『ゲームナイト』の感想

 青空ぷらすさんが映画の感想を書かれていたのを見て興味を持ったので、レンタル屋で借りて鑑賞した。
 ゲーム好きの夫婦がトラブルに巻きこまれる、どたばたコメディーもの。

 で、感想の前にボードゲームについて軽く話しておこうかと……。
 私はアナログゲームが大好きだ。アナログゲームというのは、電源を使わない、主に盤上で行われるゲームのことだが、カードゲームやしりとりなんかの言葉遊びも含まれる(と思う)。
 ただ、その手のゲームの中では一般にも認知度の高い囲碁なんかは全然できないし、将棋やチェスもルールを知っている程度で、強い人にはてんで勝てないと思う。麻雀は、それらよりはもう少しやるけど。
 どちらかというと、私が好きなのは「それ以外」のアナログゲームだ。トランプも、あまりヒリヒリしないタイプの遊びが好き(ゲームは好きだが、賭け事は好きではないのでね)。
 小中学生時代は、電源有ゲームは「LSIゲーム」くらいしかなかったから、家ではアナログゲームで遊ぶのが普通だった(ゲームセンターや駄菓子屋にはビデオゲームの筐体はもうあったけどもね)。
 その頃に主に遊んだゲームは、アメリカで生まれたか伝わってきたボードゲームがメインだった。「人生ゲーム」とか「モノポリー」とか「ダイヤモンドゲーム」とか。日本でも影響受けて作られたボードゲームがたくさんあって、「魚雷戦ゲーム」とか「社長ゲーム」とか「チャレンジ2万㎞」とか、そうしたゲームにも夢中になった。このころはパーティーゲームって呼ばれていたような気がする。
 海外にはその他にも有名な「リスク」や「クルー」や「スクラブル」などがあることは、ずっと後になって知るのだけれど。
  その後、パソコンでゲームができるようになると、電源有ゲームも家でできるようになってパソコンゲームにもはまった。格闘ゲームに席巻されてしまう前までぐらいはゲーセンにも通い続けていたし、ファミコンに始まった、家庭用ゲーム機のゲームも遊んでいるほうだと思う。
 けれど、電源有ゲームの発達=ボードゲームからの卒業とはならなかった。私が中学や高校生になった頃には、同時にはアナログゲームにも別のブームが起こっていたからだ。
 それが、シミュレーションゲームとかウォーゲームというやつで、戦闘をリアルに再現するボードゲームだ。パーティーゲームとちがって、いきなり子供はできない感じのゲームといっていい。これが、やはりアメリカから色々と入ってきて、日本でもオリジナルのゲームがわんさか出て、そうした会社からは5~6人でも遊べる複雑なゲームも発売されたりして、私はボードゲームの趣味を続けたまま大人になっていった。
 それと並行して、TRPGにもどっぷりとはまった。
 その上、大学卒業後は、まだインターネットが普及する前で、「郵便でやりとりして何千人ものプレイヤーが自分のキャラクターを同一のゲーム内世界で動き回らせ、その影響が現実世界にも食いこんでくる」といったゲームを運営する会社で、仕事をするようになったりした。
 その会社にいた頃、仲間が紹介してくれたドイツ製のボードゲームにはまって、もともとここまで話したような下地があるから、当然、これにもはまった。
 ここ十年ぐらいで、そのドイツを中心としたボードゲームが、かなりメジャーになってきているので、むしろ最近は追いつかなくなってきているし、ボードゲームのみに特化して熱心な人には知識の面でもとても適わないけれど、まあ最低でも月に一回は友人宅でボードゲームをしたり、ゲーム会に参加したりというのは当たり前の日常だ。
 最近は、そうした人もけっこう増えていると思う。気軽にボードゲームができるカフェなんかもたくさんあるし。

 ……というわけで映画の感想に戻ろう(やっと戻れた)。
 そんなボードゲーム好きの私にとっては、この『ゲームナイト』は、ストーリー以外の部分でも大いに楽しめた。
 オープニングからして、モノポリー駒やらサイコロやらがゆっくりと落ちてくるという、いかにもな映像。
 ゲーム好きならそれだけで、嬉しくなってしまう。
 主人公の夫婦は、ボードゲームだけでなくビデオゲームも大好きだし、謎解き脱出ゲームやライブRPG辺りまでゲームとして楽しむような筋金入りのゲーマーだ。
 古い日本のゲーム好きにとって、「アメリカのボードゲーマーへの憧れ」というのがある。「こたつには乗っからない大きなボードも平気で乗っかる専用の大きなテーブルでひと晩中」とか「地下室でフィギュアもダンジョンの模型も使い放題」とか「大人の趣味として認知されていて、趣味の人が集まる」とか、どこまで本当か知らないけれど、日本よりは恵まれているよなあ~的な、気持ちがあるのだ。
 そのアメリカのボードゲーマーの集まりやイベントが、がんがん映画に出てくる感じがたまらない。なにしろ、『E.T.』の中に「D&D」をプレイしている風景が出てくるだけで歓喜していた我々なのだから。チラッとだけとはいえ「リスク」のプレイ風景が出てくる映画、初めて見たかもしれない。長いことやってないけれど、「リスク」も面白いよなあ……。
 けっこうな大人たちが、夫婦やカップルで集い、ボードゲームを一晩楽しむ――やっぱり、アメリカではそれありなんだ! って、それだけでワクワクしてしまう。昔、トム・ハンクスが主役の「TRPGにはまっておかしくなってしまう大学生」の映画があったけど、あれとは違うワクワク感だ。
 で、他の趣味のサークルでもそういうところはあるだろうけど、ゲームのメンバーで「どうもあの人は下手の横好きだから」と敬遠される人がいたり、ボードゲームに興味のないトンチンカンなプレイをしてしまうパートナーを連れてくるメンバーがいたりと、結構な「あるあるネタ」が随所に盛り込まれていて笑ってしまう。
 「リスク」の他に、「ジェンガ」や「ピクショナリー」や「人生ゲーム」や「スクラブル」、「クルー」なんかも出てきていた。

 主人公の兄貴が、ゲームでも人生でも弟にプレッシャーを与え続けている嫌なヤツ(ストーリー的にその関係がどう変化するかも見どころ)なんだけど、その嫌さも「ああもう、こんなプレイヤーいたら最低だな」って感じなんだよね。ボードゲームを投げ捨てたとことか、もう。
 その兄貴がリアルな謎解きゲームを企画して、犯罪者が侵入してきて誘拐事件が起こっても、主人公を含めたゲーム仲間はゲームがスタートしたと思いこみ、クリアしようと行動を始めるのが、すげえバカ。
 しかも最終的には「ボードゲーム好きには悪いヤツはいない」ともとれる展開になっていくのも良かった。

 そんなわけで、ボードゲーム好きの人は楽しめること間違いなしです。
 レトロなビデオゲーム好きも楽しめるところがあるけれど。

 あ、でも、TRPGとTCG(トレーディングカードゲーム)のネタはなかったような気がする。あれはあれで特殊な世界だからなあ。


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