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新年度、生徒に伝えたい4つのこと

 あっという間に新年度を迎え、ひーひー言っております神楽坂です。
 私も教員の端くれとして、また1年間生徒と向き合っていかなければなりません。
 年度の初めということで、クラスみんなに最初に伝えておきたいことを整理するためにもこの記事を残そうと思います。
 参考になることは少ないだろうけど、「あぁこういう話をする教員もいるんだなぁ」と思いながら暖かい目で読んであげてください。

①利己を実現する手段は「利他」しかない

 言葉としては完全に矛盾するが、もうこれが全てだと思う。
 アダム=スミスが打ち立てた古典派経済学の理論によれば、市場経済というのは各個人が自分の利益を追求していく営み、つまり利己的な営みをしていれば「神の見えざる手」が動いて価格の均衡が取れていくようだ。そのようにして現代の資本主義経済も動いている。今の日本も自由放任主義というわけではないけども、法人税もどんどん引き下げられているし、株価も上がり、企業の業績も上がっているところも多い(大企業に限られてるかもしれないけど)

 しかし、それは経済の話であって、人間のコミュニケーションとは少し違う。
 自分の利益を追求するためには、自分の利益だけを追い求めてはいけない。自分の利益を追求するためには、他者の利益を保障しなければならない。
 「信用」「信頼」というものは自身の能力だけで担保されるものではない。他者に対していかに「贈与」できるかによって決まる。
 定期的にプレゼントをあげる、という話ではない。挨拶だって「贈与」と「返礼」の論理からできている。挨拶をするという「贈与」をすることで相手から「返礼」をもらう。自分の時間を相手に「贈与」して仕事を手伝う、自分の能力を「贈与」して他者を助ける。その「贈与」の繰り返しは大きな「返礼」へと繋がっていく。

 多様な人間が複雑なコミュニケーションを取りながら生きていく現代社会においては他者からいかに上質の「返礼」をもらえるか、ということが鍵になる。上質な「返礼」をもらうには、上質な「贈与」をするしかない。つまりは、利他的な立場を取り、他者に自己を「贈与」するしか、利己を実現する手段はない。

②「実存」を持とう

 現代社会は良くも悪くも「個人社会」である。
 共同体の力は衰退し、地域コミュニティも分断に向かっている。人々は細分化され、これ以上分けられない状態(individe)になっている。
 もちろん、個人主義には多くの利点がある。旧来的な家制度、終身雇用を中心とした共同体的企業、固定的なジェンダーロールなど、日本に蔓延っていた「伝統」から個人は解放され、より自由な人生を選ぶことができるようになってきた。

 しかし、現代社会では個人主義のデメリットもますます露わになってきている。

 旧来的な制度は個人を共同体に縛り付けるかわりに、安定感を与え続けていた。決められた職業に就き、決められた伴侶を迎え、決められたように子をなし、決められたように死んでいく。その中に「選択」がもたらす不安感はない。
 しかし、今は「選択をしなければいけない」という慢性的不安に人々は悩まされている。大学にいく大義はないにも関わらず、志望大学を決めなければならない。就きたい職がないのに企業に入り働かなければならない。そもそも自分はなんのために生きているのか。生きることに価値などあるのか。そうして人生に絶望していく人は少なくない。

 もちろん、人生に意味などない。生まれてきた意味など人間は持っていない。ただ生まれ、ただ死んでいく。それが生物としての定めだ。

 しかし確たる「自己」を語る言葉を持つことが重要であるということに変わりはない。
 自分はどういう存在であり、自分はどんな文脈で生きていて、どんな悩みを抱え、どんな課題を抱え、どうやって課題を乗り越えていくのか。それらを自分の言葉で、定義づけしなければならない。
 それこそが「実存」だ。

 実存を定義するためには、やはり言葉と思想を身につけなければならない。言葉のないところに世界はないし、思想のないところには自己の相対化はない。
 自分とはなんなのか、自分とはどういう存在なのかという根源的な疑問を追求し、「絶対的な答え」ではなく「暫定的・相対的な答え」を見出し、また時代に合わせてそれを修正していく。
 そんな「実存」こそ、これからの個人社会で必要なのではないか。

③利他と実存の均衡を見極めよう

 そして、「利他」と「実存」のバランスを取らなければならない。これが難しい。

 他者と議論をするときに、まず相手の意見に注意深く耳を傾けて、相手の考えを受容することが絶対に必要である。頭ごなしに否定しては議論は発展しない。相手の考えをまずは認めて、それから批判のフェイズに移行していく。
 しかし確たる自己を持っている人ならば「どうしても譲ることのできない信念」がある。他者の言っていることも正しいのはわかる、しかし、自分が持っている主義主張の重要性もわかってほしい。この折り合いを他者とどうつけるのか、コミュニケーションにおいてはここが一番難しい。

 折り合いのつけかたにはいろんな形がある。
 今回は自分が折れて、他者の意見に乗ってみる。次の場面では自分の意見に則って話を進める、と部分的に妥協するのもありかもしれない。
 他者との差異の中からまったく新しい意見を創造するのもいいかもしれない。
 より良い解決方法は時と場合によって異なる。
 その折り合いの付け方を身につけなければならない。

 良い集団には「多様性」が必ず必要である。
 一つの角度からしか物事をみることができない集団は容易に全体主義となりうる。「実存」と同じように、組織・集団が持つ信念も時代によって相対化され、より良い形にマイナーチェンジを続けなければならない。その変化をするためには集団の中に様々な視点・視野が含まれていることが求められる。
 しかし、多様性が豊かにあるということは差異が大きくなり、折り合いをつけるのが大変になるということである。この矛盾は決して解消されることはない。

 多様性を受容し、しかし自己の信念を曲げず、その「境界」を見極め、最適解を見出していく。
 
これがこれからの社会で求められていく力である。

④規則正しい生活リズムを定着させる

 死ぬほど大事。
 夜は寝ろ。もう一度言う。夜は、寝ろ。


 こんな感じ。
 意外と長くなってしまった。まぁこのままで話すことはないけど。
 明日の朝もう一度読み直してみよう。
 勉強面の話もしたかったけど、それはまた今度。


 

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