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SF映画のインターフェース No.1

昨今さまざまなxRデバイスの流通によって、目新しくユニークなインターフェース・インタラクションへのインスピレーションやアイデアへの源泉を多く求められるようになりました。自分もSF映画・アニメ・ゲームといった、数多のサンプリングを重ねましたが、体系立てたアーカイブは重ねられずに『物置』的なディレクトリにブックマークが重なる日々です。

せっかく集めた資料があまりにも散逸としてきたので趣味の一環として『UI karma.』を始めました。WIMP(ウィンドウ、アイコン、メニュー、ポインタ)といったWebやスマホの標準コンポーネントの最適化といったUIUX的なアイディアでは無く、ヴィジュアルインパクトが強く、『業の深そうなインターフェース』を日々収集しています。(NuCode中井さん、ご協力ありがとうございます!)

https://twitter.com/UiKarma

そんな趣味が高じまして最近はいろんな方から『オススメのSF映画は?』という問いをいただくことがあります。いまさら天文学的な映画表現の中から網羅的にサンプリングするのはあまりにも非効率すぎますし、自身の趣味嗜好と大きくハズレた映画を見るのはあまりにも苦痛すぎます。

そんな中でこちらの書籍がオススメですが、かなり高価です。網羅性も高く取り上げられいますが、人によってはその情報量を受け止めきれません。そこで代表的な映画を年次にすることで見えてくることもあるだろうと思い『コレ見おけば、オジサン達ともだいたい話せるよ!』的な映画をカジュアルに抜粋しようと思いました。

■黎明期

SF映画の黎明期として1820年の『フランケンシュタイン』から始まりますが、ここから追うのはあまり意味がありません。年代が飛んで1902年ジョルジュ・メリエスによる『月世界旅行』(月に砲弾が刺さるヤツ)も一種のSF映画ですが、機械的なボタンやノブのような操作系はどちらかと言うと『コントローラー』という印象です。その後も『メトロポリス』や『バックロジャーズ』などが発表されますが、複雑な配電盤や操作盤の美術を多く見る事になり、まだまだ求められるアイディアに必要そうな『インターフェース』という概念は登場しませんので、正直なところ1960年代まで飛ばしていいです。

■1960年代〜

1960年代に入るとスタンリー・キューブリックによる『2001年宇宙の旅(1968)』が上映されます。あまりにも多くの解説サイトがありますし、詳しくは語らないのですが劇中に見られるメカニズム的な描写への評価は今でも伝説的です。テレビ電話や宇宙食、スクリーングラフィックがこの時代に作られたことを考えると、やはりパイオニア的な映画だったんだなと感じます。ただ説明やセリフを極力廃した映画設計とストーリーの難解さには大半の人がほぼ退屈を感じることになるので、やはり解説サイトを見てから局所的に見るだけでも十分かと思います。

■1970年代〜

70年代には『マッドマックス』『スター・トレック』シリーズなどが発表され、だんだん近未来の描写=SF映画という認知がされ始めてきました。そして、70年代の最後にはリドリー・スコットによる『エイリアン(1979)』が上映されました。いま見るとインターフェースとしての突出したアイディアを感じることは出来ませんが、現代でも通用する映画美術によるビジュアルインパクトは凄まじく後世のあらゆるゲームやアニメのオマージュの元になったと言っても過言ではありません。ノストロモ号のアイコンなどはiOSのアイコンにインスピレーションになったとも言われており、その影響力の大きさを感じることができます。このあと『エイリアン』シリーズは、ジェームズ・キャメロンやデヴィッド・フィンチャーといったビジュアル表現の評価の高い監督へとバトンタッチされ、ますますビジュアルインパクトに磨きをかけます。(自分はリドリー・スコット版が一番スキですが)

■1980年代〜

80年代初頭にはリドリー・スコットによる『ブレードランナー(1982)』が上映されます。70年代〜80年代のSF映画の世界観を席巻したシド・ミードのコンセプトによるビジュアルインパクトは素晴らしく世界観の完成度は類を見ない映画となりました。ただ劇中のテンポの遅さ・動きの無さ・鳴り響く重低音からなかなかの入眠効果をもたらし、何度となく途中で寝たという方も少なくありません。しかし、小説でしか認知されていなかった『サイバーパンク』という分野が映画業界の中でも市民権を得ることができました。80年代はこの『ブレードランナー』を皮切りに『トロン(1982)』『スター・ウォーズ』シリーズ(EP4は70年代)『ターミーネーター(1984)』『ロボコップ(1987)』『プレデター(1987)』など今でもシリーズ化されているSF映画の原点が続々と発表されております。ジェームズ・キャメロンにバトンタッチされた『エイリアン2(1986)』では、地図を見たりするシーンがあるのですがこの時代ではタッチパネルという概念が無いので、ジョイスティック的なデバイスで地図を操作しています。そして、日本では今でも熱狂的なファンの多い『『機動警察パトレイバー the Movie(1989)』『AKIRA(1989)』が上映されました。

■1990年代〜

90年代初頭には『ロボコップ』を監督したポール・バーホーベンによる『トータル・リコール(1990)』がSF映画として大きなインパクトを残しました。この映画がアカデミー賞の視覚効果賞を受賞したことによってVFXの重要性が理解され、エンドクレジットからVFX技術者が広く認知されました。80年代に興行収入として結果を残せた作品の続編として『ロボコップ2(1990)』『プレデター2(1990)』『ターミネーター2(1991)』『エイリアン3(1992)』などが続々発表され、SF映画における様々な表現を目にするようになります。この時代はソフトウェアよりもハードウェアとしての表現が多く見られ、あらゆるメカデザインが今でもアニメやゲームに大きな影響を与えています。とくに日本では押井守による『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊(1995)』が上映され日本アニメにおけるSF映画の認知を世界的に高めました。さまざまなSF映画が乱立する中、90年代の最後にウォシャウスキー兄弟による『マトリックス(1999)』が上映されます。

自分に影響を与えた映画としてキアヌ・リーブスがマトリックスの前に主演を努めたロバート・ロンゴによる『JM(1995)』があります。もともとは『ニューロマンサー』という作品から『サイバーパンク』という分野を生み出したSF作家ウィリアム・ギブソンの原作でもあり、かつビート武がヤクザ役で出演しているのですがまったくヒットしませんでした。当時、中学生だった自分は劇場にまで見に行ったのですが席がガラガラだった記憶が今でも鮮明に思い出せます。ただこの映画、いまでいうVRやハプティクスデバイス、画像認証などあらゆる技術の表現に挑戦した当時では先鋭的な映画でした。まったくヒットしませんでしたけど。

SF映画における1960年代〜1999年では、まだインターフェースという概念が希薄なのか、あまりアイディアやインスピレーションとして役に立つ作品は少ないかもしれませんが、その後の漫画、アニメ、ゲームに与えた影響は大きく決してインターフェースのアイディアを得ようとしたときに無視できる年代では無いはずです。
2000年代以降は スティーヴン・スピルバーグの『マイノリティ・リポート(2002)』、ジョン・ファブローの『アイアンマン(2008)』を皮切りにビジュアルインパクトの強いインターフェース=ビジュアルインターフェースと呼ばれるモノを爆発的に目にすることになり、自分もかなりの作品に影響を受けることになります。

こちらの書籍からの言葉を借りるなら、

SF映画は畑違いのデザインツール、また概念的アプローチでもあります。漠然としたブレインストーミング、日常への疑問の投げかけ、そして風変わりなものを実用的に見せるのにもっとも適した表現です。

なのです。

次は2000年以降のSF映画の抜粋をできればと考えております。では、また。




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