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【随想】宮沢賢治

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記事一覧

【随想】宮沢賢治『やまなし』

 人間は時々、動物の行動に人間の言葉や感情を当てはめて遊ぶことがある。人間ならばその行動…

【随想】宮沢賢治『貝の火』

 大切なものは、失うまでその価値が分からない。大体そういものは当たり前に持っていて、乱暴…

【随想】宮沢賢治『蜘蛛となめくじと狸』

 悪気は無い。彼にとってはそれが生きるということだ。騙すことも、暴力を振るうことも、逃げ…

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【随想】宮沢賢治『ツェねずみ』

 付喪神、普通は心を持たぬ無機物が、長い年月を経て精霊と化し心を持つようになる。心を込め…

【随想】宮沢賢治『クンねずみ』

 気取り、真似、つもり。即ち自分は○○である、○○であると思い込む。それで果たしてそうな…

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【随想】宮沢賢治『蛙のゴム靴』

 春の桜吹雪、夏の入道雲、秋の落葉道、冬の星空。季節を象徴する風景があるように、或る時の…

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【随想】宮沢賢治『二十六夜』

 虫や鳥獣は意味も無くむやみに鳴いているのではあるまい。人はときどき奇声を発するけれども、それだってそうするに至る経緯がある。興奮、ストレス、周囲からの感化、怖いもの見たさのような気持ちで叫ぶことだってある。生物が鳴き叫ぶのには理由がある。でもその理由が分からないから、鳴き声は、うるさく感じることはあってもそれ以上の意味があるとは感じない。と、いうより感じようがない。何故鳥は朝方によく鳴くのか。何故犬猫の怒りは唸りとなるのか。何故狼は遠く響く声を発するのか。人間が人間の感覚や

【随想】宮沢賢治『雁の童子』

 あらゆるものはあらゆる場所を巡る。昨日街でコートの裾を揺らした風を今日海鳥が小魚と共に…

【随想】宮沢賢治『十月の末』

 清冽な冬の早朝、空の高みは未だ見えず、オレンジのガラスを通したような光が低い角度で目に…

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【随想】宮沢賢治『フランドン農学校の豚』

 有機生命と無機物に本質的な違いは無い。どちらもただの物質である。動く動かないは問題では…

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【随想】宮沢賢治『虔十公園林』

 子供の頃には何の偏見もなかった。変わっている人を変わっているとは思わず、ただそういう人…

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【随想】宮沢賢治『谷』

 自分以外の全てが本当は用意されたエキストラなのではないかと不安になる。この世界は、自由…

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【随想】宮沢賢治『鳥をとるやなぎ』

 人気のない山中に一人佇むときの賑やかな静寂は、どんな音よりも耳に響く。木の葉が風にそよ…

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【随想】宮沢賢治『祭の晩』

 不器用な人、正直な人、懸命な人、美しい人、そういう人が辛い目に遭っていると、どうしてか自分も苦しい。共感は幸も不幸も見境ない訳ではなく、不幸にこそ共感し易い。自分の身に置き換えて辛いのではない、その人が苦しんでいることそのものが辛いのだ。その人には辛い思いをして欲しくない、自然にそう思える人を大切にしなければならない。そういう人との出会いは極めて貴重なのだが、人はなかなかそれに気付かない。奇跡的な出会いを、あっさりと見落としてしまう。  毎日顔を合わせて見慣れた筈の人が、お