【連載小説】オトメシ! 12.ライブのあと
【連載小説】オトメシ!
こちらの小説はエブリスタでも連載しています。
エブリスタでは2024.1.9完結。
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――2024年1月15日
明日はついにソレラのライブだ。
姫原サクヨウというアーティストと共に『So You』というユニット名。
レンダが私のために作った曲を思い出す。
――この曲はメイルにぴったりだと思うんだ。
この言葉と共に贈られた私の一番好きな曲。
『it's so you』
――どういう意味?
――お前にお似合いだって意味。
♦ ♦ ♦
人生で最高の時間だった。死ぬほど楽しかった。またサクヨウとライブがしたい。
ただ、その代償はとても大きかった――。
私がサクヨウと立ったあの日のライブ映像がネット上に流れると、私ソレラの正体がバレてしまうのにひと月もかからなかった。
事務所の人にはなんてことをしてくれたんだとひどく叱られ、学校では望んでもいないのに、地味で友達のいないジメジメした少女がいちやく大スターとわかって勝手にクラスメートは欣喜雀躍《きんきじゃくやく》。
何か物語の主人公にでもなった気分だったけれど、注目を集めたくもなかった。学校でまでジーダを装って明るく立ち振る舞う気力なんてなかったから、このまま陰キャのまま学校生活を送れないとなると苦しい。
学校内のファンやアンチに対して、私の知らないところでやいのやいの言われても、私はただ傷つくだけだ。
私は商品だけど、感情はある。せめて人間らしく扱ってほしいのに。
昨日まで私を幽霊か何かみたいに扱っていた、クラス内カースト上位の女子たちが目の色変えて急に馴れ馴れしくなるし。そういう群れでしか生きられない人間を私はあまり好ましく思わない。そんなヒエラルキーのてっぺんグループだろうがそこに私を入れようとしないでほしい。
私は学校に行くのをやめた。
ただ、一応もうひとつの隠し事、メイルの実の娘だという真実はバレていないようで安心した。
サクヨウからも心配されたのだが、サクヨウはサクヨウで大変そうである。
例のライブの動画が拡散されると同時にサクヨウにも世間の関心は集まって、サクヨウのほうにはメジャーデビューの話しやら、ライブのオファーがひっきりなしに来ているようだった。
サクヨウは今のところその話しを全て断っているようで、私とこのままユニットとして活動したいと誘ってくれた。
気持ちは嬉しかったが私は所詮ビジネスのひとつの商品でしかない。
自宅のフローリングを自動で掃除するロボットを見つめながら、こいつと私は同じだと思ったけれど、あの日のステージに立った私はロボットではなかったことは確かだ。
そんなとき、お母さんが私に、
「好きなようにやったほうがいいよ。大人たちには私が言っておくから」
と背中を押してくれた。
どうも私のライブを見てからかなり体調が良さそうだ。
でも、本当にお母さんが事務所に言ったくらいでサクヨウとユニットを組ましてくれるのかは疑問。
「お母さん最近体調よさそうだね」
お母さんはグッドポーズを私の前に突き出して、
「ねえソレラ、お父さんのこともう知っているんでしょ?」と言った。
ビクンと一瞬自分の秘密にしていた悪事がバレてしまった瞬間くらいには驚いたけれど……よかった。
ライブが終わってからもお母さんはお父さんのことなんてひとつも話してくれなかったから本当はずっと気になっていたんだ。
「あ、うんまあ」
「ごまかさなくたっていいのよ。私にはわかってる。なぜかって? そりゃレンダに直接聞いたからね」
やっぱりあの日、お母さんは会っていたんだね。
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