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夜間飛行

オレは飛んだ
風をはんで思い切り空に舞い上がった
あんまり気持ち良すぎて 吐いてしまった

右目に日本海
青い杉の森がうずくまっていた
夕陽が落ちると暗い森になった
何か言いたい事があるのか 森よ

消えかけた言葉のかたちをした能登半島にサヨナラをしたら
もう大阪湾だ
夜の大地は炭火のようにいこっている

宙返りをすると左目あたりで
大阪城が斜めに傾いで光の海に沈んでいった
オレは翼を休める場所がない
夜の空をただ滑空し続ける
記憶は鳥たちとともに死ぬだろう

オレは翼を休める場所がない
ただ 滑空するのだ 空を
目撃者は鳥たちだけだ


(詩集『夕陽と少年と樹木の挿話』より)


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