こって各地に波及してしまったわけですね。

なろう運営様側が望んだかどうかは関係なく、自然発生的になろうの場で40年ものくらいの酒が勝手に醸成されてしまった。飲んだら旨かったから評判を呼び、色んな人がなろうの場だけでなく色んな所で色んなフレーバーで似たような風味の酒を増やしまくった、という状況かと。

ナーロッパって中世ヨーロッパじゃあない、よな?


そんなナーロッパ世界観ですが、よくよく見ると全く中世ヨーロッパじゃないよな?というのはまはや自明の理だと思われます。

そもそも中世って具体的にいつだよ。あまりにも幅があるだろ。あと、ヨーロッパっつっても広いぞ、どの国だよ。

私ね、長崎のハウステンボスに、親戚があっちにいるので、昔から、長崎オランダ村だった頃からよく行ってたんですけどもね。あれ、昔は「オランダ村」だったんですよ。ハウステンボスも引き続きオランダモチーフなんですね。ミッフィーもそっちの絵本ですよね。それでたまにめんたい国でもCMが流れるわけですが。

いつしか、「ヨーロッパのような」と表現するようになって、去年あたりですか、ついには「異世界のような」とか、自ら言い始めたんですよね。

オランダみたいな、じゃCMにならん、と。ヨーロッパ、いや、今のトレンドは異世界だ、と。

もう、このあたりに日本人のざっくりした「イメージにおけるヨーロッパ風異世界」が結実しちゃってるんですよね…。

おい、なろうとなろう系のファンタジー作家と読者の皆様、おまいらのせいだぞ!笑。完全にいちテーマパークの経営に影響しとるやないかい…。

なんかかわいそうなのでお近くの皆様は是非行ってあげて下さい。一応海辺なので、暑い日々が続いている昨今、案外悪くないと思います。

あとですね、ナーロッパって衛生状態とか教育やらの行き届き具合が、どう見ても中世ヨーロッパレベルじゃないんですよね。日本の江戸時代くらいですね。日本の中世後期が基準、それが最低レベル。

寺小屋があるくらい庶民にギリギリ教育が行き渡ってるか、作中で主人公は学校やら孤児院やら病院やら交通やら、各種インフラを整備する展開が多い。水道やトイレや風呂などはスライムや魔法で現代並みに綺麗に。「生活魔法」とか言って。

たぶん、そうじゃないと、安心して萌えられないんですよ…現代日本人。最低限、平均的な現代日本人並みの生活できてないキャラには精神が乗り移れない。「えっ、うそでしょ、汚なすぎ…ッ」とか「この子孤児なの、病気までしてるの、うわ…!境遇かわいそすぎる」とか本筋以外の部分で色々と思っちゃって、いちいち気が散ってしまうんですね。インフラもないのは耐えられないからとキャラに整備させてしまう。何しろ現代日本人が転移したり転生したりしてるもんだから。

いや「不潔な環境で頑張る話」とか「悪い環境から成り上がる話」なら汚ないものも書く意味があるのかもしれないですが、結果としてそれはキャラが克服すべきこと・乗り越えるものであり、話が展開すればいずれ無視することになる。

そういう意味でも、ナーロッパ世界観は中世ヨーロッパを利用した曖昧なイメージ×現代日本人感覚で彩られたハイブリッドなんですね。それは決して中世ヨーロッパそのものではないわけです。

なろう貴族の令嬢が苦労してハイヒールをはいているとしても、ナーロッパの令嬢が歩く道に昔のパリのようにう○こは落ちていないのです。滅すべき敵や悪役の足元にだけ、ざまあの際にのみ都合よく出現するかもしれないが。

今後の物語業界でのファンタジー世界観の方向性。


そしてなろう展開が苦手とか嫌いとか思う方もこの世にはいらっしゃると思うのですが。

事態は既に「お前の嫌悪は関係なく、日本人の剣と魔法のファンタジーのイメージはもう、ほぼこの方向で固まってしまったようだぞ?」というところに行き着いてしまったと思われます。

つまり、もし「あえてなろう系じゃないファンタジー」を書く場合、書き手は相当な気合いを入れないと、なろうファンタジーのイメージに引き摺られて死ぬ、読者も死ぬ。ということが確定しましたね、コレ。

フリーレンでさえ、なんか違うよね~言われるんだぞ。フリーレンが面白いから称賛されるだけでさして何の問題にはなってないけども。

逆にファンタジーを書くためのハードルは下がった、とも言えます。望まれるテンプレートは決まっているわけですから、あとはその中での展開で魅せることのみに集中できます。

なので、今後もこのテンプレートを使ってどんどん日本産のヨーロッパ的なファンタジーが作られるはずですし、このファンタジーブームが終わって次の人気ジャンルが出てきたとしても、「日本産ファンタジーの雛型」として長く残り続けるかと。そしてまた○十年後にこのナーロッパ的な世界観を更に魔改造する形で「その時代ならではの新たな剣と魔法のファンタジー」が生まれるのだと思います。

なろうの「あるある」であるところの「俺・私だけ特別強ぇチート状態」とか「ざまあ」とか「悪役令嬢令息」とか、そのあたりもなろう的な個性として今後も存在すると思います。

そして、あとは国外、ですね。他国の皆様が日本産アニメや漫画を見るようになりました。「ヨーロッパのイメージが日本で魔改造された結果のナーロッパ」が、当のヨーロッパ本国の人たちに影響を与えたり、ヨーロッパ以外の国の人たちにさえ影響を与えたりするわけです。

で、ここに読者としての外国の方の概念が出てくることによって、まぁポリコレ的な意味でもですが、更なる魔改造が日本人に対して求められる展開は、おそらく大なり小なりあるだろうなと。要求に応えるかどうかは置いておいて。

あとはヨーロッパだけでなく、アジア→ナジア、アラブ→ナラブ、中華→ちゃいナ、和風→ナッポンみたいな、他の地域のファンタジーでナーロッパみたいなテンプレートが生まれるか、ですね。

いや、この表現をネットでたまたま見かけた時に爆笑したわけですけども。笑。

たまにナーロッパ国家における「外国」の表現でも出てくるじゃないですか。「東方の国」みたいな表現の日本とか中国っぽい民族の国とか(日本食材の調達地域になる。笑)、「南方の国」みたいな表現の東南アジアとかアラブっぽい民族の国とかも。「北方の国」みたいな…たぶんロシアや北欧イメージかな、これは。

これねぇ、ぶっちゃけ、最初にテンプレート作り上げた人間が独り勝ちしますね。テンプレートあったらやりたい、って人は結構いると思いますし、そろそろナーロッパばっかは飽きたな…という頃合いでもあるんですよね。

女性向けは、王がいそう&衣装きらびやか系の理由で特に中華とアラブが好まれそう…と思うのですが(昔から比較的書かれてるし)、これは今後のリアル中国・中東情勢次第かな…。世界的な情勢が悪くなればドン引きで萌えられないってことで書く人も読む人も減るでしょうね。これはロシアや北朝鮮のモチーフもなんですが。逆に「情勢的に、やるなら決定的なことになる、完全に敵になる前の、今のうち」かもしれないですが…。

これ以外の国や地域モチーフとなると、資料見て調べてしっかりテンプレート作り上げられる人のみがやれる話になるかもですね。

日本については、貴族がいる時代の平安や明治や大正あたりのモチーフが乙女好きするイメージですね。やはりナーロッパ貴族+騎士的なテンプレートをそのまま流用できる時代は強そう。あとは戦国・江戸かな。大名と姫と武士と主従。こっちは男性向けのが強そう。

あと、刀とニンジャと、サムライがいてキャラが和服っぽい衣装であれば、時代はおいておいて、おおかた和風ファンタジーとして許される感はあるな…。もうこれは外国から見た日本もそうで、むしろ日本人と外国人の感覚の融合形態としての和風のファンタジーは「Ghost of Tsushima」とか「MONSTER HUNTER RISE」みたいなゲームの世界観なのかも、などと。あとハリウッドが作るサムライものの映画作品もそうかなと。

ナーロッパの逆パターンという意味で、ナッポンは、そういう意味でどうしても「世界」を意識せざるを得ない形での世界観構築することになりそうですね。インバウンドで多くの外国の方がやってきていて「日本を見て知る」機会も増えていますし、その中からこれまでの日本人感覚とは全然違う「ナッポンなファンタジー」を書く人ももっと今よりお気軽な形で出てくるかもしれません。それがなろうの場で書かれるかは置いておいて。


個人的な、ナーロッパの使い方。


私個人のナーロッパの使い方ですが、もう本当に自分のしたいようにするためにわざわざ先日1国の組織図など考えたわけで。

でもこの組織図も現代的な感覚だよな。王がかなり組織に権限を譲ってることになる。絶対王政とは言えない気がする。でもこのくらい組織化されてないと「異世界で規律がある組織感や警察ものっぽさ」は出ない気がする…。

衛生とか消防とかまで考えちゃってるからな。リアル中世にそこまでの感覚はないと思う…もっと場当たり的な感じかと。

あと、現代日本の警察の鑑識の感覚で魔法を使ったり魔道具や錬金術の道具などを使いたいわけですね。指紋のかわりに「証拠はこれです、○○○伯、ここにあなたの魔法痕が残っている…!」みたいなことをやりたいわけですよ。だからそういう研究組織も必要だよね。科捜研ならぬ「魔法研の女」とかがおるんや、たぶん。騎士団長の人とかが「必ずホシを上げる!」とか言うんや。

あと、ちょっとミステリーっぽい展開もやってみたいとか思っているわけですけど。現代日本が舞台だと、なかなか「森の奥にあるうっそうとした古城」とか、謎の別荘とか、それらしい事件の舞台を作るのが難しいじゃないですか。ナーロッパなら、いくらでも城とか海辺の崖とか、今の日本だと怒られそうな死体が落ちてても問題ない観光地など用意できそうじゃないですか。あと電気もないので暗くてホラー展開も犯罪も起こしやすかったり。

時刻表トリックみたいなものも、スマホある現代社会では厳しくとも、産業革命時のイギリスくらいの異世界の蒸気機関車の時刻表トリックならいけそうだし、それこそホームズが活躍した時代に通用したけど今は無理なトリックみたいなものも使えそうじゃないですか。実際そんな賢いもの書けるかどうかは置いといて…!

というわけで、現代日本よりはナーロッパ、魅力的に感じています。

あとリアル社会よりお仕事もの書いても突っ込まれずに済みそう。警察もの書いた場合に「警察ってこんなんじゃないよ」と本業の方に怒られる可能性が多分にあるけど、異世界の騎士団もの書いて「騎士団ってこんなんじゃないよ」とリアルの騎士様に怒られることは、きっとないはずだからさ…。笑。

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